FRESH DANCE STUDIOが送る「夏の風物詩」ことVillage Camp。クラス作品の発表に加え、パーティ要素もふんだんに盛り込まれたお祭り的なイベントだ。
2019年の夏を最後に(コロナ禍の影響を受け)数年間は開催が叶わなかったのだが、今年、実に5年にわたる沈黙を破り復活を遂げた。
発表会とパーティの要素を組み合わせるという意味では、毎年スタジオパルティッタで開催している「NAMURA ATTACK」とも方向性は似ているが、クラブでの開催という点が最大の特徴だ。
クラブならではの音の鳴り、照明、あるいは規模感。関西のクラブという全国に誇るカルチャーのなかで活動してきたインストラクターしかいないFRESHにとって、“クラブでの発表会”というのは、まさに水を得た魚状態なのだ。
具体的にイベントの特徴を挙げるならば、ダンスだけで完結せず、音楽、グラフィティアート、映像、飲食、ライティングなど、ストリートカルチャーを取り巻く要素が密接に絡み合って一つの空間を作っているということだ。
過去の回も素晴らしいキャストが揃っていたが、今回も負けず劣らず濃ゆいメンツが集結した。
というわけでフライヤーから振り返っていこう。
インパクト大のフライヤー。原画は90cm×130cmの超大作!!
毎回フライヤーデザイン&当日のライブペイントを担当する絵描きが変わることはVillage Campの大きな特徴のうちの1つ。今年は和歌山の絵描きのSOUL FLOWERさん。毎年、海に面したイベントスペース[Bagus]で個展を催す行動派アーティストとのコラボが実現した。
下の画像の向かって左が表面。青をベースにした鮮やかな色使いが眩しい。そして右側(裏面)はインストラクターが一人ひとり描写されてキャラクター化に。
なんと表面のデザインは、一度原画としての作品を描いてから、それをスキャンしてフライヤーに落とし込んだという!そのサイズなんと横90cm×縦130cm。相当な時間とエネルギーをかけて作成してくださったのだ。
当日、フライヤーの原画が会場にも!
もちろん報酬が発生することではあるのだが、単なるクライアントワーク的な作業ではなく、「俺が描きたかったから!」というSOUL FLOWERさんの気持ちに、運営サイドもより一層気合が入る。
音と照明にかけた凄まじいこだわり。かかったお金の総額は…?
パーティを取り巻く要素をふんだんに取り入れたことについてもう少し書いてみよう。
会場である[Club JOULE]のサウンドシステムも間違いないのだが、今回はそれに加え、極太で良質なサウンドで長年人気を博している「最高音響」によるスピーカーをフロア後方にどでかく設置。
最高音響が誇る木製スピーカー(HPより参照)
ショーの音源はもちろん、DJタイムのインパクトもブーストさせる為だ。音楽を鼓膜で聴くのではなく、全身で浴びる体験はなかなかできるものではない。
さらにフロアには、オーナーの古くからの友人が運営するSPACE HAZEのレーザーを設置。彼も長年レイヴパーティやフェスに出向いてはオーディエンスを視覚的に魅了してきた空間演出の匠。こちらはダンスショーではなく、DJタイム中のフロアを彩ってもらう。
スモーク×レーザー=夢のような空間。
つまり「最高音響」によるサウンドと「SPACE HAZE」によるレーザーで会場をただならぬ空気感にしようというわけだ。
これらにかけられた費用の総額はというと…。さすがにここでは明かせないので、気になる方はいつかイベントを主催するときに両者をブッキングして確かめてほしい!
逆しんちゃん。嵐を”遠ざける”伝説の晴れ男。
今年のVillage Campは真夏の開催。学生は夏休み真っ只中の開催ということで、気になるは当日の天気。Village Campは、屋内で完結するイベントではあるのだが、雨と晴れでは当然モチベーションも変わってくる。
…なのだが、1週間前の時点でイベントが開催される週末は雨予報…。降水確率50~60%と微妙なラインだし、なんなら日本列島の南で発生した小さい台風の影響も懸念されている。
今まで幾度となく雨予報を吹き飛ばしてくれたオーナーは、スタジオのLINEグループにて「祈ります!!」の一言。スタッフも神頼みならぬオーナー頼みだ。
そしてイベント3日前…。オーナーがスタジオのLINEにて「晴れ予報に変わりました!」の報告。さすがすぎる。
劇場版の『クレヨンしんちゃん』は、何かと嵐を呼びがちだが、我らがスタジオオーナーは、まさに逆しんちゃん。嵐を吹っ飛ばす晴れ男だ。
FRESHの歴代イベントを支えし男、DJ JAM。
逆しんちゃんのおかげで当日は、これ以上ないピーカン。外を歩くだけで汗がふきだすほどの猛暑日となった。最高のVillage Camp日和だ。
FRESHからJouleまで荷物を運ぶスタッフ(筆者撮影)
この日のオープンDJは、大阪筆頭のHIPHOPクルーTha Jointzに所属するDJ JAM。
10代の頃から大阪のクラブシーンで揉まれに揉まれ、さらにここ数年は、Tha Jointzでのライブや、ダンスバトル、アパレルブランドのポップアップストアなど幅広い現場での経験を積み、もはやどんなT,P,Oにも自在にフィットしてフロアをアゲる安定感抜群のDJだ。
