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ロングインタビュー : HANERU WORKS (HEX BEX,sucreamgoodman) "DANCER×BEATMAKER"制作の裏側

2023.01.05

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◆ゲスト : HONGOU、KUCHA、CHEKE、oSaam、DY、BUUBEE
◆インタビュアー : Seiji Horiguchi



関西のHIPHOPシーンを代表するダンスチームとして知られるHEX BEXとsucreamgoodman。HEX BEXは2005年、sucreamgoodmanは2006年にそれぞれOSAKA DANCE DELIGHTで優勝に輝き「アングラなスタイルでもコンテストに勝てる」ことを示した。彼ら1人ひとりのダンススタイルや音楽性が、20代30代のダンサーに影響を(それも強い影響を)与えていることは、いうまでもない。
そんな彼らは、昨年2月に開催されたOSAKA DANCE DELIGHT vol.37に(実に15年ぶりに)6人でエントリーして、見事優勝の座を勝ち取った。それだけではなく、その優勝から少し経ってから、彼らは「HANERU WORKS」という団体の旗揚げを表明。6人それぞれが主体となって作品をリリースしていくことを発表し、それまでとは違った角度の表現を試み始めたのだった。
なぜ彼らのダンススタイルや活動はここまで注目され、支持されるのだろう?なぜこの6人がステージに横並びになっただけで歓声が上がるのだろう?今回のインタビューでは、「HANERU WORKS」結成からこれまでの活動の裏話を聞くことによって、彼らの"かっこよさ"の理由について考えてみたいと思う。貴重なフルメンバーへのロングインタビュー。


HANERU WORKSの音楽や映像をチェックしていない方は、まずこちらから。
HANERU WORKS TuneCoreページ
HANERU WORKS Youtubeチャンネル


ODD優勝からのHANERU WORKS立ち上げへ。

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今回は特別インタビューということでHANERU WORKSのメンバー6名に集まっていただきました!OSAKA DANCE DELIGHT vol.37での優勝、そしてHANERU WORKS立ち上げからもうすぐ1年という節目でもありますし、企画第一弾の「DANCER×BEATMAKER」もちょうど6人分の音源と映像の全てが出揃ったタイミングでもあるので、一ダンサーとしても話を聞きたいと思います。まずは、HANERU WORKS立ち上げの経緯や、立ち上げ当初に話していたことなど教えていただけますか?

HONGOU : 「なんかやろうや」ってところからやんな。

CHEKE : 「YouTubeでなんかやろう」みたいな。「オリジナルのトラック作ってもらう」みたいなんが先やっけ?

HONGOU : 「音源作りたい」が先やったかな。

それはOSAKA DANCE DELIGHTに出る前からその話は上がっていたんですか?

oSaam : ディライト練の時に「映像を撮ろう」って話になって。

DY : 練習風景を写したり、ディライトに出ることになった経緯を話したりとか。

僕らヘッズからしたら、「HEX suがODDにエントリーする」がまず大ニュースで、「優勝」がさらに大きなニュースで、そのあとにHANERU WORKS立ち上げが発表されて、最初の映像『THE STAGE』がアップされたので、「そこまで考えて動いていた…?」と思うくらい綺麗な流れでした。

“THE STAGE” HEX BEX×sucreamgoodman


HONGOU : ディライトにエントリーした当初は、団体を立ち上げるみたいなところまでは考えてなくて「ただただシーンを盛り上げたい」って気持ちやったんやけど、みんなと練習で集まって話すなかで自然とそういう構想も生まれて「こういうのがやれたらな」って話をし出した。やからたまたま流れが良かっただけやね。しかも優勝せんかったらそれも意味ないからな(笑)

CHEKE : 「2位やったらどうする?」って話してた(笑)

HONGOU : 練習期間の映像撮ってくれたキダくんは「負ける美学もあるよ」って言ってたな(笑) でも、もともといろんなビートメイカーとのコンピレーションアルバムみたいなのを自分らが主体になってリリースできたらおもろそうっていうのは前から考えてたんやけど、売上の分配とかも含めて分からんことだらけで。そんな時にKOHと話してたら「TuneCoreっていうのがありますよ」って教えてくれて。

oSaam : その仕組みを知って、そこから話も具体的に進んだね。

TuneCoreやYouTubeを使って音源や映像を配信するだけでも、6人にとっては初めてのことでしょうし、慣れない事務的な作業も多そうですが、役割分担などはあるんですか?

