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ロングインタビュー : grooveman Spot

2022.05.29

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FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ

Interview to grooveman Spot
日本を代表するDJ/ビートメイカーの今。



これまで数々のアルバム、ミックス、ビートプロデュース、そしてエディットワークなどなど、数えきれない作品を残し、今なお多方面のフレッシュなアーティストとの制作に挑み、独自の景色を生み出し続けている音楽家grooveman Spot。昨夏にリリースしたアルバム『LUV 4 ME』のツアー中の彼に、活動の原点や、重要視しているマインドについて尋ねるべく、仙台と大阪を繋いでリモートインタビューを行った。「お酒飲みたいけどツアーでかなり飲み食いしてしまうんで、平日は休肝日なんです(泣)」と水の入ったペットボトルを脇に置くgrooveman Spot氏。以前から氏と交流のあったHEX BEX HONGOUも聞き手に回って参加したインタビューは2時間に及んだ!
※『LUV 4 ME』をまだ聴いていない方は、チェックしてから記事を読むことを、記事の編集者として、そして1ヘッズとして強くオススメする!


ビートメイカーgrooveman Spotの誕生。

宜しくお願いします! まず、音楽活動を始めた頃のことをお聞きしたくて。過去のインタビューで、「MC HAMMERに出会ってブラックミュージックの世界にどっぷり」(2018年「DONUTS MAGAZINE」インタビューより)とあったんですが、HIPHOPに衝撃を受けてから、実際に音を作り出すようになったきっかけを教えてもらえますか?

grooveman Spot : かなり自然ですね。中1でMC HAMMERに出会うんですけど、当時「HIPHOP」という言葉もよく知らなくて「黒人の…ラップ?」くらいの認識から入って。友達のいとこがそれを聞いてるらしいというのを知って、どのアーティストを買えばいいか教えてもらうんですけど、その中にN.W.AとかIce-Tとか、R&BのBrian Mcknightとかもありましたね。仲の良い友達3人でCD買って貸し借りして。それが中2くらい。







grooveman Spot : 高校になってクラブに行きだすと、レコードを買ってDJもするようになります。そこからサンプリングというものに興味を持って。JAZZ、SOULとかのジャンルはまだ分からなかったですけどね。のちのENBULLの相方のU-ZIPPLAINと「曲を作ろう」ってなったのもこの頃です。高校を卒業して、二十歳くらいでAKAIのMPC-2000を先輩の家で使わせてもらった時に、「やべえ、これやりたいこと全部できる!」ってなって、翌日すぐ楽器屋に買いに行きました。そこからはもう毎日作ってました!

毎日ですか!その頃は「音楽で食べていきたい」という気持ちはあったんですか?

grooveman Spot : いや、逆に「音楽は仕事にしたくない」と思っていましたね。これで食べられるようになったとしても「もしこれがダメになったらなんも残らなくなる」と考えていました。23歳くらいまでは将来のことは何にも考えずレコ屋でバイトしながら音楽作ってましたね。23歳くらいで上京して、そこでいろんなことが始まる感じですね。食えるようになったのは…んーここ10年くらいかなあ?仙台に帰ってきてからかなあ。
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HONGOU : 仙台は制作もしやすいんすか?

grooveman Spot : 何が一番変わったかというと「お金を稼ぐために音楽をやる」っていうのがなくなったところですね。帰ってすぐは実家に住むんだけど、もちろん家賃はかからないしね。東京は家賃も物価も高いから「稼がないと」っていう考えで制作してた部分もあったけど、仙台きたらそれがなくなるから「やりたいことやろう」って思えたんですよね。ストレスフリーな感じがいろんな閃きに繋がって良い流れになりました。例えば「5万円でこのリミックスをお願いします」って依頼が来るのと、自分がかっこいいと思ったアーティストに「これお金いらないんでリミックスさせてください」だったら後者の方が良いって分かったんです。「お金うんぬんじゃないな」って。でも結果的に帰ってきてから仕事がめちゃめちゃ増えました。