もはや多少のハプニングでは動じないJAM兄。
これまでFRESH主催のイベントにも幾度となく出演してくれている彼は、ダンサーの好みも熟知しつつ、ディープな内容をお届けしてくれる。
Village Campに来れなかった方も、どこか別の現場で彼のDJプレイをぜひ生で聴いてほしいのだが、なかなか現場に行けないという方は、まず彼のミックス作品からチェックしてみてほしい。
そんなご機嫌な音楽に合わせ、先述のライティングの匠、SPACE HAZEによるレーザーがフロアを駆け抜ける。
20年の活動は伊達じゃない!ダンサーの血を騒がせる太鼓集団イーリャダスタルタルーガス。
徐々に人が増えてきたフロア。クラス作品の始まりを今か今かと待つお客さんの意表を付くように、後方の奥から太鼓の音が鳴り響く。太鼓集団イーリャダスタルタルーガスだ。関西の野外フェスやマーケットイベントに出没してきた彼らは、なんと今年で活動20周年という節目を迎えている。
そんな年季の入った大所帯クルーが、大小様々なサイズの太鼓を打ち鳴らしながらステージ前へと歩を進める。全身の毛穴がブワッと開くような力強い音。力強くうねるグルーヴ。次々と変化を見せるリズムパターン…。太鼓だけでここまで表現できるとは!
一行がフロアの中央に到着すると、ビートの抑揚が本格化。オーディエンスから声が上がり、そのたびに熱気が一段階ずつ上がっていく。
最前線でノリながら見ていたスタジオオーナー、気づけば指揮者の背後にジリジリと近寄っている。「ほとんどクルーの一員だ…」と思っていたら…!
抑えきれなくなった様子で真ん中のスペースに踊り出た!演奏サイドもそのスペースをとりながら叩き続け、気づけばがっつりセッション勃発。見ている側にとってもなんとも贅沢な時間だ!その後、他のFRESHスタッフや出演者まで乱入。ダンサーの血を騒がせる演奏に、みんな居ても立ってもいられなくなった様子だった。
まだオープニングアクトなのだが、既にお祭り騒ぎ。
イーリャダスタルタルーガスは、10月には周年イベントも開催予定なので、あの演奏をもっと聴きたいという方はぜひチェックしてほしい。
https://www.instagram.com/ilhadastartarugas/
「もってくれよ、オラの喉!」4日連続イベントを控えるMC TATSUYA。
そしてこちらもお馴染み、MC TATSUYAさんの声が響き、いよいよ発表の部がスタート。この人の空気作りと進行力がイベントの良し悪しの半分を決めると言っても過言ではない!
ちなみにTATSUYAさん、この日から、土・日・月・火と、4日連続でイベントだったそう。壮絶な4日間の幕開けがVillage Campとは…。イベントオープン前に話している時も「声、飛ばさんように気をつけるわ!」と気合いを滲ませた。
いつもありがとうございます…!
初めての人も、5年ぶりの人も、ラストの人も…。ドラマが詰まったクラス作品。
今回は全22クラスが参戦したが、先生、生徒さん問わず、実にいろんなドラマがあった。
・勇気を出して初めての参加を決めた人。
・FRESH創立以来ずっと参加されている人。
・イベント復活に合わせて数年ぶりに発表会に挑戦した人。
・地方から身一つで大阪に出てきてダンス修行をしている人。
・地方に引っ越すため、今回のVillage Campが最後になる人。
・FRESHの初期の発表会に出ていたけど、今はインストラクターとして作品を出す側になった人。
少し書き出しただけでも、本当にいろんな人生がある。では早速写真で振り返っていこう。
1部クラス
Amy / HIPHOP入門・初級CLASS
SHIZUKA / HIPHOP入門・初級CLASS
TAKUYA / POP入門・初級CLASS
GON / HIPHOP入門・初級CLASS
michi / REGGAE HIPHOP入門・初級CLASS
MA-NA/ GIRL’S HIPHOP入門・初級CLASS
Minami / HOUSE入門・初級CLASS
FunkyP / POP入門・初級CLASS
keijiro/ STYLE HIPHOP入門・初級CLASS
YU-SEI / HIPHOP入門・初級CLASS
oSaam / HIPHOP入門・初級CLASS
2部クラス
TaDachan / AFRO入門・初級CLASS
aoi takase / GIRL’S HIPHOP入門・初級CLASS
NANA / HIPHOP入門・初級CLASS
HONGOU / HIPHOP初級CLASS
keiko / HOUSE入門・初級CLASS
Amichoke / HIPHOP入門・初級CLASS
DRAGON / HIPHOP入門・初級CLASS
RYOKA / GIRL’S HIPHOP入門・初級CLASS
HIKARINGO / WAACK入門・初級CLASS
DY / HIPHOP初級CLASS
KAZUKIYO / HOUSE初級CLASS
レペゼン和歌山の絵描き、SOUL FLOWERのライブペイント。
