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FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ ロングインタビューREIKO

2022.08.31

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FRESH DANCE STUDIOプレゼンツロングインタビュー
◆ゲスト : REIKO(OUTSET)
◆インタビュアー : HONGOU / Seiji Horiguchi


これまで数々のアーティストに話を聞いてきたFRESHインタビュー企画。今回はFRESHで"STREET JAZZ CLASS"を担当するREIKOが登場。2017年に一度インタビューを行い、ダンサーとしてのルーツや、多岐にわたる活動の内容についてうかがったが、今回はさらに掘り下げて、ダンスインストラクターという職業やナンバー作品への思い入れなどについて聞いてみた。10/16(日)に開催が決定しているFRESHの発表会「NAMURA ATTACK」に先駆けて、"ダンサー"、"インストラクター"、"振付師"という職業について改めて考えるきっかけになればと思う。深夜、アメ村のとある串カツ屋で乾杯してから始まったインタビューは2時間にわたった!
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1, ティーンから始まったインストラクター生活。ダンススタジオで学んだもの。

私もスタジオでレッスンさせてもらって「ありがとう」やし、スタジオからも「ありがとう」って思われたいですよね。


REIKOさんは初めてレッスンをやりだしたときのことを覚えていますか?

REIKO : めっちゃ覚えてる!19の時かな。当時、スポーツジムに入っていたスタジオを紹介してもらって、そこがほんまに初めてのレッスン。で、その3ヶ月後くらいに[プラス]という場所でやったんですけど、そこで生徒さんが何十人も来てくれて。「めっちゃ生徒多い奴がいるらしい」っていう噂が広まって京都の「クラウディア」から声がかかって。ダンススタジオというものを教えてもらったのはクラウディアです。超大御所の人もいっぱいいたなあ。ちなみに、その少し後に[STUDIO AX]に入っています。

その頃からですか!じゃあかなり長いですね!

REIKO : もう今年で18年目とか?今、教えさせてもらってるスタジオは10年以上やってるところが多いね。

レッスンをやり出した時は、「これを伝えたい!」というようなモチベーションはあったんですか?

REIKO : いや、とにかく必死やったかな!自分もまだ10代で、なめられたくなかったし、今思ったらめっちゃ厳しいレッスンでした(笑) 当時「怖い先生」っていう認識があったみたい!厳しいのが当たり前の時やったけどね。それでも通ってくれる生徒さんがいて。初めて発表会で作品を出したのもここでした。レッスンだけでもてんやわんやで、どう伝えたらいいか分からへん状態での発表会。照明プランを書くのも初めてでね。でもクラウディアはそれを教えてくれる制度があったんです。スタジオが照明さんを呼んで講習会を開いてくれて、照明のことが分からないイントラは参加できるという。

スタジオ側が若いインストラクターをサポートするわけですね。とてもいいシステムですね!
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REIKO : どっちかというと「参加しなさい」って感じやったけどね!で、オーナーさんが発表会のイントラショーの練習におにぎりとか持ってきてくれて、みんなでご飯を食べる時間があったり、発表会後もイントラとスタッフさんだけの打ち上げがあって。やっぱりそういう機会は初めて参加するイントラにとっては、年上の人と喋って仲良くなるきっかけでもあるじゃないですか?で、その時に先輩から「あの時のあれは良くないんちゃう?」って注意してもらえたり。オーナーさんから叱られることも教えてもらうこともいっぱいありましたね。今も感謝してます。今はそういう機会がシンプルに減ってるから、若い子たちはちょっとかわいそうやんね。

ジャンルや世代関係なく交流する機会というのはたしかに少なくなっているかもしれません。FRESHも、コロナ禍に入ってから発表会の打ち上げができていないですね…。

REIKO : でも少し前までは、スタジオの行事でも後輩から話しかけるのが当たり前やったし、イベントで一緒になったら年上の人に挨拶しに行くのが当たり前やったけど、今はほとんどないよね。「昔の考え方」って言われたらそれまでやけど、でもそれってビジネス的に考えたら、自分の会社の上司とか取引先と積極的に喋らないのと一緒だと思うんです。

HONGOU : あと最近はプライベートレッスンをする若い子も増えてきてる感じがするね。割と誰でも個人的にレッスンしやすくなったというか。

REIKO : 私はプライベートレッスンをやるとしたら「誰でもどうぞ」ではなく“招待制”にしますね。私のクラスに通ってくれてる生徒さんで、例えばジャズの基礎がすごく得意やけど振りをあんまりやってきてない子とか、逆に、振り覚えは良いけど基礎がもう一歩の子がいたりしたら、私がレッスンのない曜日に個人的にレッスンをして弱点を補ったりします。どちらかというと「一緒にうまくなろうよ!」というスタンスですね。