HONGOU : YOHEI(BUUBEE)はTuneCoreを動かしてくれた!

大事な役割ですね!なぜYOHEIさんが担当することになったんですか?

YOHEI : 自分は愛媛に住んでて距離もあるし、毎週のミーティングも直接参加できるわけじゃないから、その代わりに俺から発信してみんなに伝えることが一つでもあったらっていうので担当することになりました。具体的には、いろんな配信ストア(iTunes、AMAZON MUSIC、LINE MUSICなど)への登録をしたり。値段、配信日、クレジット、ジャケット、概要とか音源に関する情報を全部登録して、審査に出す。最初は手こずったけど、何回かやってるうちにコピペでできるようになったかな。

CHEKE : 第一弾のKUCHAくんの時、大変やったよな!

KUCHA : たしかに、いろいろよく分かってなかったし(笑)

oSaam : ODDが終わって6人でキャンプに行った時に「(この団体の)名前を決めないとね」って話になったんやけど、その時にはビートメイカーとのコラボはするって話は出てた。で、月1でリリースしていこうっていうのも決めた。

HONGOU : そこからはバタバタやったね。oSaamがめっちゃ調べてくれて、俺もKOHに話聞いたりして。

CHEKE : 説明の文とかもどっちって書いてるか分からん!みたいな(笑)

DY : なんやったらいまだに分からんこともあるしね。やってみやんと分からんことばっかりです。

HONGOU : ほんまそうやんな。とりあえずやってみて、失敗して「ああ~…」とかな(笑) やることも多すぎるからみんなで役割分担してます。
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「DANCER×BEATMAKER」6作品の制作秘話。


HANERU WORKSとしての企画第一弾としてあがった「DANCER×BEATMAKER」ですが、ダンサーとビートメイカーの組み合わせを見るだけでも個人的に高まるものがあるんですが、まずダンサーとビートメイカーの組み合わせはどう決めていったんですか?

DY : 俺ら各々が、やりたいビートメイカーを言っていくスタイルやね。

HONGOU : そうそう。で、自分が「この人とやりたい」って決めたビートメイカーは自分で説明して口説いてくるっていう。

CHEKE : けっこう早く決まっていったよね。

自分でアタックするんですね!面白いです。ビートメイカーに企画の趣旨を説明した時のビートメイカー側の反応はどんなものでしたか?

DY : それぞれビートメイカーとの繋がりがゼロなわけじゃなくて、これまでの活動でつちかってきた関係性があったから声もかけやすかった。例えば自分が一緒にやったISSUGI(16FLIP)も、快く「やろう」っていう反応やったね。たぶんみんなそうやったと思う。売上の分配とかの条件とかよりも「面白そうやからやる」っていう姿勢でいてくれました。


◉KUCHA×DJ SOOMA『KILLING FIGHT』




ここからは、お一人おひとりに詳しく音源や映像の制作についてお話をうかがいたいと思います。まず記念すべき第1弾はKUCHAさん。SOOMAさんにはどう企画を説明されたんですか?

KUCHA : そうやねー。「『TuneCore』っていうのがあって、みんなで売上を分配できるんやけど、どう?」っていう…

HONGOU : なんか言い方やらしくない!?(笑)

KUCHA : (笑)「YouTubeで映像も公開したくて」って説明したら「良いっすね」って言ってくれた。SOOMAくんも新しい配信のサービスとかちょくちょく調べたりして、TuneCoreの存在も知ってたみたいやねんけど、1人でやるのは面倒やから今まで手を出してなかったみたい。それを「一緒にやれるなら」っていうのでOKしてくれた。

oSaam : ミュージシャンの方が最近のトレンドに対して敏感な人が多いし、既にやってる人もいたから説明しやすかったよね。

なんといってもビート選びが重要だったと思いますが、どのように選んでいったんですか?