会場3Fでは、今回のフライヤーのデザインを手がけたSOUL FLOWERさんによるライブペイントが。鮮やかな色使いと大胆な人物画に、通りすぎる人もみんな立ち止まって眺める。
ファンシーな花柄が代名詞のSOUL FLOWERさんだが、HIPHOPにまつわるモチーフやアーティストの描写が秀逸なことでも知られている。
今回のライブペイントのモチーフに選んだのは、黒人の映画監督Spike Lee。さらに言えば今回のフライヤーも、Spike Leeが脚本、監督、主演を務めた映画『DO THE RIGHT THING』(1989年)に登場するキャラクターや、80年後半~90年代前半に人気を博したHIPHOP番組『Yo! MTV Raps』のロゴをサンプリングするなど、通も唸る仕上がりになっていた。
半分楽しみながら半分ガチ。白熱のインストラクターバトル。
これもVillage Camp名物と言える企画が2チームに分かれてのインストラクターバトルだ。
ソロでかますもよし、ルーティンをするもよし、コミカルなインパクトを与えるもよし。なんなら先攻後攻もさほど決まっていない。ルール無用のガチフリースタイルバトル。
しかも日本を代表するダンサーたちが揃い踏みと来ている。もはや両チームが並んで相対するだけで『キングダム』ばりの壮観さだ。両軍も準備万端の様子で鼻息荒く入場。
TEAM HONGOU
TEAM DY
このバトルは、怒涛かつ一瞬の出来事だったし、細かい描写を書くのが難しいので、ハイライトを写真で振り返ろう。
エジプトの王と民たち(!?)
TAKUYA、渾身のソロ。膝の皿を割る勢いでフロアに入る!
組体操からのTwerkの大技。
敵も味方も思わずどよめくoSaamの超絶ソロ。
ドルフィンのなか躍り出るHIKARINGO。
KAZUKIYO&issrrrによる胸熱HOUSEルーティン
幻のHONGOU&keijiroペア
Tyla『Water』がかかればaoi主導でルーティン!
空を舞うGON。「顔〜!」の野次の嵐。
和気藹々とした空気感もありながら、真剣勝負でもあるため、全員目は本気。だからこそ、この日一番の盛り上がりとなったし、勝負の行方は最後までわからなかった。
オーディエンスによる声援ジャッジの結果、勝者は…僅差でTEAM HONGOU!!
高級フルーツと金一封が贈られた。
若手からベテランまで。至極のゲストショーケース
FRESHの発表会は、ゲストショーケースが豪華なことでも知られる。DANCE DELIGHTで文句なしの結果を残してきたsoil、D’LACSSY、そして咫和巵といった実力派の若手チームから、HONGOU×oSaam、SHIGE+CHEKEと、今の日本のダンススタイルを作り上げてきたベテランまでが集結。
keijiro+AROH
B△MDIVA
soil
D.D factory
D’LACSSY
咫和巵
HONGOU×oSaam
SHIGE+CHEKE
Partyを愛し、Partyに愛されたDJ、初降臨!
ダンスショーは終わったが、イベントはまだまだこれから。DJブースにはDJ PartyP(a.k.a FunkyP) オンザセット。ここ数年、関西を中心に出演頻度を上げているPさんだが、FRESHのイベントでは意外と初出演。
Partyを愛しPartyに愛された生粋の音好き。お客としてパーティに参加するときは、高確率でDJブース前でお酒を片手に爆踊りする姉さんだが、この日は厳選したレコードで心地よくフロアを揺らす。
出演者も緊張から解き放たれた様子で、バーカンで何度も乾杯したり、セッションに精を出したりと、思い思いに楽しんでいた。
DJ DYへのバースデーサプライズまで含めVillage Camp!
PartyPからバトンを受け取ったのはDJ DY。
SPACE HAZEによるレーザーが入ることを事前に知っていたようで、その空気感に合わせHOUSEセットを組んできたという。さすがの粋なはからいだし、凄まじくレアだ(自分は10年近く大阪にいるが、DYさんのHOUSE セットを聴いた記憶はほとんどない!)。
最高空間の完成。
終盤には、7月生まれであるDYさんへのバースデーケーキが登場。これもVillage Campではお決まりの光景だ。オーナーがマイクを握ってお祝い。
そして惜しまれながらも時間がやってきて、ついにイベントクローズ。
今回は出演者と来場者を合わせて、ちょうど[Club JOULE]のキャパ寸前の大盛況だったし、ここまで読んでくださった方は分かるとおり内容も本当に素晴らしいものだった。
今年のFRESHの発表会は、夏(7月)のVillage Camp、冬(12月)のNAMURA ATTACKという2枚看板でお届けすることになっているが、まずはこの夏の最高の時間の余韻をもう少し楽しみたい。
最後にパーティスナップをどっさりお届けして終わろう。
Text : Seiji Horiguchi
Photo : YuKI/madara film
追記8/7(水) : イベントのダイジェストムービーもYoutubeにてアップされたので合わせてどうぞ!!