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【記録ではなく記憶に残る作品を】映画『ハケンアニメ!』から学ぶ姿勢。

[注意] この記事は映画『ハケンアニメ!』のネタバレを(かなり)含みます。これから観ようとしている方は、ぜひ映画の鑑賞後にこの記事を読んでください。


【アニメ制作の裏側を描く映画】

今年の1月頃にダイコク映像のIllMinoruvskyさんからプッシュされた『ハケンアニメ!』を、今更ながらNetflixで観た。2022年春公開の映画だ。

 

『ハケンアニメ!』あらすじ

1クールの間で最も高い視聴率を記録して、その後も高い評価を得る、すなわち“覇権”をとるアニメを目指して奮闘するアニメの制作会社。吉岡里帆演じる新人監督、齋藤 瞳「見るひとに魔法がかけられるようなアニメが作りたい!」とアニメの世界に飛び込んだ。そんな彼女が初めて監督を務める作品の裏(同じ時間帯の別のチャンネル)のアニメを手がけるのが「天才監督」と世間からもてはやされる王子 千晴(中村 倫也)。両者はそれぞれに苦悩を抱えながら、彼らをとりまく制作クルーとともにハケンを争う。


【今すぐ伝わらなくてもいい。誰かの胸に刺さればいい。】

ハケンを獲得すれば、会社の経営も上向くうえに、監督としての評価も強固なものになる。

瞳が作るアニメ『サウンドバック』は序盤こそ結果が出ず、辛辣な口コミも多かったが、製作陣との地道なコミュニケーションが功を奏し、回を重ねるごとに視聴率はUP。徐々に王子が手がける『運命戦線リデルライト』に食らいつく。

そして最も重要な最終回が近づく。ラストの出来次第で、その後のグッズやDVDの売り上げすら左右されるという。最終回の制作を終え「あとは放送を待つだけ!」というタイミングで、瞳は自らが生み出したアニメの結末に疑問を抱く。ハケンにこだわるあまり、自分が本当に描きたいエンディングから離れているのではないかと。

「今すぐは伝わらないかもしれません。いつか思い出してもらえればいい。誰かの胸に刺さればいい。」

そう言ってエンディングを作り変えることを製作クルーに伝える瞳。つまり目の前の成功を捨ててでも自分が納得するアニメを選んだのだ(その姿勢にクルー全員が賛同して、1から作り直すあたりは若干のフィクション感が否めないわけだが…)。


【ダンスにも通じる!記録ではなく記憶に残るものを】

僕が感じた一抹の「んなわけ!!」はさておき、主人公は最終的にハケン≒ビジネス的な成功を目指すのではなく、アニメ作りを志した時のピュアな気持ちに立ち返ったわけだ。

こういった「ビジネスか。ピュアな気持ちか」という価値観の違いは、ストリートダンスの世界でもたびたび出くわす。

憧れのHIPHOPチームの爆発的なショー、ヒリつくようなB-BOYバトルの駆け引き、そして憂いを帯びた妖艶なJAZZの作品。僕はそういった圧倒的な表現に惹かれてこの世界に足を踏み入れたし、生きている間にできるだけそういった表現に出会いたいという欲がある。

しかし、ダンスをなりわいにしている人間にとって、お金が生まれなければ続けていくことはできない。それにコロナ禍の影響もあり、これまでのやり方でイベントを打つことが厳しくなった。そうなると当然違った形で収益を生む方法を考えないといけない。

ここまでは自然なことだろう。

ただ、なかには効率良く利益を生むことを優先する一方で、ダンス本来の魅力や可能性を無視したイベントも増えているように思う。そんなマネーファーストな価値観は、ダンスの圧倒的なエネルギーに魅せられた僕のような世代にとっては、理解に苦しむ時もある。

聞くところによると、最近では、イベントの運営スタッフが顔も知らないダンサーに対し、DMで「ナンバー出しませんか?」と誘うことが激増していると聞く。そこに作品のクオリティや、振付師のキャリアは関係ない。人さえ集まればそれで良いのだ。ひどい時は断りのメッセージを送ると、既読スルーになるケースもあるらしい。そうやってダンサーを、アーティストとしてではなく数字としてしか認識できない(それもおそらくは悪意なく…)イベントが、実際に増えているのだ。

【琴線に触れるダンスを共有したい】

もう一度書くが、ダンスでビジネスをすることが悪いわけではない。その恩恵で(ダンススタジオを含め)シーンが広がってきたことは明らかだ。でもイベントの運営が大切にすべきは、一部の人間だけが潤う仕組みではなく、琴線に触れる表現をできるだけ多くの人に共有したいという熱意ではないだろうか?

ナンバー依頼のDMを手当たり次第送っている人も、テキストをコピペする指をいったん休めて『ハケンアニメ!』を観てほしい。


最後に一点だけ断りを入れて終わる。

今回は『ハケンアニメ!』主人公の「誰かの胸に刺さる作品を」生み出そうとする姿勢を紹介したわけだが、主人公とハケンを争っていた王子監督が”ビジネスビジネス”していたというわけでは断じてない。彼は彼でとことん納得のいくアニメを作ることに魂をささげる(この辺りはこの記事の冒頭のCMを観てもらってもわかる)。前半のアニメの話と後半のダンスイベントの話を二項対立で対応するように書いてしまったので、あたかも王子監督が金に汚い人間だというような誤解を生むかもしれないと思ったのでフォローを入れておく。


【こっちも観てほしい!】

「アニメ制作」についての作品でいうと『映像研には手を出すな!』もとても良い。過去にレビューを書いたので、興味のある方はこちらも読んでみてほしい。

「チーム戦」のかっこよさをビンビン感じるアニメ。遅まきながら「映像研」にハマった話。

Seiji Horiguchi

【知り合い0人の田舎者】初めて「Hoofit」に行った話。

 

僕は奈良県奈良市の高の原という街の出身だ。18歳まで地元を出たことがなく、保育園、小・中・高校も全て近所なので、電車通学の経験もなかった。その反動か「高校卒業後はとりあえず家を出て、どこか違う街で1人暮らししたい」と考え、長野県の大学を受験した。とはいえ、「絶対にこの大学に入りたい」などという明確な理由はなく、センター試験の得意科目や、偏差値なんかをもとに検討し、なんとなくの流れで辿り着いたのだった。

大学生活を含めた4年半ほど松本に住んだあと、大阪に引っ越してきた。ダンスの修行のためだ。DANCE@LIVEの関東予選(たしか原宿かどこかのクラブで火曜の深夜に行われていた)で、oSaamさんのダンスを初めて目の当たりにして「この人に習いたい」と一念発起し、大阪にやってきた。

初めてFRESHのレッスンを受けた時のことは、以下の記事で書いた。

「初めてFRESHにレッスンを受けに行った日」

今日はその少しあとの話だ。

通うダンススタジオも決まり、バイトも決まった頃、次は遊びに行くクラブを探してみることになった。(どうやって情報を仕入れたかは忘れたけど)近所にある[Night Wax]というクラブで「Hoofit」というパーティが定期的に開かれていることを知り、行ってみた。

Google mapを頼りにクラブの場所を辿ると、南海電鉄の高架下に行きついた。クラブの外観の印象はいかにもアンダーグラウンド。しかも扉は締め切られているし、特に看板なども出ていないため通りすぎてしまいそうになる。でも、うっすら音楽が聴こえてきているのと、入口周辺に自転車が何台か停まっているのを見るとどうやらここで間違いなさそうだ。勇気を出して扉を開けてみる。

ライトの灯った廊下が6,7mほど続いていて、奥のスペースから音楽が聴こえてくる。廊下の脇は小ぢんまりとしたテナントになっていて、レコードが所狭しと置かれているのがショーウインドウ越しに確認できる。昼間はレコ屋として営業しているようだ。

ちなみに、2015年リリースのBudamunk『Five Elements Feat. MONJU & OYG』でもこのNight Waxが使われているので、中の雰囲気がなんとなく伝わるかもしれない。

そのまま音楽が流れる廊下の突き当たりへと進んで重い扉を開けてみた。

…フロアが異常に暗い!!ミラーボールが反射する光以外は、明かりと呼べるものはほとんどないくらいで、隣にいる人の顔も見えにくい。そして音量もかなりのものだ。フロア後方に積まれた背丈の高いスピーカーからどっしり響く低音が、体の内側まで震わせる。

目を凝らすと、DYさんBUUBEEさんなど、大阪の著名なダンサーがフロアで揺れている。田舎者の僕は「うわ!sucreamgoodmanの人いるやん!」と内心ソワソワ。でももちろん一方的にしか知らない。遠慮がちの僕は結局彼らに自分から挨拶することを諦めたのだった。

次に、初めてFRESHのレッスンに行った時にスタジオの真ん中(oSaamさんの真後ろ)でレッスンを受けていた男性を発見する。大柄で坊主のため、かなりいかつい印象を受ける…。でも、せっかくダンスをするために大阪に出てきたのに、同じクラスに通っている人に挨拶もできないでどうする!それに、もしここで多少気まずい思いをしても、どうせ自分のことなんか誰も気にもとめないだろう!と、なかば開き直りながらその大柄坊主の男性に話しかけてみた。

「あのー…FRESHのoSaamさんレッスンに通われていますか?先週、自分も受けさせてもらったんですが…」
男性「ん?おー!こないだ初めて受けに来てたやんね!お疲れ様!Hoofitも来たんやー!おーい、◯◯ちゃん!この子最近FRESHのoSaamさんクラス来だした子やねん!」

