レンタルスタジオ中に「踊塾」が開講した日。

FRESH DANCE STUDIOのレンタルスタジオは、24時間利用可能で、心斎橋や難波など駅からのアクセスも良いことから多くの方にご愛好いただいている。基本的にはストリートダンスの練習が多いわけだが、もちろん用途は様々だ。スタジオの中には鏡と音響設備とフロアがあるだけなのでダンスだけではなく自由に使う事ができる、ボーカル練習、ヨガ、フィットネス、ウォーキングなど、多くの利用方法がある。今日は過去にあったレンタルにまつわるエピソードを。


ある夏の日。高校の野球部時代の友達の柴田君から5年ぶりくらいにLINEが届いた。僕は地元の奈良の高校を卒業してから長野の大学に進学したので、高校の友達と会う機会がとても少なく、卒業後も疎遠だったので本当に久しぶりだった。

「久しぶり!野球部の〇〇が結婚するらしくて、二次会で流すお祝いムービーをみんなで集まって撮ることになってさ。この日って誠二、暇?」

当時、僕らは25歳。ちょうど結婚ラッシュの第一波の頃だ。すぐに予定を確認したが、あいにくその日はスタジオの出勤日。

「ごめん、その日仕事やわあ。あいつ結婚するんやな!」僕は返事を送った。

かつてのチームメイトをお祝いしたいし、久々に旧友達とも会いたかったが仕方ない。ムービーは無難にスケッチブックにメッセージを書いて写真でも撮るか…と思い、なんとなしにFRESHのレンタルスタジオの予約状況のページをなんとなく眺めていた。すると見覚えのある名前が。

9:00~12:00 STUDIO1 柴田

まさかと思い、すぐにもう一度その友達にLINEしてみると

「そうそう。アメ村の『FRESH』っていうダンススタジオを抑えてそこで撮影することにしました〜

なんと彼は僕がFRESH DANCE STUDIOで働いているということを知らずに、たまたまネットでFRESHを見つけて、たまたま僕が出勤する時間に予約を入れていたのだ。

「え、そこ俺の職場やで!!」
「そうなん!?やば!!知らんかったw」
「その時間働いてるから待ってるわ〜w」

としばらく盛り上がるLINE。偶然ってあるもんだな。

その予約の日(結婚式のムービー撮影の日)。7,8年ぶりに見る顔がFRESHに続々入ってくる。高校の頃はHIPHOPやストリートダンスとは無縁だった僕がいわゆる「B-BOY系」になっているのを見て「誠二久々やな〜」「だいぶ雰囲気変わったな!」と声をかけてくれる旧友。なんだかこそばゆい気もするが、そういった久しぶりのやりとりも含めて友達と再会するのはいいものだ。受付で精算を済ませ早速スタジオに案内する。

「すげー。地下にこんなスタジオいっぱいあるんや!」
「スピーカーでか!」と初めてのダンススタジオに興奮気味の友達。

「で、今日の結婚式用のムービーはどんなん撮る予定なん?」

僕が聞くと、途端に顔を見合わせてもじもじし出す。急にどうした?

「その件やねんけど、ちょっと誠二に相談したいことがあってさ!!」

「相談?」

その瞬間、悪い予感が頭をよぎる。

「ムービーの中でダンスするシーンがあるんやけど、誠二、簡単な役で参加してくれん?」

なんだそれは!さては俺がスタジオにいるとわかった時から俺ありきのシチュエーションで準備していたな?

「ええけど、今仕事中やからちょっとだけしか無理やで!」

と念を押して一緒にスタジオに入る…。

全員が中に入ると、すぐにメンバーの中の一人がカバンの中からごそごそと4,5枚の紙を出し始める。A4サイズのコピー用紙。一枚につき一文字ずつ漢字が書かれている。

「ここのクッションのところに紙貼ってもいい?」

友達が言った。(彼がいう「クッション」とはスタジオ1の吸音材のことである)

「セロテープで軽く止めるくらいならいいけど」と許可すると、その文字が書かれたコピー用紙を一枚ずつ貼り出していく。

ん?誠 …… 二 ……。

そして全て張り出された紙にはこう書かれていた

たまらず吹き出した。意味がわからないし、いよいよ俺ありきのシーンやんけ!

「どういうことやねんwww」

と爆笑半分、困惑半分で問いただすと

「誠二にはムービーの中で俺らにダンスを教える講師になって欲しくてさ」

と今回の企画の全貌を説明してくれた。アイドルの曲に合わせて友人達が踊る訳だが、曲の前半で僕紛する「誠 二 踊 塾」の講師が彼らにダンスをレクチャーするシーンを撮るのだ。ドキュメンタリーのような演出を組み込みたいのだろう。その時点でようやく全てを理解したものの、もちろん急に演技などできるわけがないし、突如現れた「誠 二 踊 塾」の貼り紙を背にニヤニヤしない自信がない。でもとにかく撮影は始まった。

「腕組んで仁王立ちして!」
「鬼コーチみたいなイメージで俺らを睨んで!」
「背中をバシッと叩くフリして!」

なんか気づいたら細かい演出の注文が増えてるな…。早く仕事に戻らないといけないので、必死に吹き出しそうになるのをこらえて「鬼塾長」を演じ、無事に撮影終了。

「帰る時、ちゃんと『誠 二 踊 塾』の紙、取り外して持って帰ってや!!」

と何度も確認した。オーナーや他のダンサーにその貼り紙だけ見られて勘違いされたらたまらない。

そして後日、完成したムービーが送られてきたのだが、文字通り鬼のような塾長としての僕の姿がそこにはあった…。必死に練習するメンバーに対し冷めた表情で睨みつけ無言で殴りつけるシーン。もはや踊りを教えてもいない。これだけ見た式場の人も、僕に対して良いイメージ持たないだろうな…。旧友との再会は嬉しかったが、ダンスをしているというだけで「塾長」役に任命されたのは複雑な気分だった。


極めて個人的なエピソードの紹介になってしまったが、こういった結婚式のムービーや余興の練習で使う方は多い。FRESHはどうしてもアングラで敷居が高いイメージがあるかもしれないが、レンタルに関して言えば実は一般の方の利用も多いのだ。ロールカーテンで外から見えないようになるし、スタジオによっては完全に他の音を遮断できる部屋もある。練習や撮影にはもってこいだろう。

余興の練習を行う場所を探している方がいれば是非お問い合わせいただきたい。

ただし「塾長」としてスタッフが撮影に参加するサービスは今後一切行わないだろう。

Seiji Horiguchi

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