NEWS最新情報

Manager's Essay vol.1

2022.03.31

イメージ1

「初めてFRESHでレッスンを受けた日」

文/構成 : Seiji Horiguchi

はじめに

思えば随分遠くまで来たような気がする。今まで自分を育ててくれた人や環境への感謝とリスペクトを込めてエッセイを書いた。書くのにも時間がかかったので、読むのにも時間をかけてくれていい。マネージャーエッセイの記念すべき第一弾。


地方から大阪へ。--誰もが体験する初アメ村--

FRESH DANCE STUDIO(以下FRESH)には、日本全国ひいてはアジア各国から「ダンスが上手くなりたい」と志の高いダンサーが集まる。なかには活動拠点を難波周辺に移して、一旗揚げるべく活動する地方出身のダンサーもいる。「なかには」と書いたが、実際は「難波周辺で活動するダンサーの大多数は地方出身」というのが個人的な印象だ。例えばFRESHには現在5人のスタッフ(全員ダンサー)がいるが、大阪出身は1人しかいない。僕にとって一番身近なコミュニティでさえもこの割合なのだ。これは我が職場のスタッフに限らず、難波界隈のダンスコミュニティ全般におおむね共通するんじゃないだろうか。

今、僕はFRESHのマネージャー(わかりやすく言えば店長)をやっている。スタッフのシフトを組んだり、SNSやブログを更新したり、発表会の時にはマイクをとって偉そうに出演者や先生方に説明を行うこともある。まあこれだけ聞けばいわゆる“店長業務”という感じかもしれないけど、普段はスタジオの清掃やレッスンの受付も行う。つまりスタジオの運営から日常的な作業まで取り組む「なんでも屋」と言ったところだろうか。このスタジオで働いて早5年。様々な紆余曲折があって今の立場にいるが、新しい情報が入ってきたり、いろんなアーティストと接する機会も多いこの役職はやりがいを感じるし、毎日が新鮮な感じがする。

ただマネージャーの立場にいることに対して時々困惑することもある。それはなぜか。そもそも僕もFRESHの一生徒であり、もともとは田舎から引っ越してきた“ひよっこ”に過ぎなかったからだ(別に今も偉くなったとは思わないが、大阪に来た当時は本当にひよっこだった事を強調しておきたい)。御堂筋をどっちに進めば梅田でどっちに進めば天王寺かもちんぷんかんぷんなくらい、BIG STEPのスタバに行くことがお洒落だと思うくらい、そしてFRESHの会員カードを作っただけで嬉しくなってインスタに投稿するくらい、ど田舎者な時代を経て、今スタジオのメインスタッフになっている。人生は何が起きるか分からないものだ。

とはいえ、ここでこれを読んでいる人たちに伝えたいのは「あんなに小さかった俺も、ここまで名を馳せたぜ。どんなもんだ」という自慢ではない(繰り返すが、スタジオのマネージャーは別に偉くもなんでもない)。

最近はコロナが落ち着いてきたこともあり「初めてFRESHにレッスンを受けに来ました」という学生さんや社会人がまた増えてきた。それから昨年の秋には、女性のダンサーがダンスをするために、はるばる北海道から大阪に引っ越してきた。(少し脱線するが、アメ村界隈には札幌出身のダンサーが不思議と多い。大阪と札幌の間に、何か共通点というか親和性があるのだろうか) そうやって遠方からFRESHに来た人たちはみんな希望と緊張が入り混じった表情で待合にやってくる。まるで何かの採用面接のように。しかし彼らが今経験しているように、誰もが緊張してアメ村を訪れ、恐る恐るFRESHに足を踏み入れ、初めて憧れのダンサーのレッスンを受けた経験があるのだ。そこで今回は、僕自身が初めてFRESHのレッスンを受けた頃の事(もう8年前!)を書き記すことで、最近FRESHに通いだした(あるいはこれから通いたいと思っている)ダンサーたちにエールを送り、さらにもう少し欲をかくならこの春から新しいことに挑戦するような方にも前向きな気持ちになってもらえればと思う。