どうやらパートナーと2人で来ていたらしい、早速僕のことを紹介してくれた。というか見た目に反して全然怖くない…!むしろ笑った時に顔がくしゃっとなって、柔和な印象すらある。大柄で坊主というだけで怖そうと決めつけていたさっきまでの自分をたしなめたい…。パートナーの女性もとても優しく接してくれた。話しかけてよかった…。

今思えば、彼こそが大阪でできた友人の記念すべき1人目といえるし、今でも家族ぐるみの付き合いをさせてもらっている。もっというと、この初めての出会いから1年後に彼とチームを組んでいろんなイベントでショーケースをすることにもなる!そう思えば、どこでどんな縁が生まれるか、本当にわからないものだ。

さて、Hoofitは実にいろんな音楽がかかるパーティで、HIPHOPはもちろん、DiscoやHOUSE、R&Bなどなど、多様なブラックミュージックを贅沢に聴けることに新鮮な驚きと喜びを感じた。先述の通り、会場のサウンドも迫力があって心地良い!フロアにいるダンサーが、狭いスペースでも遠慮なくガンガン踊っているのも新鮮な光景だった。

この会場、[Night Wax]は残念ながら2016年頃に移転が決まり、レコード店のみの経営にシフトした。当時の僕のアパートから自転車で5分程度の近所だったし、Hoofitをはじめ数々のgood partyが行われていた人気スポットなので、とても名残惜しかった…。

Hoofitはといえば、2023年の今もなお場所を変えながらディープなレギュラーDJ陣によって定期開催されている。コロナ禍もようやく終焉を迎えた今、パーティが各地で開催され、街を越えたアーティストの往来が再び盛んになっている。何気ない一夜でも一生ものの縁に繋がる可能性があることを改めて自分に言い聞かせ、お気に入りのパーティに遊びに行きたい。

Seiji Horiguchi

【アルバムレビュー】EVISBEATSが到達した新境地。『That’s Life』

遠くから聴こえてくるような上音。
少ない音数で構築されたドラムループ。
奥行きや温度感までコントロールするようなエフェクト。

僕はそんなインストのビートに目が無い。

どれくらい好きかというと、iTunesやBandCampで購入した ありとあらゆる国のビートメイカーの音源を繋いでオリジナルのミックスを作成し、SoundCloudにあげるという行為を、かれこれ8年近く続けているくらいだ(2023年3月現在、UPしているミックスは28本にのぼる)。

逆に90年代のクラシックのHIPHOPや、現行のHIPHOPの音楽やアーティストの情報には疎い。ストリートダンサーとしてそのあたりの曲や知識もおさえるべきなのだが、どうしても、インディーなビートメイカーの知られざる音源をゲットしたいという欲求から抜け出せずにいる。「誰も知らないけど自分だけが知ってるヤバいビート…」と真夜中にニヤニヤしながらBandCampの膨大な音源の海を泳ぐのが僕の趣味なのだ。

無限の解釈が可能なインスト音楽。

冒頭からいきなりニッチな変態性をさらしてしまったので少し真面目な方向へ。

ラップの入った曲と違い、聴き手側に無限の解釈の余地があるところがインストビートの最大の魅力ではないだろうか。少なくとも「こう受け取ってはいけない」という決まりはない。僕が尊敬する音楽ライター/ジャーナリストである渡辺志帆さんも、Budamunk御大へのインタビューで、インストアルバム『Movin’ Scent』への感想として「聴くシチュエーションによって聴こえ方、想像することがまったく違う」とおっしゃっていて、Budamunkさんもそれに対し「(言葉がなく)音だけだからいろいろ想像できるのがインストの良いところですよね」と返している。このインタビューには強く頷かされるものがある。

 

インストマニア。はじめの第一歩。

そんな僕が、インストのビートを好きになったきっかけとなった出来事がある。

2013年の冬、僕が大学時代に住んでいた長野県のとあるパーティに、奈良出身のビートメイカー/ラッパー/プロデューサーであるEVISBEATSさんがゲストDJとして来る機会があった。2012年リリースのアルバム『ひとつになるとき』で、『ゆれる』『いい時間』などチルでメロウな名曲を生み出し、同時期に野外フェスにも頻繁に出演するなど、全国的に名前が知れ渡っていた。

EVISBEATS&田我流のタッグは間違いない。いつの時代も…。

彼は当時からインストの音源も多数リリースしていた(もちろん今もなお!!)けど、当時の僕は、インストのビートというわけでもなく、彼に対してもチルな日本語ラップのラッパー/トラックメイカー?」という認識だった。実際、彼はそのパーティでグルーヴィなDJプレイを披露し、ラストには『いい時間』のオケでマイクを握って生で歌うという粋なパフォーマンスまで披露してくれた。当時22歳の僕もそのDJ&ライブに相当食らったようだった。

昔の自分の投稿をさらすのはめちゃくちゃ恥ずかしい…。

が、僕のインストマニアへの第一歩は、彼のDJタイムではなく、そのパーティの後に起こったのだった。当時「物販ブースを見かけると何かしら買ってしまう病」を患っていた僕は、キャッシャー脇に並べられていた彼のCDを発見すると、大してタイトルやジャケも確認せず、脊髄反射的に購入した。それが僕をインストビートの沼に引きずり込んだミックスCD型のアルバム、『SKETCHBOOK』との運命的な出会いだ。家に帰って、そのアルバムを聴いた時の心地良さは今でも忘れない。そこには単なる”チル”という言葉だけではとうてい形容し尽くせない、広く深い世界が広がっていた。

24トラック中、ラップの入った曲は4曲。『ゆれる feat.田我流』のRemixなど、このアルバムでしか聴けないようなレア音源も収録されていて聴きごたえがあるけど、僕は当時、何よりこのアルバムのインストのトラックにひどく感動した

穏やかながらしっかり腰が入ったビートパターン。何度繰り返しても嫌にならないスムースな上音。アジアの情緒を感じさせる打楽器や管楽器、弦楽器。ときおり茶目っ気をのぞかせるサンプリングやタイトル。それらの構成要素が、EVISBEATSというアーティストの世界観を表し、彼の人柄をも滲ませている。それらのビートに打ちのめされたのが、僕がインスト音楽にどっぷりハマることになった原体験だ。

ちなみに、今作品のミックス(繋ぎ)を担当したのは、鋭い感性を持つDJ/プロデューサーとして知られ、当時EVISBEATS&PUNCH&MIGHTYのユニットでライブのサポートも行っていたDJ Mighty Marsさん。彼のミックススキルこそが、このアルバムを名盤たらしめている。ただただ前後の曲をつなげたりクロスフェードするだけではなく、スクラッチや2枚使いといったターンテーブルテクニックや、臨場感を増すエフェクトを織り交ぜながら構築していくことで、まるでDJプレイを現場で聞いているような感覚に陥る。この“Mightyマジック”が1曲ずつの音源の心地良さを最大限引き出していることは間違いない。

EVISBEATSとPUNCH&MIGHTYのライブも最高なんよ…

彼の音楽は「許して」くれる。

この『SKETCHBOOK』というアルバムの魅力を長年ずっと言語化できずにいたけど、おそらく僕がどんな精神状態の時も不思議と包み込んでくれる懐の深さこそが最大の魅力なのかもしれないと思ってきた。もっと言うと、どんな状態の僕も許してくれるような寛大さがあるのだ。

料理している時。友達の車の中。クラブへの道中。クラブからの帰り道。自転車で通学している時。地元に帰省して散歩している時…。最低な気持ちの時。ピースな気持ちの時。暇な時。忙しい時。海。山。街…。どんなシチュエーション、どんな心もちでも包み込んでくれる。今もこの記事を書きながら改めて『SKETCHBOOK』を聴き直しているけど、今もなおスッと耳に入ってくるし、聴けば聴くほどフレッシュなインスピレーションに出会える。

そうやって僕は彼の音楽のように不思議な作用のあるビートを掘り下げることになる。そのなかで「うわあ、良い…」と心掴まれるビートは、ただ「踊れる」とか「心地良い」だけじゃなく、自分と向き合う気持ちにさせてくれたり、ひいては人生における大切なヒントを示唆してくれるような不思議な力を宿している気がする。そんなことをぼんやり感じながら好みのインストのビートを掘っていく(あるいは人から曲を教えてもらう)なかで、Budamunk、Yotaro、GREEN ASSASSIN DOLLAR、Fitz Ambro$e、ILL-SUGI、1Co. INRといった国内の著名なビートメイカーの存在を知っていくことになる。

混沌の世を、切るでも逃げるでもなく「受け入れる」。EVISBEATSの新境地。

さて、そうやって僕がビートの世界に夢中になるきっかけとなったEVISBEATSさんが、今年2月に新たなアルバムをリリースした。その名も『That’s Life』。彼のインスタのコメントは、どんなアルバム紹介よりも端的にアルバムの方向性を示唆しているので、チェックしてほしい。

ネガティブに思えることが立ち起こっても「まぁそれもまた人生さ(=That’s Life)」と言い切ることで、どことなく前向きな方向に舵を切るという逆説的な態度。これは煩悩を断ち、人の苦を遠ざけるという仏教の教え的ニュアンスが漂うわけだが、かつて『般若心境RAP』『ギャーテーギャーテー』といった曲を通して積極的に仏教とHIPHOPを交差する試みを行ってきた彼なら不思議ではない。

