【30min interview】ENDRUNが新進気鋭のビートメイカー達と共に放つ「innervision」

 

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大阪から全国、さらには世界へ発信を試みるビートメイカー/プロデューサー、ENDRUN(エンドラン)。
ハードボイルドな映画のワンシーンを彷彿とさせるような煙たいサンプリング、そして無骨で重たいビートからなる音源を武器にフロアを揺らし続け、また多くのビートテープやアルバムをリリースしてきた。そして今年の2月には最新アルバム「innervision」をドロップ。昨今のビートシーンを賑わす著名な日本のビートメイカーとのセッションや過去の音源のRemixを盛り込むなど、マニアにとってはクレジットを眺めるだけでニヤついてしまうような、豪華かつボリュームのある内容になっている。

https://soundcloud.com/endrun-flashtime/innervision-teaser-1

過去のインタビューにおいても「現場でリンクした人と積極的に作品を作っていきたい」と語っていたENDRUN。まさに今回のinnervisionは、”現場のリンク”の賜物ではないだろうか。
今回の作品にまつわるエピソードや最近のマインドについて語ってもらった。


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―よろしくお願いします。ニューアルバム「innervision」ですが、リリースしてからの反応はいかがですか?

好きな人は聞いて反応してくれるんちゃうかな?自叙伝じゃないけど、自分のやっていることを出し切ったっす。

―アルバムのために新たにビートを作ったというよりも、今までストックしていたビートをアルバムという形に昇華したという経緯なんですね。

自分のソロのビートは全部新しく作ったやつで。あとは遊んだ日のノリで出来た瞬間瞬間で作ったものをコンパイルしたビート達と、フレッシュな新録音のセッションアルバムっす。自分がかっこいいと思ってる人とリアルにコネクトして、やりたいことをやっていきたいというのは変わらないすねー。

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―「好きな人と好きなことを」というのは以前FRESHから行ったインタビューでもおっしゃっていました。

FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ・インタビューシリーズ。~ENDRUN~
https://freshdancestudio.com/news/details/134.html

「無理しない」が自分の中にあるので。自然体というか。

―ENDRUNさんの今までのビートテープやアルバムは、自身のトラックのみを使用することが多かったですが、今回の「innervision」は一転、他のビートメイカーとのセッションやリミックスがテーマになっています。何かきっかけが?

これもさっきと同じで「アルバム作りたいから誰々とセッションやろう」ってイメージではなく、今まで遊びでセッションしたりして作ってきたデモトラックの数が多くなったんで、タイミングかなーと思って。ビートメイカー同士の1対1のセッションでアルバムにするってゆう形もあるじゃないすか? 例えばYotaroとAru-2とか、ILLSUGIとCRAMとか

Hooba Booba (Yotaro & Aru-2) – Vapor

 

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https://cramscram.bandcamp.com/album/below-the-radar

それもやりたいとは思ったんですが、今の自分のライフスタイル的に難しかったので「オールスター」ってイメージで作りましたね。こっち(大阪)に来たついでに僕の家に遊びきて、その時に「何して遊ぶ?ビート作る?」くらいのテンションで作ったものとか。まあ遊びにくる時に機材持ってきてる時点でビート作りにきてるんですけどね(笑)

―確かにそうですね(笑) 普段から機材を持ち歩いているあたりはさすがです。ビートファンとしては「このドラムパターンはYotaroさんみたい」とか「これはENDRUNさんっぽいサンプリングだ」とかそういった楽しみ方もあります。そもそもビートメイカーのセッションは、どのようにして進めていくんでしょう?

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基本的に僕の家に来てもらって作ることが多かったっすね。例えばYotaroがうちにきて一緒に作った時は、Yotaroがビート組んで、ネタも軽く組んで。ネタのFLIPも1ループまではYotaroがやって、ループの後半のアレンジは僕が担当するとか。ベースにしても、前半の音はYotaroが出すけど、小節の後ろは自分が出すとか。メインのビートのループができるまでは、半々で作ってー。

 

―なるほど。かなり細かいレベルまで共同で制作するんですね!想像していたよりもセッション感が強い。

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あとはBuda君とのトラックは、僕のPCにあるネタのライブラリから、Buda君が選んだネタのFLIPをしてくれて。先に用意してあったドラムKITの中からBuda君がドラムの鳴りを細かくエディットして組んで、僕はベースを足したり、ループの後半のアレンジをやったり。キリのいいとこまで出来てイメージ思いついたら、「次俺行くっす」って感じでビルドアップしていって。交代で進めていくていう意味では、しりとりとかマジカルバナナに近っすね。「次どうする?」みたいな。

 

―面白い!その場のひらめきで少しずつ組み立てていくということは、最終的な着地点というか、「こういうトラックにする」というのはあらかじめイメージできないということですか?