※一点だけ断っておきたいが、これはあくまで当時の(ど田舎者の)僕の主観や偏見をもとにした初レッスンを振り返ったエッセイなので、FRESHのレッスンのシステムや習慣のようなものは当時から変わっている部分もあるし、人や建物の描写なんかは多少失礼な表現もあるかと思う。つまりFRESHや、その特定のレッスンの宣伝を目的とした読み物ではないということだけ理解いただきたい。

【「この人に習うんだ!」知り合い0人の土地へ引っ越す田舎っぺ。】

僕は2014年の12月16日の火曜日に大阪に引っ越した。(なぜかこの日付はいまだに覚えている)大阪に来る前は、長野県の松本市でダンスをしていたけど、「ダンスで飯を食えるようになるために修行が必要だ」と考えて、大阪に移り住む事を決めた。
イメージ2
家族や友達からは、よく「プロのダンサーを目指すなら東京じゃないの?」と言われた。ではなぜ東京ではなく大阪に行こうと思ったのか。理由はシンプルだ。sucreamgoodmanのoSaamさんのレッスンを受けるためだ。2014年のDANCE@LIVEの関東予選のジャッジに来ていたoSaamさんの踊りを目の当たりにして衝撃を受けたのがきっかけだ(あの衝撃は今でも忘れない)。それ以外には、大阪という街を選んだ理由は特にはなかった。知り合いも1人もいないし、目当ての飲食店や服屋があるわけでもない。(今思えば「知り合いが1人もいなくて、仕事のアテもない状態でよく大阪に引っ越せるな…」と過去の自分に半ば呆れるけど、若さゆえの行動力だったのだろう)

引越しも無事終わり、(新居の場所が分からず、引っ越し業者をアパートの前で1時間近く待たせてしまったという意味では無事ではなかったけど)、大阪生活が人知れず静かに始まった。はじめの1週間は、ネットでバイトを探しつつ難波周辺を散策した。「ここのミスドは人があまり来ないから長時間パソコンいじってても注意されなさそうだな」とか「つるとんたんは24時間やってて便利だけど、意外と高いな…」とか「グリコ周りは観光客が多すぎて土日は歩きにくいな」とか。ちょっとずつ大阪の情報や習慣のようなものを理解していく。

また同時に「oSaamさんはどこでレッスンをしているんだろう」とネットで調べる一週間でもあった。「oSaam レッスン」で検索すると、大阪のダンススタジオのHPが色々と出てきたけど、違いがいまいち分からない。「とりあえずこのスタジオから行ってみるか。oSaamさんはいろんなスタジオでレッスンしてるみたいやし、まず行ってみてレベルが高かったり空気が合わなかったら違うスタジオに行ってみよう」と最初に選んだのがFRESH DANCE STUDIOだった。
イメージ3

いざアメ村!どこがアメ村?

引越しからまる一週間経った火曜日。いよいよoSaamさんのレッスンの日だ。HPの「アクセス」のページに載っているスタジオの住所をスマホのマップに入力して、いざチャリでアメ村へ。しかし、ここでまず一つ目の難関。

場 所 が 分 か ら ん 。

近くまで来てるはずだけどスタジオの入口が見つからない。ついでに文句を言わせてもらうと、どこからどこまでがアメ村なのかも分からない。同じような道ばかりだし、小ぶりな路面店が多くて分かりにくい…。超がつくほどの方向音痴の自分を恨んだ。刻一刻と時間は過ぎていく…。どうする田舎者!
イメージ4
とりあえずアメ村で最も分かりやすいシンボル的スポット「三角公園」に戻った。冬なのに、背中には嫌な汗をかいている。とりあえず一旦、自転車を降りて、スマホ片手に目印を探しながら歩き始める。

ん。これか…?あ!あった!FRESHのロゴが描かれている黒い看板を発見した。入り口は小さくて見落としやすいけど、自転車が沢山停まっている。そして看板の脇には地下に降りる階段が続いている。

…地下に降りる階段?