混沌の世の中にメスを入れるわけでもなく、悲観するわけでもなく、「That’s Life」と言い切ってしまう姿勢に、肩の力をスッと抜いてもらうような感覚さえある。アルバム17曲目『Akirame』という曲にも、ビートの後ろに某妖怪漫画家の生前のインタビュー音源が挿入されているが「この世を地獄と思って諦めることですね」と言い切るその姿勢には、アルバムタイトルに通じるものがある。悪いニュースが目立つご時世だが、EVISBEATSさんの物事の捉え方と、彼の奏でる音楽をヒントにしてみるのも良いかもしれない。

『That’s Life』収録曲
1. Arayashiki
2. That’s Life
3. After Rain Comes Fair Weather
4. Digital Detox
5. Bridge The Gap
6. Luminous
7. Shooting Star feat. 田我流
8. Himayana
9. Daydreamers
10. It’s Too Early To Tell
11. My Destiny
12. Mumokuteki
13. Love Is So Simple
14. Odaigahara
15. Nyunanshin
16. Memory Of Kaga
17. Akirame
18. We Found Love
19. Shinjo-Bushi
20. Doubt To Me

もちろん記事の前半で書いた通り無限の解釈の余地があるのがインストビートの魅力なので、これらの音源を聴いてあなたがどんな感想を持とうが自由だ。今作があなたというフィルターを通して浮き出た感情はどんなものか。ぜひじっくり味わってほしい。

Seiji Horiguchi

【HEX BEX&sucreamgoodmanプレゼンツ】”HANERU WORKS”パーティレポ

“HANERU WORKS”

’00年代から大阪を拠点に全国的な活動を展開してきたヒップホップダンスチーム「HEX BEX」「sucreamgoodman」のメンバーによって2022年に始動したプロジェクト。長年の活動のなかで追求してきた個々のスタイルやスキル、そしてface to faceで築きあげてきた日本各地のプレイヤーとの繋がりを武器に、ヒップホップカルチャーの魅力と可能性を多角的に発信。本物を見極めることが困難になりつつある混沌の世に、アンダーグラウンドサイドから一石を投じる。


この記事を書くにあたって、1年近く時を遡る必要がある。

2022年2月に開催されたOSAKA DANCE DELIGHTで堂々の優勝を飾ったHEX BEX×sucreamgoodman。そしてその後、彼らが表明した「HANERU WORKS」という団体の結成。メンバー6人が主体となって発信を行うということだけが公表されたが、具体的にどんな企画が立ち上がるのかは、当初伏せられていた。

春の終わり頃に発表された企画第一弾の名は「DANCER×BEATMAKER」HONGOU、KUCHA、CHEKE、oSaam、DY、BUUBEEの6人がそれぞれ別のビートメイカーとコラボして音源をリリース。さらにその音源のプロモーションビデオを制作するという壮大な計画だ。1人ひとりのダンススタイルや音楽性が作品にどう反映されるのかが個人的にとても楽しみだった。

6月のKUCHAから始まり、DY → BUUBEE → HONGOU → CHEKE → oSaamの順でおよそ半年にわたって月1のペースでリリースされた音源と映像。そのどれもが、彼らのこだわりや性格を色濃く映し出していたし、同時に彼らが協力を仰いだプレイヤーとの結びつきを強く感じさせるものだった。

HANERU WORKS Youtubeチャンネル

ちなみに、この一大プロジェクトの裏側についてロングインタビューもさせていただいた。彼らの活動の裏側を知ることで音源や映像をより楽しめると思うのでチェックしてほしい。

HANERU WORKSロングインタビュー


この記事を読んでいる大半の方は、ここまでの流れをおおよそ把握していると思うが、ここからが本題である。

2022年の12月に全ての音源と映像が公開されたわけだが、そこから間髪いれず「HANERU WORKSプレゼンツのパーティ開催」の情報が発表された。この企画に参加したビートメイカーや、かねてから彼らと交流のあったアーティストがアメ村に集合して、大々的にパーティが開催されるのだ。「DANCER×BEATMAKER」に参加したビートメイカーの名前が一つのフライヤーに連なるだけで、なんとも壮観だ (ip passportさんだけ、出演者として参加されなかったことは、彼のファンとして残念だったが…)。

先のロングインタビューをさせてもらったライターとして、そして1人のヘッズとして、彼らの企画第一弾の集大成ともいうべきパーティの全貌を目の当たりにしたいと思った僕は、オープンから参戦したわけだが、結果的にラストの音止めまでしっかり遊ぶことになった。今日はそんなパーティの様子を記録として残しておきたい。さまざまなパーティのドラマチックな瞬間を何度もおさめてきた敏腕カメラマン、Jyunya Fujimotoさんによる素敵な写真も楽しんでほしい。


2023年1月27日(金)

この日の最高気温は5度。近年稀に見る大寒波の影響で、大阪もところによっては雪がちらついていた。このパーティのために沖縄からはるばる来られた方も、あまりの寒さに急いで(沖縄では着ることのない)ダウンジャケットを購入したという…。

さて、22:00少し過ぎに会場の[Club JOULE]にたどり着いた。DJブースの頭上のスクリーンには、ダイコク映像が編集を手掛けた映像が流れている。


DJ DY

R&Bのインストver.多めな印象。壮大な幕開けを感じさせるDYさんのオープンセット。自身もゆったり首を振りながら徐々に、しかし確実に、フロアにヴァイブを伝えるDYさん。この時間から来ている知り合いもちらほら。青森からはるばる来てくれた友達(実に3年半ぶり…!)もフロアをダッシュして最前でDJブースのDYさんに手を振っていて愛くるしかった!


DJ Duckbill

レペゼン愛媛、初めましてのDuckbillさん。BUUBEEさんとともに音源/映像を制作したビートメイカーが来阪だ。被っているキャップには、彼が所属するクルー「SAKE DEEP」のロゴ。時折サイドMCに、同じくレペゼンSAKE DEEPのSiVAさんの姿も。

彼のビートをビートライブの要領で流すのかな?と勝手に思っていたけど、がっつりレコードでDJ。ターンテーブルスキルも惜しみなく披露しながら縦ノリのグルーヴを淡々とキープしていた。
徐々に人口密度が高まっていくフロアをしっかりロック。隣で彼のDJを聴いていた奈良の先輩も「かっこいい!」と呟いていた。


1部SHOWCASE

関西で一番かっこいいイベントMC、TATSUYAさんの仕切りでショーが幕開け。FRESHの発表会「NAMURA ATTACK」ではイベントの進行具合も意識しながら、時にはかなり急ぎ足で進行してもらう時もあるけど、この日は、出演者とオーディエンスのテンションを上げることに全振りする喋り。深夜のパーティということもあり、1部の頭から全力投球で声を張り上げる。


咫和巵

昨夏のJDDで「咫和巵+無名」で特別賞を獲得したことも記憶に新しい大型ルーキー。並はずれた身体能力を武器にする破壊力抜群のショーだった。人間離れした技もさることながら、シンプルなステップも重い…。息つく暇もない怒涛のルーティンとソロで、おおいに会場を沸かせた。ショーのラストには、Tシャツのバックに刻まれた「Ancient City Kyoto」のロゴを見せつける。見事なレペゼンっぷりだ。


BullDogs

こちらは大阪レペゼンのHIPHOPチームBullDogs。CHEKEさんのスタイルを敬愛し、継承する4人組。TRUE SKOOLで特別賞をとるなど、クラブシーンだけではなくダンスシーン全体にジワジワと認知を広げている。

先ほどの咫和巵は、イントロたっぷりで空気を作るスタイルだったが、こちらはいきなりフルスロットルで踊り狂う。メンバーのKURANOSUKEはヘッドバンギンしすぎてデューラグも取れる勢い
2人パート、4人パート、ソロ…と目まぐるしく展開を変えてたたみかける。こちらはショー終わりに、衣装の下に着ていたTシャツの「HW」のロゴを見せて大阪の先輩へのリスペクトを表した。


ZEST


大阪レペゼンのトリオ。この3,4年でコンテストやバトルを中心にめきめき頭角を表し、各地のパーティにひっぱりだこの若手筆頭だ。こちらも「HW」のロゴがあしらわれたフーディで登場。メンバーのIKKIが「S.W.R.D」という名義でビートメイカーとしても活動していて、彼らのショーではそのビートも用いる。

ZESTのショーの武器は、“チーム感”だ。一つひとつのステップやノリの質感の合わせ方が尋常ではない。FRESHでも夜な夜な練習したり、クラブにも3人で遊びに行っていたりと、とにかく一緒に時間を共有している印象がある。チームが少なくなりつつあるご時世にここまでチーム力を仕上げてくるのは、個人的に感動すら覚えた。


Kannoma × Atsuki


奈良レペゼンのAkinobuさん、TAKUJIさん、そして神戸レペゼンのATSUKIさんによるユニット。
長年バトルやコンテストに挑戦を続けながら踊りを磨く3名は、中堅層のなかでも特にプロップスが高く、個人的にもお世話になっている兄さんたち。ただこの3人でのショーはおそらく初めて。どんな作品になるのか予想がつかなかったが、Kannomaの2人とATSUKIさんのスタイルが見事に溶け合い、いずれも幅広い音楽やダンスに通じるダンサーであることを再確認した。ショーを見ている僕らにまでインスピレーションを与えてくれるようなウィットに富んだショーだった。