生徒さんの成長をサポートするスタンスですね。それぞれのスタジオのレッスンに通って頑張っている結果、プライベートレッスンを受けれるという。

REIKO : 逆に「誰でもどうぞ」スタイルにするなら、全部のスタジオを辞めてからしますね。もちろん賛成、反対は色々あると思うけど。私は割とスタジオの中まで携わったことがある人間なので、運営側の気持ちとか意図も見えるんですね。なので、そこにおいての自分の立ち回りは常に考えています。私もスタジオでレッスンさせてもらって「ありがとう」やし、スタジオからも「ありがとう」って思われたいですよね。

そうやってダンススタジオのことを考えてくださっているのは本当に嬉しいです!

ナンバー作品についての思い入れ

クオリティの高い作品を作り込むことが純粋に楽しいし、心が潤うんです
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去年、スタジオの発表会についてREIKOさんとお話する機会があったんですが、そこから自分の中で「スタジオの発表会とナンバーイベントの違い」について考えることが増えました。ここ数年は関西もナンバーイベントが増えつつありますが、本当にいろんな形があると思います。自分はナンバーを出したことがなくて、その大変さを肌で感じたことがないので、REIKOさんに色々とお話を聞いてみたいです。

REIKO : 私もナンバーイベントにはたくさん出してるけど、だからこそ出し方にはこだわっています。そうしないと自分が今まで培った経験が全部崩れるからね。会社で言ったら今までの取引先をないがしろにして、新しい相手に乗っかるみたいな感じにもなり得るじゃないですか?でもそれに近いことをフリーランスのダンサーはできちゃうから。

そうですね。それからコレオグラファーへの連絡の方法がひどいという話をよく聞きます。特にナンバーイベントで一番よくあるのが、DMでの「作品出しませんか?」という連絡だそうですね。そのダンサーが誰なのかも分からず(=分かろうとせず)、ただ機械的にDMを送っているとしたらまずいですよね...。

REIKO : 私もめっちゃ来るよ!コピペで概要を送ってくるDM。

やば!REIKOさんにもそれをやっちゃうのが本当にすごい!そういうDMはどう対応するんですか?

REIKO : 「一度お電話でご挨拶したいです」って書いてくれる人は、1回話を聞きます。知らない人とか知らない世界と繋がるきっかけかもしれないしね。でも逆に「作品を出していただきたいので、この日までにお返事をください」とか、そういうのは全部既読スルーしてます(笑) FRESHの先生も送ってこられた人多いと思うよ。

知らなかったです...。

REIKO : 連絡先が分からなくてDMしてくるまでは、お仕事の依頼としてまだ良いと思うんです。でも、だからこそ「まずはお互いに知り合おうよ!」って思う(笑)

それからコレオグラファーがナンバーの出演者をインスタのストーリーで募集することも増えましたよね。

REIKO : 出演者を一般募集するスタイルね。私はそれを年に1回と決めています。私は1つの作品に対しての熱量が、自分がしんどくなるくらいあるから、出演する側にもそれに応えてもらう必要があって。やっぱりずっと通ってくれてる生徒たちは、一緒に培ってきたものがあって意思疎通もしやすいので「こうしたいんやけど、どう?」みたいなクリエイティブな作り方ができるんですよね。だから良いものを作りたかったらそういうツウツウな子たちと作りたいし、そういう生徒を育てたいです。で、そういう私の作品の世界観を良いと思ってくれて「自分も挑戦してみたい」と思ってくれてる人たちと、年に1回だけ一般募集のナンバーで集まるって感じです。もちろん初めましての子ばっかりのナンバーは―良い悪いとかじゃなくて―レベルもモチベーションも様々な子が集まってくれるので、私も勉強になります。普段のレッスンは円滑に進みすぎるからね。だから一般募集のナンバーの時はアシスタントを2人以上つけます。アシスタントの子にとっても「教え方を学ぶ」という意味で良い経験になると思うので。

