インタビュー カルチャー

「現場0距離型」の新たな動き。ダンサーがインタビュアーを務めるメディア紹介。

◉なぜインタビューが好きなんだろう

僕はFRESHのHPで公開されているインタビュー記事の作成を担当している。スタジオ所属のインストラクターをはじめ、FRESHと密な距離にあるアーティストやクリエイターの話を聞き、そのエッセンスをスタジオ外へ発信するのが主な役割だ。

FRESH LONG INTERVIEW シリーズ

またほかにも、個人のメディア「草ノ根」を2020年に立ち上げ、ZINEやウェブサイトを通してインタビューや対談記事を発信してきた。インタビュー記事を編集するのも、もちろん読むのも好きだ。

【草ノ根WEB】カメラマンQuwaaanインタビュー

では、なぜ自分はインタビューが好きなのか考えてみた。もちろん一般的なアンサーとして考えられるような「アーティストの知られざる歴史や美学を知りたい」という理由もあるにはあるんだけど、僕の場合はもっと根源的な「聞く(知る)」ことへの欲求が原動力ではないかとにらんでいる。

つまり人の話を聞くのが単純に好きなのだ。話を聞く相手がアーティストであろうがなかろうが、自分にないドラマや価値観を持っている人の話は、新しい発見に満ちているし、視野を広げてくれる感覚がある。そしてもちろん大衆を魅了するアーティストへのインタビューでは、時に人生のヒントになるような引力をもった言葉も姿を見せる。そうやって自分が得た気づきを、テキストを通して読んでいる方にも共有したいという気持ちがある。

“現場0距離型”。ダンサー主体のメディア増加中!

 

さて、タイトルにもある通り今日のテーマは、インタビュアーを務めるダンサーがここ数年で一気に増えつつある、ということについてだ。特にコロナ禍以降、この流れが顕著になっている。

もともと非言語の表現を得意とするのがダンサー。しかし自ら聞き役に回り、今まで言語化されなかった部分に光を当てんとする方が増えたわけだ。このことは、6年近くインタビューをしている僕にとって、とても興味深い現象だ。

(一部のマニアックな媒体を除いて)一般的なメディアでは、取材対象であるプレイヤー聞き手(編集サイド)であるメディア(例えば雑誌やテレビ番組など)はセパレートされた構図だったわけだが、プレイヤーでもありメディアでもある立場の人が増えたということになる。こういった<現場0距離型のメディア>は、話し手(=プレイヤー)と同じ視点に立てるという意味で取材対象に寄り添えるし、よりコアな内容を届けることができる。これは、ダンサー1人ひとりが、ダンスやそれを取り巻く歴史・文化・問題について知り、自分の美学を構築することを助けてくれる大事な流れといえるんじゃないだろうか。

「コアなインタビューでは一般の人まで届きにくいし、シーンが外に広がらない」という指摘もあるだろう。しかし個人的には<ダンサーによるダンサーのためのインタビュー>が増えることで、ダンスカルチャーの奥深さを知るきっかけになり、形骸化、競技化の一途を辿るダンスの世界に光が見えてくるのではないかと希望を寄せている。

そんなわけで今回はダンサーが運営するインタビュー企画を4つ紹介しよう。「なんとなく知ってるけど、まだ見たことがない」という方は、ぜひ年末年始のゆったりした時間でぜひチェックしてほしい。そしてそこで語られていることに対して、自分の中からどんな感想が出てくるかを観察してみてほしい。


マシーン原田の部屋

シーンの先駆者であり、大阪随一のイベント運営会社「ADHIP」の会長を務めるマシーン原田さんがパーソナリティを務めるインタビュー。”某番組”さながら、毎回豪華ゲストを呼んで、経歴やダンスにまつわる哲学を掘り下げる。日本のB-BOY第一世代として前線で活躍し、今も会社の運営を通してシーンの発展に貢献している原田さんだからこそ、まさに日本を代表するダンサーたちのリアルな言葉が引き出せるんじゃないだろうか。字幕や効果音もキャッチーで、長尺のインタビューでも飽きさせない編集が特徴だ。FRESHインストラクターのKAZUKIYOさん、REIKOさん、YU-SEIくんの3名も過去に出演している。


lowor tapes

SYMBOL-ISMメンバーとして90年代からアンダーグラウンドシーンを席巻し、現在はD-LEAGUE「DYM MESSENGERS」のディレクターを務めるTAKUYAさん、そしてダンス、DJ、ライター、ついには歌い手などなど、変幻自在の活躍で知られるYacheemiさんという、いずれもアングラからメジャーシーンまで幅広く活躍されている2人の聞き手によって進められる「lowor tapes」