DONUTS + 白ごはん

待ってました、アメ村レペゼンのパイセンたち。イベントの情報が解禁されたときから「めちゃくちゃ楽しみ!」と気合いをのぞかせていたが、この日も鼻息ふんふん、覇気をまといながら登場
全員、ステップの踏み込みもいつもよりも黒く重たく、フロアの熱気も一段と上がる。

1人ひとりが多忙なライフスタイルのなかで、バトル・レッスン・ソロショー・ビートメイク・MV出演などなど、それぞれの表現を全うしているわけだが、やっぱり全員がひとところに集まった時のクルー感は、「ドーシロファン」にとっては熱いものがある。

体型や音楽性、踊りのアプローチも見事にバラバラで、ずっと違う種類の刺激に包まれるし、さらにそれらのエナジーが合わさった時の爆発力は他にはない。最後まで飽きないショーだった。


DJ SOOMA

1部のショーが終わると、DJブースにはSOOMAさんがスタンバイ。ほぼ毎週末(ときには平日も)どこかの現場でスピンしている大阪アンダーグラウンドの代表的存在。長年のディグ&ギグが生み出すグルーヴィなDJもさることながら、ラッパーへのビート提供やMIX CD、TAPEの制作など、幅広くアウトプットを続けるTHE・職人。思えばHANERU WORKSの「DANCER×BEATMAKER」の企画も、SOOMAさんの『Killing Fight』の音源からスタートした。

この日は、なんとHANERU WORKSのパーティの前にアメ村[KING’S TONE LOUNGE]でも一度スピンし、肩が温まりまくっている状態での登場。極太なHIPHOPチューンでフロアを揺らす。

個人的にはSOOMAさんのDJ中の手元の美しさを見ながらゆれたいし、知らない人にも見てほしいのだが、ステージ奥にDJブースが組まれているJOULEではそれがかなわない。ただ、大きい箱ならではのパワフルなサウンドで極太なグルーヴを全身で浴びることができるのは贅沢だ。内臓に響く低音を感じながら揺れるひととき。
ただゲストライブの前の時間で、いよいよフロアに人が増えてきたため、ガッツリ踊るのは不可能だった。


ゲストライブ 茂千代

再び登場したMC TATSUYAさんの呼び込みにより、髪を後ろでゆわえ、さながら侍の様相で茂千代御大が登壇。ゲストライブの時間だ。バックDJはもちろんSOOMAさん。
2008年リリースの『NIWAKA』、2019年リリースの『新御堂筋夜想曲』そして昨年12月に長崎のDJ MOTORAさんとリリースした『REBIRTH』に収録されている曲を次々と披露。淡々としかしヴァイブス満タンでスピットする姿は改めてかっこいい…。「ここ一番のパーティするにあたって、絶対茂千代くんに出てほしかった」とブッキング時からただならぬ熱量をのぞかせていたHANERU WORKSメンバー。それに応えるような魂のライブだった。

セットリスト

・実演NIWAKA THE LIVE
・新御堂筋夜想曲
・GET BUSY
・師事
・Reverse
・First Take
・IMPULSE

(勉強不足で曲名がわからないものもあった…)

ここまで歌ったあと、少しMCの時間。

「自分もHIPHOPジャンキーで、日々レコードとかCDとか掘ってるんですけど、大阪、日本にはもっともっとやばいディガーがいっぱいいます。ここで、年齢とか関係なく俺がリスペクトしてるラッパーを呼びます。16FLIP a.k.a ISSUGI in da house!!!!」

その声とともに、この日はDJ名義でクレジットされていたISSUGIさんが、マイクを握って登場。予想外で激アツな展開!もちろん2人で披露するのは、ENDRUNさんのアルバム『ONEWAY』(2016)に収録されている『FINEST』。ファンにとっては、イントロの「茂千代を聴け」「ENDRUNを聞け」「ISSUGIを聴け」の掛け合いを生で聞けるだけで既に熱い。「はい!心して聴きます!」という気持ち。

僕個人の感想だが、『FINEST』の茂千代さんのリリックは、(7年前の曲というのにもかかわらず)コロナ禍の日本にもめちゃくちゃに刺さる内容なのでぜひ知らない人はリリックも追いながら聴いてほしい!

※このMVはダイコク映像がディレクションを担当しているので、知らない人はぜひチェックを。


ライブ後は2部ショーケース。まずは3名の女性ダンサーによるソロだ。

MAHINA

 Jack Dine – Such a Thing

いまや全国を飛び回ってワークショップにゲストショーに活躍しまくりのMAHINAさん。2022年リリースのJack Dine『Such a Thing』の心地いいトラック/ボーカルとともに、まるで自身が曲を奏でているように、踊りの起伏まで巧みにコントロール。”シンプル”をとことんまで突き詰めたMAHINAさんの無二のスタイルは、バトル / ショー / セッションなど場面関係なくずっと見ていたくなる…。3分強の1曲使いも、あっという間!


REIKO

唯一JAZZダンサーとしての出演!ジャンルの垣根や、アングラ/メジャーの壁を超えまくって
幅広く活動されているREIKOさん。何百人というオーディエンスの前でも一切ブレることなく、美しい“止め・跳ね・払い”を見せながら、フロアを縦横無尽時に舞う。こちらも1曲使いで、会場の空気を一気にREIKOさん色に変えた。

Donique Fils-Aime – Stand By Me


MIO

暗転したフロアをレーザービームが照らし出せば、我らが姉御、MIOさんの登場!ウサ耳のついた衣装でステージ上に仁王立ち。曲のイントロとともに手拍子を促す姿は、さながらワンマンライブだ。「ミオピョンピョン!」のウィスパーボイスがクセになるトラックは、ip passportさんと二人三脚で作った完全オリジナル。この音源はパーティの3日前にSoundCloudで公開され、自分を含め多くの人が予習していた。さながらワンマンライブだ!

からの、昨年のNAMURA ATTACKのMIOナンバーでも使用した曲でオーディエンスを巻き込みながら、さらにぶち上げる。MIOさんの生徒さんもたくさん来られていたようで、僕の真後ろからも「みおさああああん!!!」と声援が飛んでいた。

Koodie Shane – The Hills


GRAYSOURCE

今回唯一の関東からの参戦。TAKESABUROさん率いるGRAYSOURCEの登場。超絶アグレッシブなルーティンと、1人ひとりの爆発的なソロ。TAKEさんYASSさんのベテランチームは言わずもがな、20代の若手組も1人ひとりが昨今のダンスバトルやコンテストで必ずと言っていいほど名前を連ねるなど、間違いなく国内トップレベルのダンサー

コロナ禍以降、「HighBreedClub」としてでオンライン上でのレッスンや映像配信を継続してきた彼らが大阪の現場に登場するのは熱い!この後の大トリに、良い意味で発破をかけるようなパッション全開のショーだった。


HEX BEX  &  sucreamgoodman

説明不要のOSAKA DANCE DELIGHT優勝ネタ。Dance Delightのチャンネルでアップされている正面からの引きの映像は、これまでに3000回くらい見てきたが、JOULEのフロアで、手で触れられる距離(本当にそれくらいのポジションで見ていた!)で踊るのを見ると当然ながら興奮度合いも違う。一つの踏み込みに全身全霊をかける。四肢が弾け飛びそうになるほどのヒット。ふとした仕草に宿る遊び心と色気。フロアの歓声は最高潮。改めて彼らの揺るがぬプロップスを目の当たりにした。

全力の3分ネタのあとは、去年およそ1年をかけて制作&リリースしてきたオリジナルトラックでのソロ。これこそHANERU WORKSの企画第一弾「DANCER×BEATMAKER」の核となる部分だ。


渾身のショーケースのあと、6人が残るフロアに再びGRAYSOURCEが登場。あれよあれよという間に東西のダンサー総勢13人によるスペシャルセッションがスタート!タイムテーブル上では公開されていなかったサプライズコンテンツにフロアは再びどよめく。ビートはENDRUNさん。ぶち上がらないわけがない。大興奮で2部ダンスショーは幕を閉じた。


DJ ENDRUN

興奮冷めやらぬフロアをさらに熱く揺らすのは、長年のストイックなビート制作で全国のプレイヤーと繋がってきたENDRUNさん。自身でプロデュースしたトラックもかけつつ、’00年代のHIPHOPやR&Bも多めにプレイ。2020年代と2000年代の曲を絡めるという実験的なMIX CD「GOOD TIMES」の第2弾を昨年リリースしたことも影響しているかも?「なるほどこうきましたか!!」と超新鮮な時間だった!