KUCHA : SOOMAくんに30曲くらい用意してもらって自分が聞かせてもらうんやけど、割とすぐ「これええやん!」っていうのが決まったし、SOOMAくんも「これかなと思ってました」って言ってた!そこからショーケースで踊るのも想定してビートをいじってもらった。

oSaam : そうそう。「ショーケースのソロで使う」っていうのが前提やったよね。

HONGOU : 確かに。「これで踊る」っていう頭で選んだよな。

なるほど。そうなるとダンサー側からの注文も自然と出てきそうですね。また、映像の撮影/編集はダイコク映像のキダさんでした。映像に対してもKUCHAさんからの注文だったりディレクション(編集の指示)はあったんですか?

KUCHA : 撮る場所とか、映像のなかでやりたいことはこっちから指定しました。撮った場所は千林の駅の近くの高架下です。

HONGOU : めっちゃローカル!いいね!

KUCHA : そうそう、近所でね(笑) ある程度のプランを組んでこっちから提案したうえで、キダくん目線で「これはちょっとやめといた方がいいんちゃうかな?」みたいな、なしの部分は指摘してもらって決めていきました。

キダさんからの目というのは興味深いですね。「これはなし」というのは、どういう部分だったんですか?

KUCHA : なんかこう…演技したりとか。演技って言っても歩いてるシーンとかやけどね。俺はずっと踊ってるシーンやと、見る方が飽きると思ったんやけど、キダくんからは「いや、KUCHAくんはそういうのせずに最後まで踊りきった方がいいんちゃうかな?」って言われて(笑)

oSaam : 演技させてもらえへんかったんや(笑)

KUCHA : 冒頭のスケボーで滑ってくるシーンとかは逆にキダくんの案やね。

スケボーから降りて腕組みをするところまでですね。そこからはひたすらKUCHAさんが全力投球で踊るという。
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KUCHA : 「最後は限界まで踊りきって、バーンってその場で倒れたいんですよ」って言ったら「それはないわ!」って言われて(笑)

一同 : (笑)

KUCHA : 自分的には良いと思ったんやけど…(笑)

DY : 曲のタイトルも『KILLING FIGHT(死闘)』やし、意味合い的にも良さそうやけどな~!(笑)

かなり細部まで2人で相談しながら、という感じだったわけですね。撮影も完全に2人きりで?

KUCHA : いや…誰かいたんちゃうかな。あれ?誰かいたっけな?

HONGOU : 覚えてないんかい!(笑)

KUCHA : なんか、生徒に手伝ってもらって下見に行って試しに撮ってみたりもしたから、それと混同してしまってるわ(笑)

このSOOMAさんのビートとKUCHAさんの映像からスタートしたので、企画を印象付ける意味でも重要な回でしたね!個人的にも「それぞれのオリジナル音源と、それを使った映像がこれから定期的にリリースされていくのか!」と理解できました。

KUCHA : 一発目やからむちゃ勘繰ったよ(笑) 「どうやって撮ったら良いんやろ、何を求められてるんやろ」ってね。

CHEKE : たぶんみんなが「何を求められてるんやろ」っていう手探りの状態やったよな(笑)


◉DY×16FLIP『GAME』




第2弾がDYさんですね。先ほどは、ISSUGIさんは企画に快く賛同してくれたとのことでしたが、曲決めはどう進みましたか?

