【パーティレポ】ちょうどいいパーティことTIMELESSの夏場所。

【コロナは第五類に。全力のTIMELESSを見せよう】

2020年秋。緊急事態宣言の影響により激減するパーティと、それに呼応するように目に見えて減っていくダンスチーム。「このままやったら大阪のクラブシーンで踊るダンサーがいなくなってしまう…!」という危機感から走り出したのが、FRESH DANCE STUDIOプレゼンツの「TIMELESS」だ。

とはいえコロナ禍での開催であるがゆえに、人数制限をする必要があったり、オンライン配信に時間と予算を割かれたりと、思うようなパーティ作りができなかった。が、辛抱強く続けた結果、少しずつ「このイベントに出るのが目標でした」と、若手ダンサーたちからありがたい声をかけてもらうようになった。

そんなTIMELESSの7回目。今回は、コロナウイルスが「第五類感染症」に分類されて初めての開催。もう人数制限も、検温やマスク着用義務も不要。つまり、ダンスイベントとパーティの要素を併せ持つ「ちょうどいいパーティ」ことTIMELESSの本領を発揮できる時がやってきたのだ。


結果からいうと、今までで一番充実した回だった感覚があったので、パーティレポを書いてみる(たぶん長くなるだろう)。

【半分以上が初出場。フレッシュな顔ぶれ】

これまでのTIMELESSはお馴染みのチームに出演してもらうことが多かったけど、今回は16組中9組が初出演。なんと半分以上が初めましてだったわけだ。逆に、初回から連続出場記録を伸ばし続けてくれていたZESTやBullDogsが(他イベント出演のため)不参加だったこともあり、全体的にフレッシュな顔ぶれでの開催となった。

初参戦チームは、生まれて初めてショーケースをする男子高校生2人のBaumkuchenや、実の姉妹が組んだJAZZチームPOLICY、東京からチームメイトや仲間を引き連れて凱旋する社会人ダンサー率いるjammin’に、イベントをオーガナイズして地元神戸のシーンを盛り上げているNocksなどなど、それぞれに気持ちやドラマがある。

もちろん、前回に続いて2連続出場のRUFUや、出演するときも遊びに来るときも全力な“TIMELESSっ子”(僕が勝手に呼んでいるだけだ)のクノイチ、奈良出身のGIRL’S HIPHOP3姉妹のCHICC、そしてFRESHインストラクター/スタッフでもあるTAKUYAが所属するAtといったTIMELESSに複数回出てくれている頼もしい面々も。

【「俺、本番踊ります!」リハ直前の捻挫事件】

当日。会場である[SOCORE FACTORY]のスタッフかさごさんと打ち合わせをしながらリハーサルの準備。

少し落ち着いたタイミングで一息入れ、インスタのストーリーを見ると、先述の東京から凱旋する社会人ダンサーが、FRESHの待合の様子をアップしている。どうやらリハーサル前にFRESHをレンタルして練習してくれているらしい。入念な準備に気合いが伝わってくる…と思いきや。

「神様…なんでこのタイミングで…」の文字。

よく見ると、剥き出しの足を氷のようなもので冷やしている。どうやら練習中に足を痛めたらしい。なんと間の悪いことだろう…!そのあと、会場に現れた後輩は、「リハは全力でやれないんですが、本番は気合いでいきます!!」と、顔を青くしながらも、爛々と燃えた目で宣言。心配ではあるが、ここまで来たら多少無茶でも頑張ってもらうしかないのか…。ちょうどこの日から始まった夏の甲子園のムードも相まって、怪我を抱える選手を見守る監督の気分だった…。

【スパイスカレーが食べられるパーティ】

怪我のことも気にかけながら、ダンスリハやDJによるサウンドチェックを終え、いざオープン。あたりにはスパイスカレーの香りが漂う。入り口のすぐ脇でお客さんを待ち構えるフードブース[Kikki Curry×Kitchen MUMU]だ。もはや関西圏のパーティに引っ張りだこの[Kitchen MUMU]は、TIMELESSには欠かせない存在。