DJ 16FLIP

茂千代さんのライブのラストで登場したISSUGIさんが、お次は「16FLIP」名義でDJブースにセット。ストレートなHIPHOPをカットイン多めで淡々とつなげるスタイル。以前、HoofitにゲストDJで来られたときも、その実直なまでのプレイに魅了されたが、今回もブレないスタイル。まるで「これが今イケてるHIPHOP!」とガイダンスしてくれているよう。


DJ BUDAMUNK

初めて聴くBudamunkさんのクローズDJ。どうしめてくれるのか!という期待に、彼が出した答えはR&Bセット。彼のR&Bのミックスが最高に気持ち良くて最高なことは、過去のミックスCDで確認済み。

このあたりで久しぶりに会った友達と話し込んでしまったので、全部をしっかり聴くことはできなかったが、終わりに向かって徐々にBPMも落ちてくる…?と思いきや、後半まで跳ねたビート!フロアに残ったダンサーたちは思う存分踊って遊んでいた。終盤には『First Jam Magic ft.仙人掌』など、Budaさんがプロデュースに関わったスムースな曲も。Budaさんが回すクローズDJでこの曲を聴く贅沢さよ…。

そして気づけば時刻は朝5時。徐々に明るくなるフロア。それでもまだまだ居座り続ける欲張りなパーティ好きたちに応えるようにジワジワとDJタイムも延長。完全に音が止まったのは6時前。DYさんがマイクを握り「みなさんありがとうございましたー!」と最後に挨拶。

最後に集合写真を撮って終了。眠気と疲労に包まれながらダラダラ集合する感じも、なんだか久々で楽しい。地方から遊びに来た方もかなりの人数が最後まで残っていた。ようやく気兼ねなく大阪に遊びに来れるようになったんだなあ…と感慨深かった。

ちなみに今回のパーティをきっかけに、DJ SOOMAさんが愛媛の「SAKE DEEP」のパーティに出演することが決まるなど、最高すぎるリンクもあったようだ。こうやって現場で繋がって次の動きが生まれることこそ、現場の醍醐味だし、スチャダラが「とにかくパーティを続けよう」と説いた心ではないだろうか。僕個人としても、3年半前にパーティを共同で主催したことがある青森のダンサー友達と「またパーティをやりたいね」と話せたりと、久々に心躍る時間だった。そうやって街を越えて遊んだりクリエイトしたりすることが再び可能になった今、HANERU WORKSが今後どんな企画を仕掛けるのかが気になるところだ。冒頭の彼らの紹介文にもある「face to faceで築きあげ」る関係性こそが、一番最後に残るものだと信じている。

Text : Seiji Horiguchi

【アルバムレビュー】茂千代 & DJ MOTORA『REBIRTH』

2022年12月9日、茂千代さんとDJ MOTORAさんによる共作のアルバム『REBIRTH』がリリースされました。この記事を書いている自分は、大阪でライター/インタビュアーとしても活動しているのですが、茂千代さんは前作のアルバム『新御堂筋夜想曲』(2019)のリリースに際してロングインタビューをさせていただいたり、そのリリースライブのレポをFNMNLに寄稿させていただいたりと、個人的にもお世話になっている&心から敬愛しているラッパー。大阪では文句なしの“ナンバー1 PLAYA”でしょう。

そこで今回は、このニューアルバム『REBIRTH』を拝聴した個人的な感想を書かせていただきたいと思います。


ロングインタビュー「茂千代&DJ SOOMA」

茂千代『新御堂筋夜想曲』リリースライブレポ


今回、茂千代さんがアルバム制作を共にしたのが、同い年のDJ MOTORAさん。長崎在住のDJ/ビートメイカーで、長年のビートプロデュースやマスタリング、編曲などにも携わる大ベテラン。SoundCloudアカウントには、USのHIPHOPのRemix Workやインストのビートなど、多彩なサウンドがアップされています。

そんな二人による注目の今作。

あくまで僕個人の印象ですが、茂千代さんが過去作でも試みていたSF的世界観と、DJ MOTORAさんの侘び寂び&力強さが同居したビートがナチュラルに混ざり合うことで、全体を通してサウンド面、世界観に一貫性が見られます。ちなみに茂千代さんの前作のアルバム『新御堂筋夜想曲』もビートプロデュースはDJ SOOMAさん一人のみでしたが、その時は音のスタイル的にもBPM的にも、かなりバリエーション豊かな仕上がりだったと記憶しています。

切なさすら感じるコード進行からなるメロディと、J Dillaのようにシンプルで力強いMOTORAさんのビートは情緒に溢れていて、そこに茂千代さんのラップが入ることでさらに奥行きが生まれています。全体を通して近未来的なSF映画を彷彿とさせる世界観それを裏付けるのが彼らがインスタにあげているアルバムの紹介テキストです。

20xx年 とあるナガサキの夜。
放浪中のシゲチヨはオープンマイクナイトで
ヒップホップドクターモトラのサウンドと出会う。
意気投合した2人の前に
数奇な運命が立ちはだかった!
突如襲い掛かった不可解な
ノイズにより過去の記憶を
失ったシゲチヨ。
ドクターモトラが生み出す
ソウルビーツを手がかりに
自分が何者かを取り戻す
”再生”へのサウンドトラベルが
今はじまる…..

アルバムの説明としてはかなり個性的。この文を読んでいると、どこまでがフィクションでどこまでが現実なのかの線引きも曖昧になる感覚があります。(これもわざとかもしれない…)


特に僕が個人的に最も食らったのは、アルバムのタイトル曲である『REBIRTH』。景色が脳内で再生される生々しいストーリーテリングや比喩表現は、茂千代さんのラップの真骨頂ではないでしょうか。またSFチックなんだけど、何度か聞いているうちに「これはたぶん現実社会のあれのことだ!」気づかされたりもします。茂千代さんがインタビューの際に「本と音楽が好きな両親からの影響を受けた」と話されていたのを思い出しました。しかもこのストーリーテリングや比喩表現を、押韻しながら行っているというのも冷静に考えてすごすぎる!! 離れ業です。

この曲のほかにも「RECOVERY(=回復)」「REVENGE(=復讐)」と、タイトルに接頭語”RE”がつく曲があります。新たなステージに向かおうとする姿勢を感じます。

要所要所に入っているSEやサンプリングやスクラッチもめちゃくちゃ良いスパイス!否、それらこそがこのアルバムをドラマチックにするエッセンスと言えるかも。例えば古い邦画のセリフを入れたり、リリックを書く時の鉛筆の音を入れたりすることで、より没入させられる!(アルバムを1枚通して聞かせる工夫かもしれない!)


また、アルバムに収録されている『FIRST TAKE』のMVも公開されていますが、ここでも先ほどのテキストのような哀愁漂うSF的世界観に。

– FIRST TAKE – 茂千代 & DJ MOTORA (Official Video)

ただ、“哀愁”や”侘び寂び”という表現が続いていますが、聴いた後は前向きな気持ちになれるのも不思議なところ。『REVENGE!!』では、現在のシーンや社会構造への憤りも見え隠れ。アグレッシブなラインが並びます。

ではMy Turn.
いくでOVERLAP。
痛みよりAmazingで
Awakeさすのが
俺らのREVENGE!

『REVENGE!!』


そしてラストの『RECOVERY』では、まさかのANARCHYさんが客演に参加!!曲のクレジット一覧で目に飛び込んできてその組み合わせの妙に驚きました。DJ MOTORAさんは昨年、ANARCHYさんとの曲『I’m here』を制作した流れもあるので、今回の客演は自然だったのかもしれません。

またご存知の方も多いように、茂千代さんはDJ KENSAWさんプロデュースの不朽のクラシック『OWL NITE』を通してRYUZOさんと交流があり、ANARCHYさんはRYUZOさんのレーベル「R-RATED」所属ということで、決して縁遠いわけではないのかも。とはいえ、その2人が1曲交えるというのはヘッズにとっては新鮮な組み合わせです。

そうやって街や世代を超えて生み出されたアルバム。ライブで聴ける日が楽しみです。(リリースパーティの情報が出ないか随時チェックする必要があり…!)


FRESH DANCE STUDIOでは、茂千代さんのアルバム『新御堂筋夜想曲』をはじめ、多数のアルバムやMIX CDを展開しているので、スタジオに来られた時はぜひ眺めてみてください。ここには数々のアーティストのバックグラウンドやライフスタイルが詰まっています。彼らの音楽や人生を知ることは、音楽の聴き方を変え、きっとダンスのひらめきにも役立つことでしょう。


茂千代&DJ MOTORA『REBIRTH』

Link Coreはこちら

1.IMPULSE
2.REBIRTH
3.FIRST TAKE
4.NOWHERE
5.DON’T QUIT
6.FALL OUT feat. MARCO
7.KODOU
8.MYRHYME
9.REVENGE!!
10.BACK TO WORK
11.RECOVERY feat. ANARCHY

all produce 茂千代&djmotora
mastering:dotssound
artwork:tokiwa02


https://www.instagram.com/horisage/

うまくあるな・きれいであるな・ここちよくあるな!