なるほど!無理をしないのが、逆に音楽一本で生活できるようになったきっかけなんですね。

grooveman Spot : そうですね、ストレスフリーになったことは大きいです。もちろん震災のあとは大変でしたけどね。

過去のインタビューでgrooveman Spotさんが個人的に作ったリミックス音源がきっかけで、アーティスト本人と繋がったというエピソードも、まさにこういうところからだと思います。(GIRL HOUYHNHNM「grooveman Spotの日日是好メロディ。」(2021) より)

grooveman Spot : そうですそうです。一十三十一(ひとみとい)ちゃんですね。「この曲めっちゃ良いけど、俺がDJでかけたら爽やかすぎるな~」と思って、ドラム足してダンスっぽいエディット作ったんですね。それをパーティで聴いて「あれなんですか!」って反応してくれた友達にデータを送ったんですけど、その友達が横浜のクラブでそれをかけた時に、まさかの一十三十一ちゃん本人が聴いてたっていう(笑) 「何これー!めっちゃ良いじゃん、グルーブマンスポットさんっていうんだ!今度アルバム作るときにオファーしよう」って直接電話きたんです。「やりたい」の気持ちで行動した結果、曲が一人歩きして良い流れになった感じですね。全部そういうふうに自然に繋がってる感じがします。

ダンサー出身のgrooveman Spotが生み出す「踊れるビート」

5年前くらいにLOCKチームの「ゴーとちびゆり」のプロモーションビデオに曲を提供されたこともありましたね。ダンサーとのガッツリコラボというのも新鮮でした。映像もカッコいい!

もともとダンサーでもあったgrooveman Spotさんですが、今でもダンスシーンとしっかりリンクしているイメージがあります。

grooveman Spot : ダンサーとの繋がりっていうのは元々大先輩としかなかったですね。一番お世話になってるのは5CARATのTAKE-G(たけじ)さんです。仙台から福島まで電車で行ってTAKE-Gさんのショーを見に行ったりしてましたね。まず中学校の時はブレイクダンスとか、ZOOの踊りを見て真似してたんですけど、高2くらいでROOTSのショーに衝撃を受けてどっぷりHOUSEにはまりました。少しして一緒に遊ぶようになったTAISHOWが「自称日本一のTAKE-G狂」っていうくらいTAKE-Gさんファンで(笑) TAKE-Gさんが出るイベントは全国どこでも行ってこっそりビデオ撮ってね。そのTAISHOWも仕事で東京に行くんですけど「TAKE-G狂がもう一人いるらしい」って紹介されたのがMETH君だったんですよ。TAISHOWもMETH君とかS.A.SのYOSHIO君とかと踊ってたから、そこでYOSHIO君とも知り合います。

grooveman Spot : それからTAKE-Gさん、STRUD、FOOLISHのAMRIさんが組んだ5CARATとか。そういう世界にどっぷりでした。

grooveman Spot : それが二十歳くらい。だからダンサーとの繋がりはそういう先輩方から始まったんです。で、ダンス好きだしダンサーに目がけた曲を作ってみようかなーと思ってビートシリーズを始めました。
その世代のダンサーを生で見ていたことも、今のgrooveman Spotさんのグルーヴに影響を与えているんですね。

grooveman Spot : そうですね。「俺がTAKE-Gさんだったらこういうビートで踊りたいな」って考えたりするんですよね。あとは「HONGOU君にこの曲で踊って欲しいな~」って思いながら作ったりもしますよ。

HONGOU : そうなんすか!(笑)

grooveman Spot : そういうのけっこうあってね。HEXのショーもYoutubeで調べてめっちゃ見て「HONGOU君どんな曲でソロ踊ってるんだろう」とか。そうやってリサーチした情報が頭の中でごちゃ混ぜになって1曲ができるって感じですね。

ダンスから着想を得るんですね!とても興味深いです。ビートメイクは完全にデスクワークなわけですが、機材に向かって作業しながらあの体にくるグルーヴを追求するのは難しくないですか?

HONGOU : 一回踊ってみたりするんでしょ?(笑)

grooveman Spot : 実はそうなんです(笑)

HONGOU : あ、ほんまにそうなんすか!(笑)

grooveman Spot : ある程度ビートを組んだら、一回立ってちょっと踊ってみたりしますね。POPPERが使ってるような曲を思い出して「ああいう展開もあったな」って参考にしたり。派手に踊りはしないけどノってみますね。それでドラムの位置を調節したりします。

制作のリフレッシュに制作!?