うん、わからないっすねーただ、その人のビートの特徴はわかるから「この音を持っていったら多分こうなるやろな」みたいな予想はできるけど。あ、ほんでJJJとSTUTSと作ったトラックも思い出深くて、一晩に10個くらい作ったトラックのうちの1曲すね。その内のもう1曲がSTUTSのアルバムにも収録されてて。

https://itunes.apple.com/jp/album/fantasia-feat-%E4%B8%80%E5%8D%81%E4%B8%89%E5%8D%81%E4%B8%80/1424866258?i=1424868131

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―一晩でですか!凄まじい集中力…!

和歌山の現場で3人でビートセッションをするって回があって、前乗りして温泉入ってからホテルにこもって夜の24時から朝の7時くらいまで制作しましたね。「まだいけるっしょ」みたいな。
「Runnin’」て曲のデモはそん時に出来て。僕がネタのループ組んで、STUTSがビート組んで、JJJがパーカッションやって、んでその後STUTSからパラデータ(曲のギターとかドラムとかのパートごとにわかれた音)が送られてきたから、僕が勝手にEDITし直して完成して。笑

―お互いのスキルや「やれること」を提示する点ではダンスのセッションと似ていますね。

あーどちらかというとバンドすね。一台の機材で交代で作るときもあるすけど、STUTSとJと作った時はみんなが機材を持ってきてたから、そこで1つのスピーカーに3つの機材をつなげて同時に流してたからほんまにセッションでしたね。3人が同時に音を出すのでぐちゃっとなるタイミングも一瞬あるけど、だんだん整ってきたら「あぁ、それそれ」みたいな。

―今回のアルバムに散りばめられているRemixの話になるんですが。「FINEST」のBudamunkさんのRemixは本当にきめ細かく作り込まれていることがわかります。ただトラックを別のものに入れ替えるだけではなく、明らかにラップの部分もエディットされていて。しかもbpmも変わっていますよね?

ENDRUN “Finest” feat. ISSUGI & 茂千代 (Official Video)

実は2年くらい前に、既にRemixのデータが手元にあったんすよね。曲自体はリリースした時にめっちゃいいって言ってくれてて。「アカペラ送ってよ」って言われて、そっこー送ってRemixを作ってもらってたんす。でもずっと世には出せてなかったので、今回ボーナストラックで入れようと思って、改めて仕上げてもらいました。

―そうだったんですか。

Remixは、アカペラさえあれば面識ない人でもさらっとコラボできるのが特徴すね。例えば今の話でいうと茂千代君がBuda君のビートでラップしたり。本人達が知り合えばタイミングでできると思うけど、それを僕が提示するというか。ラッパー個人のコネクションじゃところをつなげていく。それも面白いすね。

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―今回エグゼクティブプロデューサーとして参加されている16FLIPさんとの制作はどのようなものだったんでしょう?

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16FLIP氏にはおおまかなディレクションを担当してもらって。
今回デモ段階でいろんな方向性のビートが大量にあったので、まとめるのが難しくて。その過程で、「このビートは今回はやめておこう」とか「これは入れておこう」とかそういったアドバイスすね。ベースとなる僕の考えやアイデアは尊重した上でリードしてくれました。
それからサウンド面でもサポートしてくれて、ここは多少マニアックな話になってしまうんすけど。
ダンサーの人はわかるかもしれんけど、耳で聴いて「あ、おっきいな」って感じる音と、体にダイレクトに感じる腹にくる音って、明らかに音の固さってゆうか質感に違いがあって。
より体にバーンって入ってくるような太い音が出るように、サウンド面の修正点とかもディレクションしてくれたっす。
「首が勝手に動く」音っていうか。ただそういう「体にくる」っていう感覚は、言葉やったり数字に表しにくい世界やし、音圧の上げ方というのも説明の指示がどう言ったらイメージの方向性がちゃんと伝わるか。その部分をきっちり言葉でこうやったらどう?って感じで示してくれましたね