こないだ、休みの日に「岡本太郎展」に行ってきた。

平成生まれの僕は(1970年の方の)大阪万博をリアルタイムで経験している世代でもないし、大阪に引っ越してきてから8年の間、万博公園に遊びに行くこともない(ニフレルに1回行った程度)のでそこまで思い入れはないんだけど、結局のところ岡本太郎の何がすごいのか(評価されているのか)を知りたいのもあって足を伸ばした。

場所は今年2月に完成したばかりの中之島美術館。週末というのもあってかなり混み合っていた。どうやら無料で観覧できる岡本太郎関連のコンテンツもあるようで、そのスペースは凄まじく長い列ができていた。

中之島美術館について調べると「19世紀後半から今日に至る日本と海外の代表的な美術・デザイン作品を中心」にコレクション・展示されているんだとか。デンマーク発の家具ブランド[HAY]も美術館の1階に入っていたり、ぷらぷらするだけでも楽しい。(人が多すぎるので、週末に行くのはおすすめしない)

展覧の会場内は写真OKとのことなので、色々と撮ってみた。

岡本氏の専門分野は絵画かと思っていたけど、陶芸の作品も多かったし、評論やエッセイも書いている。1930年からパリで過ごしていたが、二次大戦を機に日本に帰国。パリにいた頃や戦時中の作品はほとんどが焼失して残っておらず、現存している作品は戦後に描かれた作品がほとんどとのこと。僕は恥ずかしながら絵のことは本当に何も分かっていないけど、あえて原色を多く用いる(当時批判も多かったらしい)というエキゾチックなスタイルや、線の太さ、そして攻撃性を帯びていると言っていいほどの存在感を放つキャラクターには、時間を超えて氏の存在を感じたし、何かしらの切実さ悲痛さすら感じた。

氏の功績として紹介されていたのが、芸術を大衆にも触れやすくしようとしたことらしい。芸術というのは専門家だけが鑑賞・批評するものではなく一般的な人たちにも開かれるべきだ、というのが氏の態度だったようだ。CMに出演したり、公共の場で誰でも見ることができる作品(太陽の塔なんかまさにそうだ)に力を入れたのはそういう意味があるとか。

氏の「でたらめをやってごらん」「うまくあるな・きれいであるな・ここちよくあるな」というパンチラインが特に好きだ。”枠にとらわれない“、”既存のスタイルを疑う“という姿勢はダンスにおいても必要だと思うし、HIPHOP自体もそうやって突然変異的に生まれ、枝分かれし、成熟してきた文化だ。僕らももっともっと枠からはみ出た表現に挑戦すべきなのかもしれない。もちろん「既存のスタイルをないがしろにする」という意味ではない。枠がなければ逸脱もないからだ。僕らは先人のスタイルに敬意を払ったうえで自分たちにしかできない表現、ひいては生き方を模索すべきなんじゃないだろうか。

と、多少脱線してしまったが、結論として見に行ってよかった。絵のことはよく分からないけど、「なんかすげー」と思うだけでもいいと思うし、「よく分からないから触れない」ではなく、「よく分からないものに飛び込む」ことこそ、ノンバイアスで表現に触れる貴重な芸術体験ではないか。…と、それらしいことを書いておしまいにする。

なお、この展覧会は10/2(日)まで開催されている。オフィシャルサイトはこちら。
https://taro2022.jp

Seiji Horiguchi

もはやダンススタジオの枠を超えた発信!? FRESHが無料MAGAZINE企画をスタート。

FRESH DANCE STUDIOは、第一線で活躍する現役のストリートダンサーが多数所属していて、本格派のダンスレッスンを受けることができるのが特徴ですが、ダンスに限らず、音楽、映像、イベント情報などなど「ストリートを取り巻くカルチャーを積極的に発信していこう!」という理念も(明確に決まってるわけじゃないけど、ぼんやり)あります。

例えば、スタジオの待合室で一番存在感を放っているテレビ。ここにはYoutubeの映像やSoundCloudの音楽が流れるのですが、その時間に入っているスタッフの趣味が反映されています

例えば最近僕が好んで流すのは、敬愛するBudamunkさんのビートライブの映像。場所も音も首の振り方も渋い〜。

もちろん日によって、90’s HIPHOPが流れたり、新譜のR&Bが流れたり、日本のシティポップが流れたりと様々。流れる映像や音楽によって待合室の表情が微妙に変わるのも面白いところですね。


さて。

そんなスタッフの趣味全開のテレビから視線を下にやると、イベントのフライヤーやショップカードがずらり。最近はまたイベントが増えてきたのでフライヤーも増えつつあります。嬉しい!

そこからさらに視線を横にずらせば、棚に並ぶ数々のミックスCDやアルバム(これもこの1,2年でかなり増えたなあ)。

そう。FRESHの待合室はストリートカルチャーに関する情報がぎゅっと詰まっている空間なのです。

またここ数年は特に「情報を発信したい」という気持ちがスタッフのなかでも強くなってきています。カルチャーや人の交差点であるアメ村で10年以上続いてきたスタジオだからこそ、興味が湧くもの、新しいものをシェアしていこうと思っています。例えばインスタのストーリーでもイベント情報や新しくリリースされたMVを積極的にあげたり。もちろん今あなたが読んでいるこのスタッフブログも例外ではありません。過去の記事に遡ってもらえれば色々と音楽やイベント情報も積極的に書かれていると思います。


そうやって情報の発信を大事にしているFRESHが、この春から新しい企画を始めました。公式LINEを使った無料の“LINE MAGAZINE”。その名も

「FUTURE PACK」

 

「MAGAZINE」と言っても、雑誌を作るわけではありません。LINEのメッセージで音楽や映像、読み物、あとはお店やイベントの情報を送るという企画です。やはりブログだけでは載せられる情報量に限界があるし、インスタのストーリーも少し時間が経てば膨大なタイムラインの中に埋もれてしまう。そこで公式LINEのアカウントを使って、皆さんにフレッシュな情報をピンポイントにお届けします。このブログを書いている時点(4/18)で、もう既に2回配信しているので、チェックしてくださった方もいるのではないでしょうか?

まだLINEを登録してなくて、どうやってこの「FUTURE PACK」をチェックすればいいかいまいち分からない方のためにも、購読のしかたを説明しましょう。

手順その1
公式LINEを友達追加する

...以上。

「これだけ?」と思われた方。本当にこれだけです!FRESHの公式LINEを友達追加すれば、あとは(配信日に)自動でトークルーム上に情報が届きます。完全に無料で「続きを読むには有料版へのアップデートが必要です」といった課金オチもないので安心してください。


例えば過去2回の配信ではこんなコンテンツをお届けしました。

◉4/1(金) FUTURE PACK vol.01

・おすすめMIX(by DJ D.A.Iさん)
・マネージャーエッセイ(僕が書かせていただきました!)
・ダンス映像 (インストラクターYUKIEさん)


◉4/15(金) FUTURE PACKvol.02

・おすすめPV紹介(by CHEKEさん)
・体験レッスンの半額クーポン


こんな具合に、音楽・映像・読み物といったコンテンツが毎月1日と15日に配信されます。まだまだこれからも新しいコンテンツをお届けしようと思うので、気になる方は以下のリンクをポチッとして友達追加をお願いします!逆に「こんな情報あったら面白い!」など要望があればドシドシ送ってください!

ちなみにこの公式LINEのトークルームは、スタジオへの問い合わせの手段としても使えます。分からないことや気になることがあれば気軽にLINEでメッセージを送ってください!スタッフがお答えします!

ではまた。

Seiji Horiguchi

大盛況に終わったTIMELESS vol.3 !!! レポ

 

8/1(sun)に開催したTIMELESS。
結成から間もないフレッシュなチームからシーン第一線のOGまでが登場しショーを披露するだけでなく、DJタイムやフードブースなど細かい部分にまでこだわった隅から隅まで楽しめるパーティを目指しています。

3回目である今回から、南堀江Socore Factoryに場所を移しての開催。結果から言うと…大盛況でした!!事前に「100名まで」と人数制限を行っていたのですが、イベント1週間前には予約が埋まってしまいました。 (定員が埋まってからご連絡いただいた皆さん、申し訳ありませんでした…)

現場でのイベントがなかなか厳しい状態が続いたため「久々の現場っす!」という出演者もいたりと、みんな気合いは十分。TIMELESSでは、もはやおなじみとなっているMC KORGEさん(僕は心の中で「MC鋼メンタル」と呼んでいる)の仕切りとともにショーはスタート。この日、どれだけダンサー達が気持ちをぶつけてくれたのか、気になる方も多いでしょう。早速1部のショーの写真からご覧ください!


THE DOGG


Fat$hots+BLUE


You TIME


the bubble roller


B.O.L


keijiro+MaaYa


tipcy


NODuHAZE


som low union (from富山)


もちろんオープンしてからの時間や、ショーとショーの間にはDJタイムもたっぷりあったのですが、そちらは後ほど紹介させていただきましょう。続いて2部のチーム……

の前に、スーパー激レアなシークレットゲストが登場!!

GONさん&よっちさんによる「わっしょいクルー」!

お客さんはもちろん、実は出演者にも秘密にした状態で、いきなり登場していただきました!先日のODDでも爪痕をがっちり残した二人。この日会場にいた方はラッキーでしたね!

もう登場からこのハンズアップ…!

彼らにしかできない沸かせ方で、最高のショーを披露してくれました。


シークレットゲストが終わったところで、元のプログラムに戻ります。わっしょいクルーの後、踊りにくいか… と思いきやトップバッターのAtを筆頭に、堂々のショーが続きます。POPPING / HIPHOP / GIRL’S HIPHOP 、と三者三様の濃厚な時間でした!!


At


ZEST


B△MDIVA+AZU


さらにさらにこの日の目玉、スペシャルゲストショーケース。関西を代表するこちらの3チームが登場!!

DEBOC


EXmatic.


CHEKE nagamune


ライブ感」というか、チームの世界観をただ放つだけでなく、オーディエンスを引き込んで巻き込んで一つのショーを作り上げるスペシャルゲストのショーは流石の一言!改めて「この方達をブッキングしてよかった!!」と思えるショーでした。特にラストのCHEKE nagamuneのショーはさながらROCK STAR!! オーディエンスとの密な距離感や掛け合いも込みでショーが完成していたような気がします。やっぱり生が一番だぜ!!!