DY : さっき話があったように、ソロの音源として使うから、ノれて、首が触れるというのがまず前提としてあって。それに加えてISSUGIが思う俺のイメージも込みで6曲くらい送ってもらって、そのなかからチョイスしました。ちょっとだけギミック足したりアウトロ消したりとか微調整して。

やっぱり皆さんある程度曲を提示してもらったなかから選ぶのが多いようですね。

DY : 最初の選択肢は多い方が良いしね。

映像を見て思ったのは、カット数が多いということです。かなりいろんな場所が出てきますよね!電車のなかでたたずんだり、東京のJ.StudioでISSUGIさんと音を聴くところも印象的です。

DY : そうそう。品川とか東京の地下鉄とかJ.Studioとかいろいろ撮ったね。大阪でも撮りました。

DYさんが移動距離の合計が一番長いかもしれないですね!編集を担当された「ネリケシ」さんはどう繋がった方ですか?

DY : COCOLO BLANDのYouTubeチャンネルも携わってるビデオグラファーのクリくんっていう人がいて、その人に相談したら「今ちょうど3人で『ネリケシ』っていうクルーで映像をやり始めたからやってみたい」と逆に言ってもらって、やることになりました。ほかの2人も俺のことを知ってくれてて。絵コンテみたいなのもホワイトボードに描いてくれたり、イメージ映像も作ってくれたりして。

駅のホームで踊る、などもネリケシからの提案ですか?

DY : そうそう。sucreamgoodmanで制作した『LINKS』も知ってくれてて「それを日本でもやってみませんか?」って言ってくれて。だから電車のなかでも一回踊ったよ!

熱い!本当にLINKSの再来ですね。
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(sucreamgoodman『LINKS』 Trailerより)

DY : でもうまく映像にハマらなくて使ってはないけどね。吊り革の感じとかがイマイチやったし、音もそこまで大きく出せなくてガッツリ踊られへんかったのもあって(笑) 代わりに外でガッツリ踊りました。

後半部分のところですね。これはどこですか?

DY : 俺が昔、京橋でダンス始めた時に練習してたとこ。OBPってところです。

HONGOU : 京橋のOBP!昔ティッシュ配りのバイトしてたわ(笑)

DY : ティッシュ配りの人、おるおる!(笑)そのOBPまでの道を進みながら踊ってるんですよ。最後そこについて、自分のルーツも暗に示してるって感じです。
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裏テーマが隠されているわけですね!面白いです。

HONGOU : 京橋が地元って、都会やな!シティボーイ!

DY : みんな田舎もんやな~!(笑)


◉BUUBEE×Duckbill『THE SHELTER』




続いて第3弾。YOHEIさんですね。ビートメイカーのDuckbill(ダックビル)さんはYOHEIさんと同じく愛媛在住ということですが、企画を説明した時の反応はどうでしたか?

BUUBEE : めちゃびっくりしてたすね。「僕なんかで良いんすか!?」って。ビートメイカーとして活動し出したのがここ何年かの奴なんすけど、昔、まだ自分が大阪にいる時に愛媛で一緒にイベントやってたのもあって声をかけました。彼は「SAKE DEEP(サケディープ)」っていう愛媛県松山市のクルーにも所属してます。曲は10曲くらい送ってもらったなかから「これしかない!」っていうのを選びました。

なるほど!映像も全て愛媛で撮影されたものですか?

BUUBEE : そうやね。愛媛のなかでも、Duckbillがいる松山市と、俺が住んでる西条って町の2つを回りました。一緒にイベントやってた西条のクラブの前の道とか、松山の[SAADIA RECORDS](サーディアレコーズ)とか今までの活動のなかで思い出に残っている場所っすね。

撮影はどのように進めたんですか?

BUUBEE : カメラマンとか編集できる人がおらんってなって。第1弾のKUCHAくんも第2弾のDYくんも映像とか編集が綺麗やったけど、俺らはあえてローカル感とか「手作り感」を出した方が良いんじゃないかっていう話になって。そこでSAKE DEEP所属のラッパーのSiVAちゃんにも協力してもらって3人でiPhoneにジンバルつけたりして撮りました。

え、全てiPhoneで撮った映像なんですか!すごい!全然分からないですね。

HONGOU : やっぱり水潜ってるシーンはインパクトあるよね。
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BUUBEE : 普通にシュッとした映像じゃあかんかなと思って、面白い感じもプラスしたくて。川に潜って上から撮ってもらってます。服着てて重いから思ったように撮れなかったすけどね…(笑)

DY : 神社で踊ってるシーンも目立ってるけど、どんなとこなん?