次に今の生活についてお聞きしたいんですが、1日の流れや、1週間の流れはどういう感じなんでしょう?

grooveman Spot : コロナ禍は別として、基本的に毎年なにかしらリリースしてツアーに行くというのは心がけてて。週末は遠征してDJして、帰ってきて平日は少し休んでから依頼いただいた制作をしたり、それがないときは思いついた曲を作ったりですかね。

このインタビューも夜24:00からビデオ通話で行っているわけですが、生活は夜型なんでしょうか?

grooveman Spot : ですね。夜型になっちゃいます。俺、目覚ましをかけないんですよ。寝るだけ寝て、昼過ぎに起きて飯食ってからやる感じ。

HONGOU : ノンストレスっすね!(笑)

grooveman Spot : 例えば今日だったらお昼過ぎに始めて、さっき(23時くらい)までずーっとやってましたね。

ずっとですか!かなり長時間ですね!普段こういうインタビューがない日は、まだまだ深夜も作業されるんですか?

grooveman Spot : 下手すると朝までやってますね。作業し始めてから「今日良い感じだなー」って2,3曲できて、でも気づいたら朝9時っていうこともあります。

凄まじい集中力…。

grooveman Spot : 最近はツアーもあるし、やらなきゃいけないことが多すぎて時間がなくて全然できてないですけどね。でもそればっかりです。起きて曲作って、完成したらお酒飲んで寝て、次の日昼に起きて曲作って…。その繰り返しです。

制作がいき詰まった時にやっていることはありますか?

grooveman Spot : 寝ますね!もうなんもしない(笑) 面白いゲーム出てたらそれやったりとか?…んーでもそうやっておきながら「あのリミックスやってみようかな」とか考えちゃって結局作ってますね(笑) なんか他のことやろうとしても何かしら考えてしまってます。

制作のリフレッシュに別の制作をするんですね(笑) 完全に頭の中から出すことはできないという。

grooveman Spot : もう制作モードの時は制作ばっかりしてますね。例えばアルバムの制作で疲れて「気晴らしにあのリミックス作ってみよ」って作った音が良い感じになってることもあるんですよ。それでもどうしてもうまくいかない時は、ゲームしたり料理して酒飲んだり、あとは友達がDJしてるクラブに顔出しに行ったり。そういうところでMu-R君がかける知らない曲にヒントもらって「こういう感じやってみようかな」ってなったり。特にMu-R君のDJは結構インスパイア受けること多いですね。

ライターをやっていると、記事の原稿なんかも一晩寝かせて次の日に読むと見え方が変わって修正部分が見えてくることが多いんですが、そういった経験はありますか?

grooveman Spot : 音楽はもう寝かせますよ。作った時は気に入らなくてどっかにやってたビートも、久々に聴いてみると「これ手直ししたらいけそうだな」ってなることもあります。コロナ禍で時間があったんで、そういうことはよくありましたね。アフリカンっぽいビートの曲があるんですけど、PCに残ってたデータを再構築してリリースしたり。そう考えると全ては無駄ではないって思いますね。

『LUV 4 ME』ツアー大阪場所の注目ポイント

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6月12日は『LUV 4 ME』ツアー大阪場所ということで、こちらもめちゃくちゃ豪華です。このリリースツアーも折り返しくらいだと思いますが、各地のヘッズ、特にダンサーからの反応はいかがですか?

grooveman Spot : 僕のやるDJの感じからいくと、最近はPOPPERからの反応が多いですね。(アルバム収録の曲ではないけど)去年Daichi Yamamoto君とkzyboost君と出した『Wanna Ride(The Breeze)』は、特にPOPPERの間でバズったようです。毎日誰かが踊ってタグ付けしてくれるくらい。

「ザ・西海岸!」な曲ですね。ここ2年くらい、grooveman Spotさんの作品にはトークボクサー/トラックメイカーのkzyboostさんが参加されていることが多いですね。
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grooveman Spot : kzy君は「こういう時はこう思う」みたいな波長が合うんですよね。尊敬もしてます。仕事もしながら音楽もしててすごいと思う。僕がこんなこと言うのもあれですが、会った時からビートもカッコ良くなってて、めっちゃ努力してるのが伝わってきます。最初は大阪の「Cheers」ってパーティでDYちゃんが紹介してくれてね。そこで挨拶した翌月くらいに「grooveman Spotさんの曲のリミックスをライブでやりたいんですけど、もし可能だったらインストを送ってもらえませんか?」ってメッセージきたから「え!聞きたい聞きたい」と思って頼まれた曲以外のインストもいっぱい送ったらやってくれましたね。そのあたりから段々仲良くなりました。好きな音楽も近いんですよ。もちろん今まで聞いてきた音楽全てが重なるわけではないけど、「これ良い!」って思う音楽を同じくらい「良い」って思えたり、作りたいラインが似てます。今回6月12日のライブでは、僕の曲とkzy君の曲をバランス良く入れるって感じですかね!