黒く塗られた細い階段は、両脇の壁にイベントのポスターやステッカーが貼られていてクラブみたいな様相。とにかく怪しくていわゆるドープな雰囲気が漂う階段だ。
イメージ5
しかもスタジオの前の道路を挟んだ向かいには風俗店。さすがアメ村…。長野ではダンススタジオの前に風俗店があるなんて考えられない。

田舎者にも愛を。受付スタッフの規格外な挨拶。

「というか、そもそもちゃんと今日はレッスンあるのか…? 」といつの間にか疑いの気持ちも湧いてくる。というのも以前、学生時分に、東京の(もちろん名前は出せないが)大手ダンススタジオに某ダンサーのレッスンを受けに行った際、受付で「今日休講なんですよーごめんなさいね!」と言われて、虚しく帰った経験がある。だから「有名ダンサーは直前の休講・代講は当たり前」というイメージが勝手についていた。初めて訪れるドープな雰囲気も相まって「きちんとレッスンがあるのか」と勝手に勘ぐり出してしまう田舎者。階段を一番下まで降りて、ドキドキしながら扉を開けると…

「お疲れやまでぇーす!!!」


いきなり声をかけられた。

オツカレ…ヤマデス…?直前までのドープ階段から一転。陽気なテンションの一声に面食らってしまった。声がした方を見ると、スタジオのスタッフとみられる女性が受付に座っている。「あ、お疲れ様です」と控えめに挨拶を返して、レッスンの体験に来た事を告げると、スタッフの女性は「どっから来たんー?」と、なおも明るい声で聞いてくる。「長野から来ました。あ、でも出身は奈良県で、大学で長野に行ってて…」など、ゴニョゴニョ。緊張していて思ったようにコミュニケーションを取れなかったけど、少なくともスタジオの階段を恐る恐る降りた時の不安は和らいだ。(女性スタッフのテンションにあっけに取られて不安を忘れてしまったという方が正確かもしれないが)。

今思えば、僕がこの後もFRESHに通い続けようと思ったのは、この女性スタッフの人柄がきっかけと言ってしまっていいかもしれない。

oSaamさん登場。How to shake hands in Osaka.

体験レッスンの代金を支払い、レッスン着に着替えて待合で大人しく待機する。周りで待っている人たちは普段から通っている生徒さんと見える。みんな雰囲気あってダンスうまそう…。ほとんどが自分よりも年上の人たちだ。みんなリラックスして、さっきの受付のお姉さんと談笑している。

前のレッスンが終わって「お疲れした~」と、声が大きい男性のダンサーが出てくる。あ。この口髭の方は…HEX BEXのHONGOUさんという人で、確かこのスタジオのオーナーだったな。FRESHのHPにも写真が載っていたし、YoutubeでoSaamさんと踊っている映像も観た…!こんなに早くスタジオのオーナーと会うなんて。女性スタッフとは満足いくコミュニケーションができなかったからな。ここは勇気を出してきちんと挨拶しておこう…。

「あの、初めまして!長野から大阪に引っ越して、今日初めてFRESHにレッスン受けに来ました!」

「おー。わざわざおおきに。頑張りや!」

「ありがとうございます!」

気さくな人だなあHONGOUさんは。というか大阪の人たちの、全体的にピースで初めての人間に対してもウェルカムな姿勢、とても救われるなあ…。(その気さくな方は、実はHONGOUさんではなく、CAPOEIRA CLASSを教えられているTOKUさんだと知ったのは、もっと後のことだった。今思い返してもめちゃくちゃ恥ずかしいし、申し訳なく思う)
イメージ6
21時30分。レッスンが始まる時間だけど、まだoSaamさんは現れない。他の生徒さんにならってスタジオ1の中に入り、一番端でストレッチをしながら待つ。oSaamさんレッスンはいつも始まるのが遅いのだろうか?もちろん他の生徒さんに聞くことなどできない。また緊張が高まってきた。ついていけるのか…。怖くないか…。どんな進め方なのだろう…。前の週からやってる振りとかあったらどうしよう…。

そして21時40分頃、oSaamさんが登場(この前に奈良のスタジオでレッスンをしている関係で、いつも少し遅れてレッスンが始まるということを後から教えてもらった)。第一印象は…思っていたよりも背が高い!顔もめちゃくちゃ小さい!何頭身あるんだろう…。