話を聞いていると、REIKOさんは常に生徒さんのことを第一に考えられているのが分かります。どこをゴールとしているかが違いますよね。東京のダンスカルチャーメディア「lowortapes」にて、HONGOUさんが参加した対談が上がっているんですが、その中でSYMBOL-ISMのTAKUYAさんが「俺らもカラオケとかボーリング行ったときに、特に本質とかって考えないよね。ナンバーについても、本質を考える層もいていいし、一方で『楽しみたい』というモチベーションの層もいて然るべき」というお話をされていたのを思い出しました。

lowor tapes 「ダンスビジネスについて」

REIKO : もちろん「楽しみたい」という気持ちも全然分かるけど、私はそうではないって感じかな!やし、私がそのスタンスでやれば、出てくれる子も「私らはREIKOさんに直接呼んでもらって作品に携わっている」ってプライド持ってくれるんで。お金儲けのためではなく、私は生徒たちとクオリティの高い作品を作り込むことが純粋に楽しいし、心が潤うんです。そう考えたら、私にとってナンバーイベントは大事な場所ですね。
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HONGOU : 綺麗な先生像やと思う。でもやっぱりダンスの受け皿がでかい分、良くも悪くもどんどん一般層にも広まっていくんやろなーって思う。

個人的には、HONGOUさんとかREIKOさんのように、作品のクオリティを追求したり、ダンス表現の本質を考えたり、シーンの活性化を考えている世代が伝えていることが重要さを増してくると思います。

REIKO : ナンバーイベントはたくさんあって、お仕事としてコレオグラファーに声がかかって、コレオグラファーはその話に乗っかる形で作品を出す、となったら、最終は受け手(=コレオグラファー)側の問題ですよね。どういう意図で作品を出すつもりがあるか。出るつもりがあるか。だから逆に若い子たちにも聞いてみたい。

HONGOU : そうそう。聞いてみたいな。「どういうつもり?」って聞きたい!

REIKO : いや、その聞き方は詰めてます(笑)

一同 : (笑)

REIKO : でもどういう気持ちで出してるかとか聞いてみたいですよね。ナンバーイベントが沢山あって、コレオグラファーもどんどん増えるなかで「なんでもいいからとりあえず形にする」だと、あとに残るものって少ないと思いますね。逆に表現がつたなくても、新しいことにチャレンジしてるのが伝わってくる作品は良いなって思います!

HONGOU : 本番の1回にかける思いっていうのが伝われば良いよね。好きなものにかける思いというか。

REIKO : 本当にそうなんですよ。この「本番の1回にかける」って、バトルでもコンテストでもナンバーでも一緒ですよね。その覚悟が見えなかったら、バトルとかコンテストやったら勝てないやろし、ナンバーイベントやったら「もっと頑張ってほしい...!」ってなる。

コンテストの話でいうと、REIKOさんは昨年「THE UNITY」(1チーム8人以上のコンテスト)にも挑戦して優勝されました。一緒に出たメンバーはナンバー作品からさらに絞った精鋭メンバーという感じですか?

THE UNITY2021 WINNER - R


REIKO : いや、いつもナンバーに出てくれてる子らですよ。あれは、いつもナンバーでやってることをユニティでやったって感じ。だから私的には一緒なんです。そもそもあの作品は、あの曲で映像を撮るために作ったんですよ。で、そのあとタイミングが良くてユニティに出ることになって。いつもは私がジャッジで入ってたり、逆に私の生徒が自分の作品で出ることが多いから出れなかったんですけど、たまたま生徒は誰も出さないってなったから「じゃあ出よう!」ってなって。そのためにブラッシュアップしたっていう流れです。
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『ひとつ』
まずコンセプトとか「この曲でこのメンバーで作りたい!」という気持ちが根幹にあるわけですね。あの作品は何度見ても見応えがあるし、ラッパーkohhの音源を使ってJAZZの作品を作るというあたりにも、ジャンルを超えて活動されているREIKOさんらしさが出ていました。

ついにダンスのレッスンが義務教育の現場まで。REIKOの無二のバランス感覚。

やりたいことは色々まんべんなくあるけど、メンタルはストリートダンスのシーンにあります

REIKO : 実は私、高校のダンス部にも関わってて。 全国大会が今、規模がすごく大きくなっていて。運動部と一緒で、私立の強豪校は入学する生徒が増えるんですよ。

HONGOU : 甲子園みたいな感じやね。中学校でめっちゃダンス上手い子が推薦で入れたりもするん?