楽しみです。先ほど話されていた「お金じゃなく自分がやりたいからやる」という姿勢も共通していますね!それからThe Lightsでは、ソロのダンサーが5人出演されるのもポイントの一つだと思います。

grooveman Spot : そうですね。関西のダンサーで仲良くしてもらってる人たちに声をかけました。もちろんもっといろんな人に出て欲しかったですけどね。何より自分が一番見たいんですよ!(笑)

HONGOU : 頑張ります!!

grooveman Spot : あと「今回は僕の曲で踊ってほしい」という注文もしました。

「grooveman Spot縛り」ですか!それぞれのダンサーがどんな曲をセレクトするのかも注目ですね。

grooveman Spot : 楽しみですね。大阪のダンサーはダンスショーがなかったり、HIPHOPのパーティじゃなくても自然とクラブに遊びに行ってるイメージがあって、そういうジャンルを超えた感じは大事だなって思います。僕は音楽ですけど、全然知らないジャンルの畑に行ってもいっぱいインスパイア受けたり、何かしらを自分のものにしたいんです。ダンスでもそういうのが見れると「かっこいい!」ってなりますね。それからD’OAMにしてもHEXにしてもsucreamにしても「誰に影響受けてるか分からない」ってところがかっこいいじゃないですか!彼らのフォロワーは沢山いるけど、その上の源流が分からないっていう。そういうシグネチャーというか"自分印"みたいなのは大事だと思います。HONGOU君たちは、世代としてダンスを始めた時にそこまでレッスンを習ってきてないのも大きいと思うけどね。

HONGOU : それはあるっすね。たしかにスタジオでレッスンを受けることなんかなかったっすもんね。

grooveman Spot : 仙台もそうだよ。クラブのショーを隠し撮りしてきたビデオを見ながらとりあえず真似して動いてみるとかね。 今は情報社会で、Youtubeで調べれば簡単に動画が見れる時代だから、逆にそこが難しいと思いますね。でも例えばクラブで憧れのダンサーがお酒片手に揺れてるところを見るのも良いかもしれないですね。ショーとか振り付けとは違ったノリがそこにはあると思うんで。

HONGOU : たしかに!肩で乗ってるだけでかっこいいみたいなねー。

grooveman Spot : 今だったらお昼のパーティもいっぱいあるんで、未成年の方も遊びに行けますからね。

6月のThe Lightsも夕方から終電までの時間なので、ぜひ来てほしいですね!というわけでお時間になりました。ありがとうございました!

grooveman Spot : ありがとうございました。みなさん6月12日に会いましょう!


【ライターあとがき】
インタビュー終盤で彼が発した「シグネチャー/Signature」という言葉について考えてみた。ググってみると、IT分野などではメッセージの末尾に付けられる署名を意味し、それが転じて「自分を象徴するもの」というニュアンスになる。ダンスの世界では、「スタイル」「武器」「クセ」などと言い換えても良いかもしれない。いうまでもなく彼の音楽には確固たるスタイルがある。ファンキーなシンセ、凄みのあるベース、視界が開けるような壮大な展開...。どれも彼のシグネチャーサウンドを作り上げている要素と言える。しかし、彼はそんなスタイルに至るまでに様々な音楽やダンスを見聞きして自分の血肉にしてきたし、今なお進化すべくインプットを続けている。情報が溢れすぎてリアルとフェイクも見極めにくい世の中だけど、表現者としてのシグネチャー獲得のためにも、インプットの質を向上させたい。
超多忙な生活の合間を縫って快く本企画に協力してくださったgrooveman Spotさん、そしてこの長い長い記事を最後までインプットしてくれたあなたに感謝申し上げる。


文/構成 : Seiji Horiguchi
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