BUUBEE : SiVAちゃんが「よくいろんな人を連れてくる神社なんすよ」って言って撮影することになりました。なんていう神社やったか、ちょっと覚えてないけど…。

HONGOU : 覚えてないんかい!(笑)

CHEKE : 撮影して編集して…って3人で全部やったん?

BUUBEE : 全部3人すね。これまで1つのプロジェクトに向き合うとかなかったから、めっちゃ仲良くなりましたね。

DY : じゃあもう編集とかも、自分らで調べながら手探りでやっていったんや。

BUUBEE : そうすね。あ、でも編集はiPhoneじゃなくてPCでやりましたよ!

HONGOU : そらそうやろ!(笑)


◉HONGOU×ENDRUN『Survival Test』




そして第4弾がHONGOUさんですね。ENDRUNさんに説明した時はいかがでしたか?

HONGOU : 即答で「やりましょう」って感じやったね。ENDRUNはTuneCoreもかなり詳しくて、逆にいろいろ教えてくれて。

DY : 「HONGOU×ENDRUN」は個人的にもバッチリな組み合わせやと思う!

HONGOU : HEX suのショーでも、俺のソロだいたいENDRUNの音使ってたもんな(笑) ビートを選ぶときも、20曲くらい持ってきてもらって順番に聞いてって「これがいい」って選んだビートを、その場で細かくいじっていった。

映像に関しても、ロケハンにしっかり時間をかけたと以前からチラッと聞いていました。なんといっても撮影/編集を手掛けたビデオグラファーのc.h0c0(チョコ)くんとも意気投合したと。

HONGOU : まずENDRUNのビートを聴いて「暗黒感」というか「冷たい感じが欲しい」ってなって、c.h0c0と2人で参考になりそうな映像を出し合ってた。あとは雲海の上で撮影したいっていうのが強くあったから、それをどうするかをけっこう喋ったね。どこの山が良いか調べてたら、地元の滋賀にある伊吹山が車で山頂付近まで行けるのを知って、そこに決めた。
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HONGOU : 冒頭にドローンで撮ったシーンがあるんやけど、撮影中にc.h0c0がドローンを上に飛ばしすぎて見失うハプニングもあった(笑) 霧に紛れて全然見えへんし、風が強くてドローンの音も聞こえんくて「HONGOUさんやばいっす…ドローンが今どこにいるか分かりません…」「まじか!借りてきたやつやのに!とりあえず下ボタン押し続けたら!?」「あ、ブーンってかすかに聞こえた!どっかにいる…!」って2人でてんやわんややった(笑)

一同 : (笑)

c.h0c0くんとHONGOUさんという組み合わせも新しくて面白いですね。

HONGOU : 今まで映像を作る時はダイコク映像のキダくんとやることが多かったけど、今回のイメージ的にキダくんじゃなかってん。キダくんは構図とか映像の展開をしっかり決めて撮るのが得意やねんけど、今回に関しては、あえてその場のノリとか「あそこで撮ってみよ」みたいな発想を大事にしたくて。そういう意味で臨機応変に対応してくれるc.h0c0にお願いすることにした。

たしかに映像からは踊りの部分以外にも、冒険感が伝わってきます。廃墟で撮っているシーンも絵力がありますよね。
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HONGOU : 廃墟はめっちゃ怖かった!映像で映ってるところとは別の建物があったんやけど、そこは入ろうとしたら入り口あたりで「ウッ」って嫌な予感がしてそれ以上入られへんみたいな。「チョコちょっとあそこ行ってみて!」って言ったらあいつも「ウッ」ってなって「ここは辞めときましょう」ってなった。映像で使ってるところも、昔ホテルやったとこらしくて、かなりゾッとしながら撮影してた。あとトイレみたいなとこで撮った映像もあるんやけど、それはなぜか再生できなかった。c.h0c0が「HONGOUさん、再生できないです…!こんなん初めてです!」とか言って。

一同 : こわ…!