さあお待たせしました。ここからはスナップタイム。もうここで多くは語るまい!! TIMELESSらしい最高の笑顔の連続でした。

フロアを良き空気感に持っていってくれたDJ ANCHIN、そしてゲストのDJ MO-RIさん、さらには我らがDJ YUNGEASY先生も急遽参戦!いつにも増して豪華でピースな時間が続き、パーティは最高な形で幕を閉じました。

 

 

 

 

 

 

フードブースの牛丼を頬張る人…。リラックスして静かに音に揺れる人…。派手にアルコールを浴びる人…。フロアでプチャヘンザしては貪欲に楽しむ人…、ひたすらにダンスについて語り合う人…。「楽しみ方は自由!!」が一番の特徴であるTIMELESSで、みんなが思い思いの過ごし方をしていました。改めてお越しいただいた皆さん、ありがとうございました!!

大阪はこの翌日から再び緊急事態宣言が出てしまったので、今後のTIMELESS開催については予定は立っていませんが、いつか必ずこの盛り上がりを超えるTIMELESSを開催したいと思います!! その日まで皆様、元気でお過ごしください!!

FRESH DANCE STUDIO STAFF 一同

FRESHに来たら、まずはCDの棚に注目すべし。リリースラッシュの2021年。

あなたが最後にCDを買ったのはいつですか?

最近はアーティストのアルバムもストリーミングサービスで配信され、それをざっくりつまみ食いしながらお気に入りを探すという聴き方の人も多いでしょう。ここでは「CDでアルバム買って聞き込んでた昔が懐かしいぜ」的な内容を書くつもりはありません。ただ、今もなおCDというフォーマットが盛り上がっている世界があります。MIX CDです。

デジタルで配信されている新譜、逆にレコードじゃないと聴けないレアな音源、あるいはアーティストの身内だけが持っているライブ音源などなど。そんなあらゆる曲を、繋げたり、エフェクトをかけたり、スクラッチを入れたり、2枚使いをしたりすることで、新たな魅力を吹き込み、音楽の聴こえ方をフレッシュにしてくれるのがMIXの役割と言えるでしょう。八百屋に並ぶ新鮮な野菜。そのまま丸かじりしても美味しいけど、ご飯屋さんで料理して姿を変える事で更に魅力が引き出されます。音楽もそれと同じではないでしょうか?

個人的な印象ですが、大阪のHIPHOPのDJは、頻繁にMIXをリリースされている方が多い!クラブになかなか遊びに行けず、もやもやしている我々を励ますかのように、DJによるMIXのリリースが続いています。ありがたい限りです!

…というわけで今回は2021年にFRESHで取り扱いを開始したMIX CDを紹介します。これを読めば、FRESHの待合に置いているMIXやそれを制作したDJ陣に、もっと親近感が湧くはず…!


BETWEEN MUSIC STORE『RADIO4』(年末リリース)

「2021年リリースのMIX」と言いながら、いきなりはみ出てしまいました。昨年末にリリースされて、年始から本格的に販売がスタートしたDJ QUESTAさんDYさんによる『RADIO』シリーズの第4作目。こちらはBETWEENのinstagramにてオフィシャルのインフォメーションが公開されていますので、参考までにどうぞ!↓

大阪を拠点に全国津々浦々、一際目を引くグッドパーティに名を連ね、その安定したプレイと味わい深いミックスワークで確固たる地位を築きあげるDJ QUESTA。そして、ダンサーとして全国的知名度を誇り、意外性からなる幅広い選曲とナイスグルーヴで魅せるDJ DY。数多くの現場を共にしてきたQUESTA、DY、2人によるこだわったセレクトと、グルーヴを重視したありそうで無い新譜ヒップホップミックスとして高く評価され、過去3作ともビッグセールスを記録する人気の『RADIO』シリーズの最新作が4年振りにリリース!
今回も新譜のヒップホップを軸にしたシリーズならではのコンセプトはそのままに、前半のDY side、後半のQUESTA side、前後半でお互いの個性を出しながらも抜群の相性をみせ、それぞれの感覚ながら、ひとつの作品をアップデート。仙台はENCOUNT MC’sよりJANS、PSYCHO PATCH/YDBよりILLNANDESTha JOINTZ/HARD VANKよりKoh & JASS、そしてMonjuよりMr. PUGと豪華MC陣による援護射撃に加え、マスタリングには大阪アンダーグラウンド、FEDUP DOJOよりMoneyjah、アートワークはYOUBOBがサポート。今回も流行を押さえた新譜ミックスとは一線を画す『RADIO』シリーズならではの1枚に仕上がった。

踊れるだけでなく、いろんな場面や景色にぴたりとはまる『RADIO』シリーズは、「HIPHOPを普段からめっちゃ聴く訳じゃない」という方にもオススメできます。「最近の新譜はこういうのがあるのか」と、バッチリナビゲートしてくれますヨ^^


DJ SOOMA『ILLSUPPLY MIX』

OSAKA UNDERGROUNDレペゼンのDJ SOOMAさんによるMIXです。SOOMAさんは現場でのプレイはもちろん、MIXや音源の中に粋な仕掛けを施すのが本当に上手な方です。「ホスピタリティ」というか、聴き手をどこまでも気持ち良くさせてくれる方だと思っています。

そんなSOOMAさんの2021年一発目のMIXがこの『ILLSUPPLY MIX』。なんと、タイトルに「ILL」が含まれる曲だけで構築されているんです!僕はこのテーマを聞いた時、「そんな事可能なんすか!?」となりました。トラックリストを眺めれば、「そうきたかー!」の連続。もちろん内容も1曲目から抜群の渋さ黒さ。SOOMAさんのキャリアと遊び心を存分に堪能できます。
こちらは、大阪South Side、堺のスケートブランド”ILLSUPPLY”さんからのリリースです^^


DJ GAJIROH『NEEDY WEEDY』

京都を拠点に、大阪でもバシバシ活躍中のDJ GAJIROHさん。今日紹介しているDJの中で、最もMIXのリリースの頻度が高いのがGAJIROHさんでしょう。

今回は大麻に関する内容の曲だけを繋げた、コンセプチュアルなMIX。こちらもトラックリストを眺めるだけでも面白い!先ほどのSOOMAさん同様、粋なMIXの作り手であるGAJIROHさん。スタジオに納品しに来てくださる時にいつも少しだけお話を聴くんですが、とにかくHIPHOPが好き!というのがビンビンに伝わってきます。

ここで、インスタからGAJIROHさんのMIXに関するコメントを拝借。↓

DJなんで曲を覚えるのは得意でして、曲の内容と合わせて、地域、年代、ネタ使い、CREW、PRODなんかも一緒に脳内タグ付けして覚えて日々選曲している。HIPHOP DJはソコが重要だとずっと思ってる。聴いててよくわからんDJはソコが全然足りて無いからやと思ってる。今までは年代や地域やBPMでまとめて来たけど、今回はLYRICSにフォーカス!SMOKERはもちろん、HARDなHIPHOP FREAKSに聞いて欲しい。


DJ MO-RI『Lump of Sugar』

こちらも大阪アンダーグラウンドレペゼン、DJ MO-RIさんによるニューMIX。中崎町のSHOP[Lumps]の6周年を記念した特別な一枚です。選曲はもちろん、タイトルやディスクジャケットなど細部まで (否 細部にこそ!! )こだわりを置いたMIX CDに定評のあるDJ MO-RIさん。公には言ってない隠された仕掛けや想いもあったりと、毎回話を聞くのが楽しいです^^

今回は、CLASSICな歌モノのREMIXからゆったり首を振れるDOWNTEMPO、そしてシンガーÄuraさんの名曲『monologue』まで幅広くセレクト。長年フロアを揺らしてきたMO-RIさんだからこそ
ユルいだけではないグルーヴィなMIXに仕上がっています!

テーマは「お店を開ける時に流して気持ち良く聴ける」感じとのこと。僕は、朝一のコーヒーと共に聴いたんですが、抜群の爽やかさでした。ありがたい!


DJ GAJIROH『DIALOGUE vol.7』

先ほどのGAJIROHさん、again!! 2021年の上半期にリリースされた新譜をチェックするにはもってこい。新譜はトラップだけ?否!ブーンバップもかっこいい作品が多く生み出されています。GAJIROHさんがインスタで公開している収録アーティストも合わせてチェックしてみてください^^

CONWAY THE MACHINE, D-STYLES, DAVE EAST, DJ MUGGS, FLEE LORD, MAYHEM LAUREN, SMOKE DZA, J.COLE, PATRICK PAIGE Ⅱ, SNDTRAK, TOPAZ JONES, H.E.R., BLU, FRANKENSTEIN, DENZEL CURRY, G PERICO, LUCKY DAYE, JOYCE WRICE


SOOMA&MO-RI『BLACK-N-WHITE』

ラストに紹介するのは先ほども登場したSOOMAさんMO-RIさんによるダブルネームのMIX。大規模なパーティの開催が叶わず、音を聴きたくても聴けないヘッズの為に「PRIVATE MEETING」と題して小規模な集会を企画し、仲間と共に音を鳴らしてきた二人のバイブスやコントラストをそのままパックしたMIX。

ピンチをチャンスに変えて、自分のできる表現をする、そんな彼らの姿と音楽に力をもらいます!トラックリストを眺めるだけで二人の特色が分かる上級者ヘッズもいるのでは?2枚組で2500円ほどなので、完全にお値段以上。ちなみにFRESHに置いている分は、このブログを書いた日に僕が一枚買ってしまったので、残り4枚しかありません!すみません!


いかがでしたでしょうか?