―ストイックな制作だったんですね。今回のアルバムはCDと同時に、デジタル配信も行うとうかがいましたが、どういった配信サービスで聴けるんですか?

iTunesとか、Spotifyとか?ですね。海外へ発信したいと思ってたので、すぐ韓国のダンサーの人がinstagramに上げてくれるのを見たり。あとは個人のplaylistとか作って紹介するblogとかでフランスとかイギリスとかの人もチェックしてくれてたり。まだまだ少ないけど、色んな人が聴いてくれてんねやって。

―今回のアルバムはタワレコなどの大きい流通ショップでも展開されています。そこも個人的には嬉しかったりします。

けど地に足つけて音源をデリバリーすることも重要だと思いますね。最早CDだけで音楽聴く時代じゃないから、流通に通してやってたらアーティストとして成立するかというと、関係ないと思うし、DIYで販売経路作ってる方が繋がりが明確で確実やと思う。自分一人でも配信サイトにもすぐupできるし。そこまでこだわりはないすけど、参加してくれている人達が皆ぶちかましてる人達やから示しがつかないというか、ビートメイカーとして今のライフスタイルで出来るベストの形を探した結果すね。
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―「innervision」というタイトルはどのように決まったんでしょう?

「自分の頭で想像したことが現実に起こる」っていうニュアンスでつけてるんすけど。心像現象だったり。結局自分のライフストーリーがここに詰まってて。自分の内側で見てる景色がビートの中に刻まれてるって感じすね。

―直訳で「内観」ですよね。

Stevie Wonderでも同じタイトルの曲がありますね。

Stevie Wonder – Innervisions

 

僕は今、どちらかというと自分の内側に向かって音楽を作ってるていうか。言い換えれば自分の魂の表現すね。その爆発の実験結果として受け取ってもらえれば。笑
インストのビートってそういうものじゃないすか?言葉がないので。

―ENDRUNさんの内側への探求が、アウトプットされて世に広まるというのは逆説的なようで面白いですね。

そうですね。まぁでも、聴いて何かを感じ取ってくれたらというくらいっすね。抽象的な表現やしね。

―それがインストの良さですよね。シンパシーを感じたり、不思議に思ったり、シンプルにビートのかっこよさに浸ったり。人によって受け取り方も千差万別だと思います。

最近のアルバムと比べたら曲数も多くて、アルバム通して聴くと45分くらいあるので、真剣に聞いたらめっちゃ体力いると思います。mixみたいに適当に流して軽く聴くぐらいがベストかもしれないすね。掃除のお供にでも。

―ははは(笑) シリアスな掃除の時間になってしまいそうです。他に何か情報などはありますか?

アルバムから1曲”New Birth feat.Willow”のmv作ったんで見て欲しいす。
rap曲なんすけど、今回のハイライトはこの曲。new birthってサンプルネタで組んでて笑
映像はRollswyze。この人の映像は知ってる人が見たら1発でわかると思うんやけど、本当今回のんほんまめちゃいいから。

ENDRUN – New Birth feat.Willow

あと福岡のDJ GQとのスプリットMIXも出してるからこっちも聴いてみて欲しいです。

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インタビュー中、「無理せず、マイペースに」と再三語ったENDRUNであったが、確固たるビジョンとそれを実現するためのたゆまぬ歩みがそこにはあった。ただリズムの表現としてのビートを楽しむだけではなく、そこににじみ出るENDRUNの思想や思考やライフスタイルに意識を向け、”内なる景色”を共有するのも楽しみ方の一つではないだろうか。

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インタビュー/文 : Seiji Horiguchi

Seiji Horiguchi

フリーライター。
新聞記者になることを夢見る学生時代を経て、気づけばアメ村に。関西を中心に、アーティスト(ダンサー/ラッパー/シンガー/フォトグラファー/ヘアアーティスト stc…)のプロフィール作成やインタビュー記事の作成を行っている。
現在の主な執筆活動としては
・FRESH DANCE STUDIOインタビューシリーズ
・カジカジ、連載「HAKAH’S PROCESS」
・その他パーティレポ、ダンスチーム紹介文、音楽作品の紹介
などが挙げられる。
大阪のストリートカルチャーにアンテナを張りつつアンダーグラウンドの「かっこいい」を広めるべく日々執筆中。

https://www.instagram.com/horisage/

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sage.the.nara@gmail.com

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