HONGOU : あと俺も次の日高熱出たりしてちょっとやばかったな。でも是非行ってみて欲しい。

その話を聞いた後はさすがに行けないです!(笑) でもHONGOUさんが1番ビデオグラファーと二人三脚で制作されているんじゃないかという印象を受けます。かなりの時間を過ごして一緒にロケ地を回って、HONGOUさんからもc.h0c0くんからもアイデアが出て。

HONGOU : うん、c.h0c0もかなりアグレッシブにきてくれるから面白かったね。クラブでも汗だくで踊りまくったり、バイブスすごい奴やねん(笑)


◉CHEKE×ip passport『TORCH』




CHEKEさんは大阪在住のトラックメイカー/プロデューサーのip passportさんとのコラボでした。この6作品のなかで唯一トラック“作り”から一緒に取り組まれたコンビですね。初めにip passportさんに説明した時はどんな反応でしたか?

CHEKE : 条件とか説明する前から「やりましょやりましょ!」って感じやった。イッペーちゃん(ip passport)はお互いに趣味もわかってるから、ありもののビートを選ぶんじゃなくてオリジナルで作ろうってなった。もう一音ずつのレベルで。
「この『ドン』はどうすか?」
「うーん」
「こっちはどうすか?」
「もっとこうやって音変えれる?」
「あ、できるっす」
「めっちゃ良い」
くらいの感じで進めていった。 ハイハットの「チチチチチチ」を足していくのも「どの『チ』にします?」みたいな(笑) 俺の好みも分かってくれてるから「上音(うわおと)、かっこいいけどなんかちゃうかも」って俺が言ったら、その場で変えてキーもいじったりしてくれて。

音の素材まで相談しながらその場で作り込んでいったわけですね!FRESHのスタジオにこもって作業されているところも見かけました。

CHEKE : うん、4,5回くらい集まったけど、楽しかったね。作業も楽しいしイッペーちゃんと話すのも楽しいし。音を作ってるうちに「これで良いんかな…?」みたいになってきたら「ちょっとタバコ吸いますか!」って切り替えたり。良いペースで作れた。

細かいレベルまで作り込めるというのは、逆に「これで完成!」となりにくいかな?とも思いますが、いかがでしたか?

oSaam : もっと音を足したくなったりしそうやんね。

CHEKE : いや、でもある程度組み立ててからは、しつこく足したり引いたりしてないかも。2人とも「これでええんちゃう?」ってなった。2番(後半)の部分は逆にイッペーちゃんに任せて好きに組み替えてもらうようにした。曲調は変わらない程度に。

映像に関しても、若いダンサーが参加するなど一味違ったアプローチでした。

CHEKE : HEX suの6人ってちょっとずつテイスト違うけど、俺が分かりやすく違うやん?それを考えたときに、やりたいことを共有できてるダンサーを外から呼ぶみたいなのを、1人くらいやっても良いかなと思って。若い子らも声かけたら快く集まってくれて。この広いスタジオで撮ってるのは、昔からずっと好きなPVがあって「これに似た感じのがやりたい!」と思っていろんな場所を回ってん。ダンススタジオやと天井低かったり鏡が写ったりするから、CM撮ったり番組したりするような撮影スタジオをいろいろ回って、一番かっこ良いと思ったところを選びました。
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ビデオグラファーはHONGOUさんと同じくc.h0c0くんでしたが、テイストはまたガラッと変わっていますよね。

CHEKE : 俺とHONGOUくんって頭が全然ちゃうからビデオグラファーが一緒でもいけると思った。カメラも、良いやつもあったけど昔のホームビデオ用みたいなビデオカメラでも撮ってくれたりして。レトロな映像もちょいちょい挟んだりして。