この他にもFRESHには様々なCDを置いています。素早く手広く曲をチェックするのも楽しいですがそんなストリーミングでザッピングする聴き方が多い今だからこそ、MIXによって曲の魅力を再発見する楽しさが増すのかもしれません。是非お気に入りの一枚を見つけてくださいね!

最後に僕の好きなラッパーHANGさんのnew PVでお別れしましょう。

Seiji Horiguchi

SOWL VILLAGE2020対談–インタビュアー長めのあとがき[関西版]–

「HIPHOP村おこし」を合言葉に、毎年川崎CLUB CITTA’で開催されているSOWL VILLAGE。

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今年の開催は3月27日の金曜日。…のはずだったのですが。
コロナウイルスの影響を受け、先日「開催中止/払い戻し」が発表されました。
うそだああああ。

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しかし、中止になったものは仕方ない。一番辛いのはオーガナイザーだ!
なくなったことを嘆くよりも、できることをやろう!
…ということで
光栄なことに僕が今回担当させていただいた対談インタビューの
インタビュアーあとがき」なるものを書かせていただこうと思ったわけです。

自粛モードでイベントがなくなりまくっていて寂しいですが、
逆にお時間のできた方は最後まで読んでいただけると嬉しいです^^

「関東版」のあとがきはこちら。

SOWL VILLAGE2020対談–インタビュアー長めのあとがき[関東版]–

https://freshdancestudio.com/blog/2020/03/sowl-village2020%e5%af%be%e8%ab%87-%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%93%e3%83%a5%e3%82%a2%e3%83%bc%e9%95%b7%e3%82%81%e3%81%ae%e3%81%82%e3%81%a8%e3%81%8c%e3%81%8d%e9%96%a2%e6%9d%b1%e7%89%88/?fbclid=IwAR2mWYcwAh_nxgwzgYCW0rICf_CspJFRhdPgdrJfzRlqOc16tDtz2ZH2p-Y

本日はVol.2!「関西版」!


 ◉関西 HONGOU×Jambo Lacquer

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http://sowlvillage.com/sowl-village2020-interview-west/

HONGOUさんは言わずもがな、maplecomicsとFRESH DANCE STUDIOのオーナー。僕の上司。

関西HIPHOPシーンを代表するHEX BEXの功績やかっこよさについては、
紹介するまでもない。大野暮じゃあ。
日本中にずっと影響を与え続けています。文字通りずっとです。

一つだけエピソードを紹介するとするならば…。

PROPSがまだアメ村のGrandCafeで開催されていた頃、
HONGOUさんが、ショー中に発したある一言が今も胸に刺さっています。
全編やばいんですが、見てほしいのは15:47から。

THE・男気。

(ちなみにこの時、僕はこの会場のGrandCafeのスタッフとして働いていました。
ショーケースの時間だけ、働くふりをしてこっそりフロアへダッシュしたものです笑)

それから、DewsでのSYMBOL-ISMのTAKUYAさんとの対談も、
HONGOUさんのルーツや人柄がわかるのでオススメ!

【Dewspeak vol.05】ヒップホップシーンに絶大な影響力を持つ関西のカリスマHONGOU(HEXBEX)
https://dews365.com/news/dewspeak05-hongou.html


対してJambo Lacquerさんは
北大阪は服部緑地公園をホームとするHIPHOPクルー「WARAJI(わらじ)」のメンバー。

ダンス、ラップ、そしてビートメイク…。使えるものは全て使ってクリエイトされている方です。
僕にとってはイヤホン越しにチルを注ぎ込んでくれるアーティストです。普通にファンっす。
インタビューの中でも言ったのですが、
彼の音源を初めて聴いたのはYoutubeに上がっていた「J-L」という曲。

踊りたくなるビートとフロウ。闘争心に火をつけてくれるようなバッチバチなリリック。
「なんじゃこの人は!」となって、そこから彼の音源をチェックするようになりました。
Olive Oilさん、EVISBEATSさん、Yotaroさん、Sweet Williamさんなどとの
音源も本当に素晴らしい…。

ファンの皆さんにとっては自明の通り、彼の魅力の真骨頂はメロディライン。

時にレゲエのような、時にお経のような。優しいメロディ。
あの口ずさみたくなるメロディはどうやって湧き出てくるんだろう…とずっと思っていたのですが
インタビューの中で

トラックを最初に聞いた時の感覚が勝負というか。
何も考えずに出来るだけその時に浮かんだメロディを
乗せるように意識してますね。
時間が経つとフレッシュに捉えられなくなるので。

とおっしゃっていたのは本当に衝撃でした…。


そんな二人による対談。楽しみでしかないやん!

実はインタビューの日程が決まった時点で、僕はお二人に
LINEで簡単な事前アンケートを行ったんです。そのうちの質問内容の一つがこちら。

「幼少期〜思春期はどんな子どもだった?」

それに対するお二人の回答はというと…

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◇HONGOUさん
山育ちで、近所のおっちゃんが散弾銃で撃ち落としたスズメを食べて育ちました。

◇Jambo Lacquerさん
母親が音楽と楽器が好きで、物心がついて音楽にハマったきっかけは兄貴の友達のdrummer。当時自分は小4で、初めて観た時に衝撃すぎてその頃にドラム習い始めました。

この回答結果を見たHONGOUさんは思わず呟きました。

ジャンボはサラブレットやと思う。
俺の生い立ちは音楽には縁がないわ!
ジャンボとの違いがやばいよな(笑)

僕もそう思いました!二人の育ち方、全然違うやん!このキャラにしてこのルーツと言うべきか…。
でも、これだけ対照的な生い立ちの二人が
PROPSエアコン、そしてSOWL VILLAGEという
フロントラインなイベントで一緒になるって改めてすごいなぁ。
いろんな出身の人が一つの場所に集まって技を競ったりクリエイトしたりできるのも
この世界の面白いところだなと思うわけです。

超個人的な話になってしまうんですが
「ドープ」とか「ハードコア」っていう言葉が似合う
アメ村のクラブ(少なくとも初めはそう思っていた!)に
奈良市の「高の原」というニュータウン出身の自分がいることに
違和感を抱いていた時期もあったんですが
いつからか、これでいいんだと肩の力が抜けた気がします。
好きなものを追いかけて、やりたい事をまっとうすればそれでいいか、と。

マッチョでハスリンなラップが台頭していた80〜90年代に
独自のユーモアで日常を赤裸々に歌ったDe La Soulのようにね。


更に今回印象に残った話は「本番前のスイッチの入れ方」について。

お二人とも共通して「わざと緊張する方に持っていく」とおっしゃっていたのには面食らいました。
あれだけ生い立ち違ったのに、そこは共感するんかいな!

経験を積みまくると、リラックスした状態からいかに本番モードに持っていくか
みたいなところになるのでしょうか。あがり症の自分には到底難しい…。

この「本番への持っていき方」はいろんな方のお話を伺いたいところでもありまして。
普段話している雰囲気そのままでナチュラルにステージに上がる方もいれば
なんか憑依してますやん…ってくらい本気スイッチ入る人もいるじゃないですか。
(もしかしたらダンスのジャンルも少し関係あるかもしれないな。なんとなくやけど。)

そんなこんなで、生い立ちは大きく異なるけど
同じ大阪のHIPHOPシーンの中で繋がったHONGOUさんとJambo Lacquerさん。
気づけばインタビュアー(僕)からの質問がなくても話は弾みまくり、
対談は2時間に渡りました。でも、本当にあっという間だったな。
忙しい中時間を割いて、さらに赤裸々に語ってくださったお二人に感謝です。


 

前回の「関東版あとがき」の時にも書きましたが、
今年のSOWL VILLAGEは中止にこそなりましたが、
この対談インタビューは幻のSOWL VILLAGE2020の記事としてHPに残っています。
TAKESABUROさん、ILL-SUGIさん、HONGOUさん、Jambo Lacquerさん、
計4名のアーティストの言葉を是非チェックしていただき、
みなさんの生活のヒント、あるいはちょっとした刺激になってくれれば
それだけでライター冥利に尽きます!

それでは、これで長いあとがきを終わります…が、

最後に読んでくださった方にもう一つだけお願いが。

今回の
SOWL VILLAGE2020の対談インタビューの記事や
このあとがきシリーズの感想をいただけるととても嬉しいです!
この記事の下のコメント欄でもいいですし
以下のアカウントへのDMでも構いません。

https://www.instagram.com/horisage/

面白かった、もっと詳しく知りたい、ここがわかりにくい…などなど
ぜひ意見を聞かせてください!
インタビューに関係ないことでも、最近気になるトピックや
ダンスや音楽やイベントの話でもいいですよー!笑

Seiji Horiguchi


 

Seiji Horiguchiプロフィール

sage-horiguchi

FRESH DANCE STUDIOマネージャー。フリーライター。新聞記者になることを夢見る学生時代を経て、気づけばアメ村に。関西を中心に、アーティスト(ダンサー/ラッパー/シンガー/フォトグラファー/ヘアアーティスト stc…)のプロフィール作成やインタビュー記事の作成を行っている。現在の主な執筆活動としては
・FRESH DANCE STUDIOインタビューシリーズ
・カジカジ、連載「HAKAH’S HISTORY」
・その他パーティレポ、ダンスチーム紹介文、音楽作品の紹介などが挙げられる。大阪のアンダーグラウンドシーンにアンテナを張りつつストリートカルチャーの「かっこいい」を広めるべく日々執筆中。

ご依頼はこちらまで。
sage.the.nara@gmail.com