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FRESH DANCE STUDIO PRESENTS Keitricインタビュー

2024.05.30

もうすぐ梅雨。雨の日に聴く音楽はいつにも増して体に染み入る感じがする。R&BもLo-Fiもアンビエントも良いが、今年はJAZZも掘り下げてみたい。とはいえ自分はJAZZについては全くの素人。50歳からサックスを習い始めた母親を除いて、親族にJAZZプレイヤーもいない。もちろんSpotifyで調べればプレイリストはごまんと出てくる。しかし膨大な音楽の、どこから手をつければ良いのかも意外と難しい。ここはJAZZに明るい人に紹介してらって入門するのが良いんじゃないだろうか。

...と、ここまで考えたところで真っ先に顔が浮かんだのがレペゼン京都のダンサー、Keitric君だった。

彼が所属するダンスチームSons of Miles(サンズオブマイルス)は、関西では希少な「JAZZY B-BOY」(=JAZZで踊るBREAK DANCE)というジャンルを掲げ、昨年はJAPAN DANCE DELIGHT(以下JDD)のファイナルにて見事特別賞に輝いた。それだけでなく、今年5月に開催されたJDD名古屋予選も通過。チームとしては3年連続のJDD出場を決めるという偉業を達成するなど実力は折り紙つき。
ソロダンサーとしてもピアニストとの即興セッションを行うほか、DJも務めるなど、JAZZミュージックとの親和性の高さを感じるKeitric君。そこで今回は、JAZZとの出会いなどについてインタビューし、さらにKeitric君セレクトの雨の日に聴きたいJAZZのプレイリストも作成していただいた。ぜひ梅雨のお供にして欲しい。
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よろしくお願いします。まずはKeitric君がJAZZを聴き始めたきっかけから教えてもらえますか?

もともと父親がバンドをやっていて、家でもブルースやロックのレコードがよくかかっていました。でも子どもの頃は音楽の聴き方も分からなくて、家で流れる音楽もどちらかというと受動的に聞いてました。高校からダンスをやり始めるんですが、高3の時に、埼玉のB-BOYチームFreedom LiberatorのJAZZを使ったショーを見て衝撃を受けました。それからFreedom LiberatorのFoolさんが下北沢の[Jazzy Sport]でレッスンをされているのも知るんですが、その「Jazzy Sport」っていう場所の名前自体に惹かれて、お店に対しても興味が出てきたんです。ジャジスポから出ているアパレルや音楽作品をチェックするなかで、MITSU THE BEATSさんの『New Awakening』というアルバムに出逢います。これがめっちゃジャジーでビートもかっこよくて。
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「自分もJAZZで踊ってみたい」と思っていたところに、大阪のビバップのチーム、MAD ON J MASTERSのKAZEくんが「ナンバー作品出します」と出演者を募集してるのをたまたま見かけて、連絡して参加させてもらうことになりました。そこでちゃんと「JAZZで踊ること」を体験しました。

初めてビバップを習った時はどうでしたか?

めっちゃ難しかったです!(笑)テンポも速いですしね。その頃、技系とかアクロバティックな動きは得意だったんですけど、立ち踊りは全然できなかったんで苦労しました。ただ、JAZZとの距離はグッと近づきました。そこから京都のレコ屋にも通うようになって音楽的にも広がっていった感覚があります。レコ屋だと一つひとつに説明書きも載っているし、ネットじゃ出会えない曲と出会えますからね。
ちなみに最初に買ったレコードはJohn Coltrane『GIANT STEPS』とStevie Wonder『Original Musiquarium』です。
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最近ではDJとしての活動も顕著ですが、どういった経緯で?

二十歳くらいの頃に、京都の[Hachi]というレコードショップ兼クラフトビールのバーの店長と仲良くなって、些細なきっかけでバイトとして働くようになるんですが、そこで初めてDJをさせてもらうようになります。それまでだったらダンスありきで掘っていた感覚が「誰かに聴いてもらう」という感覚にもなって、音楽の掘り方も変わりましたね。[Hachi]を通してDJの方との繋がりも増えていくんですが、京都で「DoitJAZZ!」というイベントをされているJAZZ DJ/プロデューサーのMasakiさんという方と知り合って、イベントやラジオ番組にも呼んでいただいたのも大きい経験でした。
あと、それと同時期くらいにピアノも始めました。Robert Glasper『I STAND ALONE』とか坂本龍一『戦場のメリークリスマス』を弾けるようになりたいと思ったのがきっかけです。大学に置いてあるアップライトのピアノを弾いていました。弦の響きが指に伝わってくる感覚が好きです。