REIKO : 入れます。スポーツ推薦と一緒で「ダンス推薦」というのがだいぶ前からあって。私立の学校は「生徒に多く入って欲しいから部活に力を入れる」というのが元々あるんですよ。今、高校ダンス部が盛り上がっているので、「ダンス部を強化したい外部から講師を呼んで強くする力のある生徒が入ってくる」みたいな流れがあります。だからストリートシーンには情報は届かないかもしれないけど、すごく盛り上がってるんです。
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たしかに、そんな世界があることも初めて聞きました。そんな場所にREIKOさんも関わっているわけですね。

REIKO : 一回なんでも携わってみたい人なので(笑) 高校のダンス部に関しては「真剣になることを覚える場所」としてめっちゃ大事だと思います。何か一個のことにめちゃくちゃ頑張ることって、将来的にダンス以外のことでも活きてくるし。

HONGOU : 俺らも高校からダンス始めたわけやけど、その時に何が大事かを教えてくれる人ってめっちゃ大事やんな!REIKOにはハートの部分を教えてあげてほしいなー。

REIKO : ここ数年は中学校のダンスの授業にも外部講師として行かせてもらっています。義務教育から携われるのはすごいことですよね。

GIDDAPのTATSUYAさんやCHIKA-Jさんも講師として参加されていますよね!

REIKO : そうそう。[STUDIO AX]からお話をいただいてね。体育の授業で、一つの学期分を担うんやけど、授業が全部で10回くらいあって、前半5回目くらいまではベースのステップとか振り付けを教えて、後半の5回くらいは、それまで教わった動きを使いながら生徒たちだけで振りを作ってもらう。で、最後の時間には発表会もやります。お互いに審査員をしてもらったり、MVPを決めたりもします。しかもMC TATSUYAでね!(笑)

授業のなかとはいえ、TATSUYAさんのMCで発表ができるのは贅沢!(笑)

REIKO : 最後に私たちから生徒たちに向けて挨拶させてもらうときに「君たちが将来どんな仕事についても良いけど、こうやって中学校からプロのアーティストに触れる機会があるのはすごいことです」って伝えています。学校も何校か行かせてもらったんですが、学校ごとに生徒たちの発想とか表現力も違ったりするから面白いですね。私自身も中学校に教えに行くことで、ダンサーとして教えることにもっと興味を持ちました。

スタジオのレッスンやナンバーイベントへの準備、そしてダンスイベントでのショーもやりつつ学校の授業にも携わる…。改めてREIKOさんのバランス感覚の凄さが分かりますね。

REIKO : たしかにジャザーのなかで一番他ジャンルの友達多いしね(笑) なんでもそうやけど、まずやってみるのが大事じゃないですか? やってみたいし、できるようになりたいなと思って。ただ、私の考えの軸足はストリート側にあるんです。やりたいことは色々まんべんなくあるけど、メンタルはストリートダンスのシーンにあるというか。だからそれを保ちつつ、活躍する場所を広げていきたいなっていうのが、昔から考えていることです。だから東京のお仕事はしたいけど、東京に拠点を置かないのはそれが大きいです。ありがたいことに「東京来て欲しい」って今でも言ってもらったりするんですけど、私にとって楽しんで生活を送りつつ、かつ心が震える瞬間があったり本気になれたりする場所って関西なんです。もちろん東京やほかの地域にも魅力的なダンサーはたくさんいますけどね。

HONGOU : やっぱ一線でやってないと気づけない部分っていっぱいあると思う。ずっと一線でやってきたからこそやから頑張って欲しいな。俺にはできひん部分やからさ。

REIKO : それを先輩にもやってもらってきたからこそかもしれないですね。10代とか20代の時って「自分が一番」とか「モテたい!」みたいなメンタルでやってたけど、そういうのも経て色々気づけたというか。客観的に見たら「あの時の自分、めちゃくちゃやってたな!?」みたいな(笑)

HONGOU : でもがむしゃらな時期があるからこそ、ハートの強さとかあるわけやん?

REIKO : そうですね。あの時があるから今があると思うし、そう言いたいですね。
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【筆者あとがき】
REIKOさんの「生徒たちと一緒に作品のクオリティを追求する」「心の豊かさのために活動する」という姿勢に、ダンスへの純粋な欲求や衝動を感じた。ダンスが大衆化したことにより、「ダンスインストラクター/振付師」という職業が数年前よりも身近なものになってきた。しかし、"ダンスでご飯を食べる"という特殊な仕事に就くなかで、(他の職業同様)やりたいことだけではなくお金のために動かないといけないこともあるだろう。しかし、「自分にとっての豊かさとはなんなのか」「なんのためにダンスをしているのか」という問いに立ち返る機会は、多くの人にとって必要だし、今回のインタビューは、その問いに真っ向から向き合う勇気が湧いてくるような内容だったと思う。インタビューに快く協力してくださったREIKOさんと、長い長い記事に最後までお付き合いいただいた読者の方に感謝申し上げる。


【レッスン情報】
REIKO(OUTSET) STREET JAZZ CLASS入門/初級CLASS
毎週土曜 20:00-21:30



文/構成 : Seiji Horiguchi
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