何気ないシーンがすごく良いスパイスになっていて、何度も見返したくなります。

CHEKE : 普段見てるYouTubeとかも、お金使った企画物よりもゆっくり喋ってる感じとかオフショットの方がずっと見れるんよね。ずっと頑張ってると、見る方もパワー使うやん?やからただそこにいるだけとか、みんなでわやーってなってる感じとか、そういうの感じも良いよなあってc.h0c0に伝えたら、そういう何気ないとこも撮ってくれてて。

冒頭30秒にその何気ないシーンが入っているのも新鮮ですよね。いきなり始まらないのが逆に惹きつけられる感じがします。
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CHEKE : あそこ、本来は最後に入れる予定やってん。「もう明日映像出さなあかん」っていう日になって映像見返してたら、最後まで見れへんくて。「これ初めて見る人も最後まで見ずに離れちゃいそう」って思ってん。で、その部分をガバッと前に持っていってもらった。ほんまに前日やね。

そうだったんですか!まさに英断ですね。

CHEKE : あと俺は、できれば一発どりでいきたくて。映像がパッパッて切り替わるのもめっちゃかっこいいねんけど、ビデオグラファーってどうしても絵としてかっこいい部分を並べようとしてくれるから、ダンスを見るよりも背景を見てる、みたいなのが多いんよね。自分はそれよりもワンカットで30秒とか1分くらい踊ってるのが見たいなーってなるから、できればずっと撮ってる状態でいきたかった。でもそれって踊りとしてずっと良くないとあかんやん?それが難しかったね。

確かにそう思って見てみると、冒頭などの何気ないシーンはブツ切りでも、踊っているシーンはカットが長いですね!

CHEKE : みんな毎回一曲まるごと踊り切ることになるから最後はヘロヘロやった(笑) 「もう踊られへん!」ってなってた(笑)


◉oSaam×Budamunk『Stompin’ Ground』




そして最後にリリースされたのが、oSaamさん。言わずもがな東京在住のビートメイカーBudamunkさんとのコラボですね。

oSaam : もちろんBudaくんはすぐOKしてくれた。ただビデオグラファーがなかなか決まらんくて。まず当初はやりたい映像のイメージとして「山に登ってドローン使って映画みたいにする」っていうHONGOUと似たようなものを描いてて。ただドローンを借りれる人もいないし誰に映像頼むか迷っててん。候補として、8mlっていうVIBEPAKに所属してるビデオグラファーが良いかなと思ってた。映像やねんけど、コラージュみたいな感じで映像を貼りつけて、ピンボール流したら、ライオンが出てきたり宇宙空間になったり…みたいな。そういう映像を見て「この子やったら面白いかも」と思ったけど、全然連絡がつかなくて諦めました(笑) どうしようか迷ってたらBudaくんが「最近、FKD良い感じよ」って映像見せてくれて。相談してみたら向こうも「ぜひやりたい」って言ってくれた。そこからやっと進めたって感じです。

映像の質感もギミックもこだわり抜かれていますよね。見応えがあります。

oSaam : FKDはすごい優秀で。ちょっと言ったら全部わかってくれるみたいな。自分のダンスも昔から見てくれてて、逆に「任せてくれ」って言ってくれて。それで任せることにした。

HONGOU : どうなってるか分からんよな。oSaamの踊りは繋がってるけど、背景は変わっていくみたいな。「どうやって切り抜いたん!?」ってなる。
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oSaam : 撮ったのは2ヶ所やね。外で撮ったやつと、FKDの家でクロマキー(合成用の背景)の壁を用意してくれた場所で踊ったやつと。

撮影や編集の注文に関して、oSaamさんからFKDさんに伝えることは何かありましたか?

oSaam : 映像に関してはいうことなかったけど、踊りの勢いというか「もっと良い踊りしてるところあると思うから探させて欲しい」って言って映像見たんやけど、結局今のやつが良かったです(笑) 逆にFKDに任せて良かったと思う。今までは、映像を制作するってなったら編集にも全部立ち会って、元の映像からどこを引っ張ってくるかとかも一緒にやるようなタイプやったから、任せるのは心配やったけど、結果良かったね。

oSaamさんの映像は6作品のなかで一番短いですね!1分半くらい。「もっと観たい…!」となりました。

HONGOU : いや、この長さで良かったと思うよ!