2018年にオープンした京都のJazzy Sportとの距離感も近い感じがします。Tシャルのモデルもされていたり。

ずっと下北のジャジスポをチェックしていたので、祇園にジャジスポがオープンすると知った時はびっくりしましたね(笑) オープンの日に行って、店長のDaichi Yamamotoさんと話したりしていたんですが、当時ラッパーというのを知らなくて(笑) Daichiさんが[Metro Kyoto]でパーティを主催するときにダンスショーで呼んでもらって。そこでDaichiさんのラップを初めて聴いてめっちゃ食らいました。DaichiさんとAaron Choulaiさんとのアルバムが出たばかりの頃だったんですが、それこそピアノとかビートがかっこいいです。



学生の頃から街の音楽シーンとの関わりが濃かったわけですね。

そうですね。[Hachi]にしてもジャジスポにしてもレコ屋にしても、京都ならではの人や場所との繋がりに恵まれています。

チームの話もお聞きしたいと思います。Freedom Liberatorからの影響も大きいという話でしたが、関西では希少な「Jazzy B-BOY」というスタイルをチーム単位で確立してきた流れを教えてもらえますか?
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Sonsは2019年くらい、学生の頃に活動し始めたんですが、もともとLoftyと僕の2人でした。大学生のコンテスト「BUZZ STYLE」に挑戦した時に使った音源が、さっきの『New Awakening』の1曲目『Intro』と、GAGLEの曲でした。Tシャツもジャジスポで、まさに“ジャジスポトリビュート”な作品でしたね。でも、その時のジャンル表記はまだ「BREAK」でした。



2021年の頭に、ビバップを主体に踊っていたCraypasさんが加入したことによって「BREAK」よりも「JAZZY B-BOY」の方がしっくりくるよね、という話になって。実は、そこまで「JAZZY B-BOY」と名乗らなかったのは、Freedom Liberatorへの恐れ多さがあったんですね。でも「あの人たちが提唱したジャンルに対するリスペクトを示したい」と思うようになったし、何より自分たちもしっくりくるので、3人になってからは「JAZZY B-BOY」というジャンルを使い出しました。

Sons of Milesが初めてJDDのファイナリストになったのが2022年なので、3人になってから結果が出るまでがかなり早かったわけですね。

そうですね。2022年の本戦は自分が出場できず2人に任せる結果になってしまいましたが。

翌年の2023年に再度3人でファイナルに挑み、見事特別賞に輝いたと。



だから僕にとっては初めてのファイナルの舞台だったんですよ(笑) いろんな準備をして臨みました。実は自分、昔アドヒップのスタッフをやっていて、JDDの会場でもスタッフをしたことがあったんです。

そうなんですか!知らなかった。

全然チームもやってない頃でしたけどね。当日、カメリハのためにステージに立つ機会があったんですが、そこでステージの雰囲気をなんとなく掴んでいたので、去年、ジャパンの舞台に立った時もそのイメージで踊れました。あとは、一度本戦の舞台を経験しているLoftyとCraypasさんが「けっこう床が噛むよ」と教えてくれたので、なるべくそれに似た質感の床のスタジオを探してリハしたり。あと、大きい会場は音が反響するので、練習ではあえてリバーブをかけた音源を使ったり。それから個人的に、リハーサルと本番の違いって目の前に空間があるかどうかじゃないかなと思ってて。大きな会場だとステージの前が開けていて、どうしても足元がフワついてしまう。なので鏡ありで練習する時も、できるだけその奥を見るように意識しました。
本番はあまり緊張もせず、いい緊張感とリラックスのバランスで踊れたと思います。

特別賞を受賞したショーの裏にそんな周到な準備があったとは!ちなみにチームで使う音源もKeitric君が選曲することが多いですか?

そうですね。ショーの構成も自分が考えています。作品づくりは、その音源を一番聞いてる人間がやった方がいいんじゃないかなと思います。イメージも一番具体的に湧いてきますし。

なるほど。特にJAZZの音源はメロディの展開や曲全体の構成も複雑なものが多いので、一番知ってる人が作りやすそうですね。「ここでソロがくる!」とか。

そうですね。例えばHOUSEはシンプルなループの音源のなかでいろんなリズム遊びをしながらショーの展開を作っていく。JAZZの音源だとそういうアプローチとはまた違いますが、そういうミニマルなループでのBREAKのショーもいつかやってみたいですね。



Playlist "Nu Jazz Rainy Day" Curated by Keitric

さて、今回は「雨の日に聴きたいJAZZ」ということでキュレーションを依頼させていただきました。そのうえでどんなセレクトをしていただいたんでしょう?