毎回、しっかりとカレーの種類を変えてくるあたり、真剣に向き合ってくれていることが伝わってくる(そうやって柔軟に味や具材を変化させられるのもスパイスカレーならではの魅力だ)。

また、個人的にも交流のあるKikkiは、TIMELESSの1ヶ月ほど前に2人で飲みに行ったとき「僕の地元の北海道で蝦夷(えぞ)鹿の肉を仕入れられそうなので、今度のTIMELESSは蝦夷鹿のカレーをやろうかな」とつぶやいた(彼はよくつぶやくように話す)。

ただ、彼らのあいがけカレーは1,000円。Kikkiのもとに入るお金は単純計算で1杯あたり500円
「材料費がかさばりすぎると、儲けが出なくなるんじゃない?」と僕がいうと、Kikkiは「まあ利益よりも、やってみたいって気持ちが強いんでね」と笑いながらつぶやいた。もともとは料理など一切興味がなかった彼がここまで頼もしい料理人になるとは…。人生とは何が起こるかわからないものである。

【DJ JAM→DJ GRADEEのgood vibesプレイ】

オープンDJは、誰よりも楽しみ楽しませる“Mr. TIMELESS”ことDJ JAM。彼こそ初回からずっと出演してもらっている頼もしすぎるプレイヤーだ。これまでのFRESHの発表会でも、何度も参加してもらったりと、FRESHと最も近い距離にいるDJといえるだろう。そんなJAMのプレイは、スロウなレゲエで幕開け。日本有数の祭りの町、岸和田出身のJAMは、DJのキャリアをスタートさせる前からレゲエを聴いていたという。レイドバックなレゲエで、夏感を高めてくれる。割と早い時間から賑やかになっていく会場。

JAMに続き、2番手にブースに潜り込んだのは、この日物販ブースでも参加してもらっていたレコードショップ「pinks vinyl(ピンクスバイナル)」を運営するDJ GRADEEくん。

オンラインレコードショップである「pinks vinyl」は、ユーモラスかつ音楽愛が詰まったCMや映像コンテンツが定期的にアップされるので、普段レコードを買わないという人もチェックしてみてほしい。

幅広い音楽に明るいGRADEEくんは、サンプリングミュージックへの愛を感じるミックスで心地よくナビゲート。この日は、普段クラブに行かないような層も多い印象だったが、そういった人もリラックスできるようなスムースな歌モノを織り交ぜながら、徐々に人口密度が上がっていくフロアを巧みにアゲる。


【気持ちが込もった1部ショー】

JAM→GRADEEの流れで空気があたたまったところでいよいよ1部ショーケースの時間。
MC KORGEさんの登場。この人のベシャリは、緊張と緩和がクロスオーバーするTIMELESSの空気を生み出す重要な要素だ。関西HOUSEシーンを代表するダンスチーム「KURINE」として長年活動されているKORGEさんだが「最近だんだん声が通るようになってきた。喉の開き方がわかってきたかも!!(笑)」と話すように、各所の現場を経てMCスキルも磨いている。

彼の呼び込みによって1部チームが続々と登場。とにかく気持ちのこもったショーが続いた。先ほどの捻挫してしまったダンサーも、怪我人とは思えない迫力のあるショーを見せた。


<Baumkuchen>

<POLICY>

<Nafeel>


<舞+MIRAI>


<Fushime>


<Nocks>


<SSWB>


<jammin’>


<Rod>


<CHICC>


<ヌビアン>


<RUFU>


【DJ CH.0のプレイ直前の一言】

続いてこの日のゲストDJ CH.0(チョウ)くん。京都在住の敏腕DJで、GRADEEくんと共にpinks vinylの運営も手掛けている。僕は個人的に彼がKID FRESINO氏と主催するパーティ<OFF-CENT>にも遊びに行ったり、スタジオで彼のミックスを流したり、過去のインタビュー記事を密かにチェックしたりしていたこともあり、TIMELESSのゲストDJとして呼ぶことができて光栄だった。

機材のセッティングを素早く行いながら僕にこっそり「こんな大勢の前で回させてもらうの、嬉しいです!」と一言。いやむしろこちらがありがたいっす…!