CHEKE : そやね、次に繋がる感じがするし。後半にリリースする組は、1個目からチェックしてくれてる人の目も「次はどうなっていくんやろ?」っていう目になるやん?それがまた難しいところやんな。

DY : たしかに!回を重ねるごとにアイデアもアップデートされていくというか。俺とかKUCHAくんとかは、まず「どうやってやっていけば良いんやろ…」からやったからさ(笑) 前半組からしたら、アップデートされていくのを見て“やられた感”も少しあるけど、でも見直して、今日のみんなの話聞いてたら、それぞれが良くてクラシックになってるんやろなって思うなー。

HONGOU : たしかに、みんなのシューティングの時の話とかゆっくり聞くことなかったし面白いね。
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HANERU WORKSの今後。



半年にわたる「DANCER×BEATMAKER」の作品も全て出揃い、HANERU WORKSのさらなる今後の活動が気になるところです。

DY : 今は1/27(金)のイベントに向けて全力を注いでます!
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インパクト大のフライヤーはXXX-LARGE METHさんによるデザイン!

ついにコラボしたビートメイカーが一堂に会し、さらに茂千代さんなどスペシャルな出演者もいらっしゃるわけですね。個人的にも本当に楽しみです。

HONGOU : みんな来てほしい!地方に住んでる人とか、韓国のダンサーとかも早速きてくれるって連絡あったね。

DY : コロナ禍も乗り越えて初めての大規模なイベントです!ダンスショーもかなり厳選してるし、DJもラッパーもスーパーな人ばっかりなんで楽しみにして欲しいです。ここでようやく全員集まれる。ビートメイカーもやけど、カメラマンも来てくれるやろし、その時間ってめっちゃやばいと思う。

HONGOU : 去年11月の波フェスの時にみんなで沖縄に行った時に撮影した映像も近日公開予定。これはキダくんに撮影・編集してもらってます。音源はMAHBIEのトラックを使わせてもらう。MAHBIEもちょうど沖縄来てて[Abura Bar]ってところでDJしてたんやけど、フロアを俺らがジャックするみたいな。あの沖縄もハプニングだらけやったな~(笑)

oSaam : 大変やったね!

HONGOU : 弾丸すぎて沖縄感ぜんぜんなかったよな(笑)

DY : あとはBASEからTシャツとフーディを販売する予定です。企画の第一弾がたまたま音源と映像やっただけで、別に映像に特化するわけでもなくて、アパレルもやるし、イベントも打つし、いろんな角度からヘッズに届けたいすね。

楽しみにしています!


【あとがき】 「殻を破り続ける。」
インタビューを通して思ったのは、彼ら6人は初めての挑戦のなかで、僕が思っていた以上に"もがいていた"ということだ。もちろんこれまでの知識や経験を活かす部分はおおいにあるだろう。しかし音源や映像を制作・配信することを語る際に、「分からない」「難しい」「勘繰る」という言葉が続いた。撮影のなかで過密スケジュールすぎてうまくいかないこともあったという。
どうしてもSNS上だと、表舞台のキラキラした姿が目立つが、実際は分からないことに泥臭く向き合う時間も相当多い。しかし泥臭く向き合った結果できあがった作品がヘッズの心を動かす。ここに彼らのかっこよさの真髄があると僕は思う。つまり、「今までやったことがないことにトライしてみる=殻を破る」ことを20年以上続けてきた結果、今の位置やスタイルがあるのではないだろうか。インタビュー中のHONGOUさんの「いっぺんやってみたら考え方とか景色が変わった」という言葉が特に印象的だった。前人未到の偉業というのは、一握りの天才だけが可能な行為ではなく、「とりあえずやってみよう」の一言から始まるのかもしれない。



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Text : Seiji Horiguchi
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