そうですね、今回は割と最近リリースのNu Jazz(*1)縛りでセレクトしました。もちろん「Nu Jazz」といっても、いろんなスタイルに分岐します。クラシカルな、生の楽器だけのバンドもあれば、アブストラクトな質感のものや、ビートが入っているダンスミュージック寄りのものもあったりします。
このテーマをもらった時に、どうしようかなと思ったんですが、「雨」って、雲のような灰色の感じだったり、そのなかに青みがかった印象もある曲、それから雨のみずみずしさを感じるものとか、「雨」にも種類がありますよね。ポタポタ降る時もあれば、五月雨のようなサーという細かい雨もある。いろんなイメージの曲を選びました。

※1...ジャズをもとにしてファンク、ヒップホップ、ポストロック、エレクトロニカ、フリー・インプロヴィゼーションのような他の音楽スタイルがブレンドされた音楽(wikipediaより)

個人的に「こういうシチュエーションで聴きたい」みたいなイメージはあったりしますか?

雨のなかイヤホンをつけて電車で移動している時とかですね。頭から最後まで、ミックスのように展開も考えたので、ぜひ1曲目から通して聴いてもらえればと思います。もちろんシャッフルしても楽しいですけどね。

プレイリスト視聴はこちらから







1. ジョエル・ロス - More?
この人はビブラフォン奏者なんですけど、JAZZのなかでも「スピリチュアルジャズ」って呼ばれるものなんですね。宇宙のような感じだったり。この人の和音のコードは個人的に、灰色を感じるんですね。哀愁じゃないけど、灰色の雲が垂れ込めているような。

2. THE TAKE VIBE E.P. - Golden Brown
Dave Brubeckっていうピアニストの『Take Five』っていう有名な曲を再構築した曲ですね。 雨の日の哀愁が漂っていて、ハイハットの感じも雨音っぽくて好きです。

3. ロバート・グラスパー - Portrait of an Angel
今のロバート・グラスパーの曲ってNeo Soulな感じなんですけど、これは初期のアルバムに収録されている曲ですね。ピアノとベースとドラムのシンプルでクラシカルなJazzの構成なんです。雨の哀愁の感じが漂っています。

4. Kamaal Williams - Pigalle
これは疾走感のある雨の感じですね。グルーヴを感じます。

5. Kamaal Williams - Magnolia
これも先ほどと同じくKamaal Williamsなんですが、ソロのピアノですね。THE・灰色な感じです。どこか坂本龍一さんのピアノに似た響きも感じます。
雨が滲むようなイメージです。

6. Duval Timothy - Ball
こちらは雨粒がポタ...ポタ...と、垂れてくるような音のイメージです。同じフレーズをループしているんですけど、展開がどんどん変わっていくところもおもしろい。ピアノの響き方も次々と変わっていきます。

7. Caleb Arredondo - Echo Sax No.4
これはシンプルにサックスのループです。この曲あたりから少しずつ響きがアンビエントっぽくなってきます。

8. Otis Sandsjö - Skerry, Pt. 1 (feat. Petter Eldh, Kathrin Pechlof & Dan Nicholls)
これはめっちゃみずみずしいイメージの曲です。音の広がりがすごくて、左右のパンへの振りもあるので、ぜひヘッドホンで聴いてほしいです。

9. Sam Gendel, サム・ウィルクス & Daniel Aged - COLD POCKET
ずっとビートとベースは鳴っていて、グルーヴィなんですけど、どこかずっと曇った何があって、その奥でずっと鳴ってる感じというか表に出てこない感じがします。そういうつかみどころのないような雰囲気が気に入っています。

10. The Comet Is Coming - Unity
宇宙な雰囲気もありつつ、奥底で鳴っている不思議な曲です。雨がサーって降っているなかで聴いたら気持ちよさそうです。

11. Jas Kayser - Jamie‘s Blues
これも、なんとなくですが雨のなか聴きたいですね。ダンスミュージックよりというか、ドラムもしっかり入っています。ちなみにJas Kayserは去年のJDDの音源でも使っています。

12. Aron Ottignon - Waterfalls
曲名の通り、水が流れ落ちるような感じです。ピアノのループもめっちゃかっこよくて、ビートもしっかり跳ねててHIPHOPなヴァイブスもあります。

13. Emma-Jean Thackray - Rain Dance / Wisdom
最初はゆっくりな感じで始まって、雨のじっとりした感じがします。この曲は展開がめっちゃ面白くて、前半のローな感じから、徐々に疾走感が出だして、いろんな音の要素が足されていきます。

14. Oscar Jerome & ベン ハウケ - No Need (Edit)
Oscar Jeromeはギターボーカルのアーティストです。消え入るような歌声とNeo Soulっぽい質感のトラックがおしゃれで雨の時に聴きたいですね。クラブでもかけれるようなダンスミュージックですね。

15. Yussef Dayes - Rust (feat. Tom Misch)
Yussef Dayesは今のNU JAZZで一番ホットなアーティストで、この曲が入った『Black Classical Music』というアルバムは、「現行JAZZの到達点と言われているほどの作品なんです。フィーチャリングで入っているTom Mischのギターもめっちゃかっこいいですね。全体を通してローなテンションなんですがブロークンビーツな感じもあったりで展開もかっこいいです。

インタビュー/構成 : Seiji Horiguchi

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