新旧のHIPHOPはもちろん、LAのビートシーンにも明るい彼のバックグラウンドを思わせるようなプレイ。テンポを巧みにシフトしながらフロアをロック。1部ショーが終わり緊張が緩んだ会場との空気もマッチして、クラバーたちがバーカンとフロアを往復する歩みも加速


バーカン前に設置された「pinks vinylブース」も次第に賑やかに。500円で買えるお手軽なものから、5000円程度のレコードまでがレコ箱に入ってズラリと並ぶ。視聴用のレコードプレイヤーも設置されたブースには、ダンサーからラッパー(ラッパーも遊びにくるのがTIMELESSなのだ)までが集合していた。


【洗練された2部。からのsucreamgoodman!!】

続いて2部のショーケースがスタート。1部のチームももちろん気迫がすごかったが、それをさらに超えてくる熱量と、より一層洗練されたチーム感。それぞれに思い入れがあることが伝わってくるショーだった。


<THE DOGG>
<クノイチ>
<At>

そして…

<SP GUEST SHOW : sucreamgoodman>

言わずもがな、抜群のかっこよさ。シンプルなインスト(ラップや歌がない)ビートのループに対し、無数のリズム表現を見せていく。圧倒的な存在感と色気。会場の熱気と歓声は最高潮に達した。


【DJの腕と音好きたちの相乗効果で加速するパーティ】

全てのダンスショーが終わったが、まだまだ終わらない。再びGRADEEくん→JAM兄の順番でDJタイムが続く。DJ GRADEEくんの2巡目は、先ほどのスムースなR&BとはうってかわってTRAPやJapanese HIPHOPを中心にフロアをアグレッシブにバウンスさせる。せっかくなので、パーティスナップでそのムードを振り返ろう。

終盤戦は、DJ JAMの全曲エモ気持ち良い無双モードに加え、CH.0くんも再登場し、軽くB2B。なんと贅沢な…。3人のDJも互いに気心が知れたメンツだったので、リハの段階からリラックスしている様子だった。TIMELESSのほんの2,3日前にリリースされたばかりのTha JontzのWELL-DONEのブランニューがかかったりと、粋な場面も。

 

DJの腕と貪欲なパーティ好きたちの相乗効果によって、パーティは延長に延長を重ね、音が止まったのは、けっきょく当初のクローズ予定時間を1時間以上超えた夜中24時。割と遅くまでお客さんも残っていて、神戸や京都、和歌山からはるばる来てくれた出演者たちも、終電ギリギリまで遊んでくれた。スペシャルゲストとして出演してくれたsucreamgoodmanの3人も最後の最後まで楽しんでくれた様子だった。

こうして7回目となるTIMELESSは幕を閉じた。文句なしの大成功だ。出演してくれた全ての出演者と遊びに来てくれた全てのお客様にお礼を申し上げる。

【この3年間のこと。しみじみ余韻】

自分は今回、TIMELESSの告知を行うにあたって過去の回の写真を眺めていた。

2020年頃から活動を始め、TIMELESS vol.1に出演してくれた初々しいチームが、今ではコンテスト入賞の報告をしてくれたり、アーティストのバックダンサーに起用されたりしている。自分にとってはあっという間だったが、確実に全員が3年分 年をとり、3年分の経験値を獲得している。TIMELESSも、始めたばかりの時はパーティの色も何もない状態だったが、3年間続けてきてようやくカラーや役割のようなものが定着しつつある。そうやって若手ダンサーたちと一緒に成熟できてきたことを感じ、嬉しく思った次第だ。改めて1回1回を丁寧に開催できていることに感謝し、次に目を向けようと思う。

【後日談。怪我をした彼は…】

リハ直前で足を捻ってしまい、本番を気合いで乗り切ったダンサーだが、その後聞いたところによると、1ヶ月程度休めばまた活動できるようになるとのことだった。「これからも、大阪に僕らの活動が届くように地に足つけて精進していきます!」とLINEがきた。うまいこと言わんでええねん!

text : Seiji Horiguchi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Proudly powered by WordPress | Theme: Beast Blog by Crimson Themes.