ぬっとスタジオに入ってきたoSaamさんは、まず生徒一人ひとりと「おはよ!」とにこやかに挨拶を交わして握手をしていく。よく見ると、普通に握手をしてから、その手をグーにして、互いのグーをぶつけている。(なるほど。これが大阪流のハンドシェイクか。また一つ大阪の習慣を頭に入れる。)しかもレッスン前に20人くらいいる生徒全員と挨拶を交わすのも、なんだか新鮮というか意外だった。(完全に失礼すぎる偏見だけど)大御所のダンサーは、スタジオに入ってきたらいきなりレッスン始めるものじゃないのか…。

僕はスタジオの入り口から一番離れた部屋の隅でスタンバイしていたので、挨拶をするのも最後だった。いよいよ自分の順番。なんて言えば良いんだろう…。まずは握手をして、グーにしてぶつけてと…。

「おはようございます…!」こわばりながら挨拶をすると…

「お、それMA-SA君のとこのキャップやん」

優しく声をかけてくれた。僕が被っていたのは「ROYALLY」という山梨のストリートブランドのキャップで、プロデュースされているMA-SAさんには長野に住んでいた頃からお世話になっていたけど、oSaamさんもどうやら知り合いらしい。でも初対面の若造に対して、瞬時に話題をみつけて声をかけられるoSaamさんの優しさよ…。待合室での「お疲れやまでぇーす!!!」と同じくらい、ここでも面食らった。

「はい!あの、長野から来ました!」と少し的外れな返事をしてしまう若造。

「そうなんや!よろしく!」と改めて声をかけてくれるoSaamさん。

そして記念すべき僕のFRESH第一回目のレッスンが始まったのだった。レッスンの詳細の内容まではさすがに覚えていないけど、「アップのリズム+クラップ」を教えてもらったことだけは今でも鮮明に覚えている。「ただリズムに乗って手を叩くだけなのに、こんなにも意識することが多いのか…」と、そこでも衝撃を受けた。もちろん周りの生徒さんは全員めちゃくちゃ上手いし、僕はついていくだけで精一杯だったけど、刺激的で笑いもあって、とても充実した時間だった。

終わりに。

こうやって初めて初FRESHレッスンのことを振り返って書き起こしながら、改めて緊張しいで人見知りな自分の性格にうんざりすると同時に、親切かつバイブス高めで接してくれた受付スタッフのミホさんやoSaamさんに改めて感謝の気持ちが湧いている。彼らがどこの馬の骨かもわからない田舎者を親切に迎えてくれたからこそ、その田舎者はこの後もFRESHに継続して通いたいと思ったし、(何年かあとのことだけど)FRESHで働きたいとも思ったのだ。

最後にもう一度だけ断っておくが、このエッセイはFRESHの宣伝を目的としているわけではないし、内輪ノリの(乱暴な言い方をすると排他的な)“FRESH最強説”を唱えたいわけでもない。あくまで一個人による、極めて主観的な感想を記すことで誰かの背中を押すことができればと考えて書いた。関西には素敵なダンススタジオが沢山あって、個性的かつ魅力的なスタッフが在籍されているし、oSaamさんはどんなスタジオであれ全力でレッスンをされている。僕が伝えたいのは「誰でも初めての経験はある」ということだ。みんな初めての経験を経て、失敗と成功を繰り返し、自分のスタイルだったり居場所を手に入れることができる。ちんちくりんの田舎者だった人間が、偉そうに筆をとってエッセイを書くようにもなる。今年の春から新しい環境での生活を送る方も多いだろう、そんな新生活の背中を押すことができれば、(あるいは「自分はどうだっただろう」とあなたが初心に立ち返るきっかけになれば)それ以上の幸せはない。あなたにとって、フレッシュで幸多き春になることを祈って。

  • お電話でのお問い合わせ

    06-6211-5838

    受付時間: 12:00-23:00

  • メールでのお問い合わせ

    受付時間: 24時間

    ※ 24時間対応ではありません