ロケーションも編集も洗練されているし、なんといってもインタビュアーお2人の俯瞰した視点と懐の深さのおかげで、実に聞きやすい!「喋りの間とかトーンも含め見て聞いてもらって何かを感じて欲しいですね」というYacheemiさんの言葉の通り、映像の編集は(アングルの切り替えを除いて)ほとんどなされていない。そんな素朴さに逆に惹き込まれる。

記念すべき第1回目の収録にFRESHオーナーも登場しているので、まだ見ていない方はぜひ。

lowor tapes (Instagram)


「REAL TALK ROOM」 from woman of woman

GIRL’S HIPHOPを1ジャンルとして確固たるものにしたMIOさんが中心となって2023年に発足したメディア「woman of woman」。ワークショップやクラブイベントなど、現場での発信に力を入れる一方で、インタビュー番組として生まれたのがこの企画。

ゲストたちとの肩の力が抜けた会話が続くうちに、気づいたら真面目な話にもなっている!?という予想不可能な展開やテンポ感が楽しい。「これまでラジオはやったことなかったし、不慣れなことも多かったけどまずやってみた!」というMIOさんのコメントは、個人的に勇気をもらった。

配信プラットフォームとしてSpotify(そう、Spotifyは収録した映像も配信できるのだ!)を用いているのも、特筆すべき点だ。音声のみでバッググラウンド再生ができるのはリスナーとしてもありがたい。


『HIGHBREED CLUB TALK SESSION』by GRAYSOURCE

関東きってのHIPHOPダンスクルーGRAYSOURCEが手掛けるプロジェクト。親交のあるダンサーを呼び、GRAYSOURCEメンバーが自らインタビュアーとなって進行する。

今、日本のダンスシーンを賑わせているベテランから中堅、さらには若手のダンサーたちの言葉は熱く、活動の裏側を知ることでまた踊りの説得力が増す。話し手と聞き手の心理的な距離が近いこともあり、インタビューというよりも「GRAYSOURCEとゲストによる対談」という色が強い。まさに先述の「現場0距離型のメディア」の良いところが出た企画ではないだろうか。

もちろん彼らのYoutubeチャンネルは、ダンスショーやレッスン、海外遠征の様子といった映像も豊富にアップされている。多角的にダンスカルチャーを見つめ、HIPHOPマナーに沿いながら発信を続けるクールな集団だ。


◉「なきゃ作りゃいい。」というわけで新企画始動。

今回紹介したメディアに携わるダンサーたちは、もちろんゲストとの対話自体に楽しみを見出している方もいらっしゃるかもしれないが、ダンスに関わる映像メディアが少ないから、自分たちでやってみた!というDIY精神に基づく人も多いだろう。「なきゃ作りゃいい」の精神はいつまでも大事にしたい。

と、いうわけで、FRESHも(インタビューではないのだが)今までにない配信に挑戦することになった。少し前に「新譜紹介」の記事を読んだ方はすでにご存知かもしれない。

【2023年12月最新版】第2弾 今月の新譜紹介!!

自他ともに認める新譜オタクのKURANOSUKE君に、新譜ど素人の僕今熱いUSの新譜を教えてもらう番組だ。

ダンスとラップの二刀流で活動中のKURANOSUKE

とはいうものの、まだどんな内容になるかわからないし、なんなら(クリスマスの時点で)まだ番組のタイトルも決まっていない。見切り発車も良いところだが、とにかくみんなで新譜の魅力に触れようという趣旨のもと、新年からダッシュする予定。まずは1/3(水)のお昼に告知がてらインスタライブを行うので、お時間のある方はぜひ。

1/3(水) インスタライブアカウントはこちらから

Seiji Horiguchi

KURANOSUKE

Text : Seiji Horiguchi

 

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