アメ村放送倶楽部 vol.10 Yotaro
ゲスト :
Yotaroコメンテーター :
oSaamホストMC :
Seiji Horiguchi※2020年8月21日(金)のインタビュー
Seiji :
こんばんは。アメ村放送倶楽部のお時間です。今日は記念すべき10回目の放送です!本日のゲストはビートメイカーのYotaroさんです!そして僕の隣にはコメンテーターとしてoSaamさんに来ていただいています!本日はよろしくお願いします!Yotaro : お願いします~。
oSaam : お願いします!
Seiji :
Yotaroさんは、今ご自宅でしょうか?Yotaro : そうです。自宅です。もう飲んでますね。
oSaam : 今日は何を飲んでるんですか?
Yotaro : 今日は焼酎ハイボールです(笑)
1, 音楽との出会い。HIPHOPとの出会い。
Seiji :
まずはYotaroさんのプロフィール紹介から。Yotaroプロフィール
1990年生まれ。奈良のトラックメイカー。幼い時にブレイクダンスを始め、HIPHOPに魅了される。2010年、MPC2000XLでビート製作を始めるようになり、2012年アメリカの音楽配信サイトbandcampに自身の音源を公開し始める。日本人離れしたスモーキーで太いベースライン、ざらついたサンプリング、ミルキーで聴いた者を陶酔させるCHILLな世界観に包まれた作品は世界中のビートジャンキーから絶大なる賞賛を受ける。一挙一動の動向に目を離せない次世代ビートアーティストである。
Yotaro : ありがとうございます!ビートメイク始めたてくらいの時に書いてもらったプロフィールですね。
Seiji :
すごくわかりやすいですし、特にビートの描写にはとても共感しました。インタビューの前半では、ビートメイクを始めるまでのお話をお聞きしたいと思います。プロフィールにありますが、HIPHOPとの出会いはダンスがきっかけだったんですか?Yotaro : まず小さい頃から難波にあるYAMAHAの音楽教室に通ってたんですけど、そのYAMAHAでダンスレッスンが開講されることになって、母親の「やってみいひん?」という一言をきっかけに始めましたね。始めはHIPHOPとかLOCKをやってて、途中でブレイクダンスに転向しました。
Seiji :
元々YAMAHAに通っていたというのは、どういった経緯でしょう?Yotaro : 両親が音楽をやってたんで、それがきっかけですね。
oSaam : ミュージシャンの家庭やったんやね。
Yotaro : そうですね。母親がピアノをやってて父親はドラムをしてました。で、自分はダンスを小4~中学生くらいまで続けてましたね。途中でブレイクダンスに転向したりしたけどHIPHOPはずっと聴いてましたね。
Seiji :
Honey RecordsのHPにあがっているYotaroさんのインタビュー記事 (2019.9.3公開)を拝見したところ「母親にHIPHOPのCDを買ってきてもらった」とありますね。Yotaro : YAMAHAのダンスレッスンに行ってた時に、母親が「このCD踊れそうやで」と買ってきてくれたのがQ-Tipの『Amplified』だったんです。HIPHOPのビートを意識して聴いたのはそれが初めてでしたね。
Q-Tip - Vivarent Thing
Seiji :
お母様もQ-Tipの音楽にビビッときたということでしょうか?Yotaro : や、中身は聴かずに買ってきました。多分このアルバムがリリースされたばっかりやったと思うんですよ。それで店頭に並んでたのを手に取ったんだと思います。
oSaam : それで…J Dillaに出会うわけですね?
Yotaro : そうですそうです。その時は知らなかったですけどね。ビートメイカーというものが何かわからなかったんで。でも、もちろんかっこいいとは思いました。5番目の…『Let’s Ride』かな?が一番好きだったと思います。
Q-Tip - Let’s Ride
Seiji :
今でもその衝撃を覚えているんですね!ビートを作る側になるきっかけはなんだったんでしょう?Yotaro : もともとブレイクダンスをしてた頃に「自分らで踊れるように」っていうことでエディットみたいなのを作って遊んでたんですよ。誰かの曲の上にIncredible Bongo Bandの『Apache』のドラムを重ねて練習に使ったり。でも実際にビートを作ろうと思ったのは二十歳くらいの時。その時にたまたま出会った人がビートを作ってて、興味を持ってその人の家に行ってやってみたって感じですね。それが10年前、2010年くらいです。
Seiji :
プロフィールには「2012年に音源公開」とあるんですが、作り始めて2年で作品としてパックするところまで行ったというわけですね。Yotaro : たまたまその頃に体を壊してしまってずっと家にいたんですよ。だからずっとビートを作りまくってました。手軽にリリースできる
bandcampっていう媒体も知ったので。フリーでリリースもできるという点もよかったですね。
Seiji :
YAMAHAで音楽を習っていたことは、ビート作りに影響を与えたりしているんでしょうか?Yotaro : 直接影響してるかは分からないですが、やっぱりダンスをやっていないと出ないノリはあるかもしれないですね。あと小さい頃から音楽をやっていたおかげで絶対音感のようなものはあって。だから自分のビートに誰かのアカペラを乗せる場合も絶対外れた音階のものは入れたくないですね。最近は音階が合ってないビートもいっぱいあって、それを聴くと気持ち悪いですね。でもそれはそれで、現代の音楽かなとも思いますけどね~。
2, Sound Cloud全盛期に彗星の如く現れた“Yotaro Beats”。他のビートメイカーとの作品について。
Seiji :
ネット上にビートをあげだしてから、リスナーからの反応というか手応えのようなものを感じたのはどれくらいからだったんですか?Yotaro : Sound Cloudの全盛期が2014~2016年くらいだと思うんですけど、その時は再生回数を見ていると「聴いてもらってるんだな」っていう実感はありましたね。今は
SoundCloudは宣材用みたいになっちゃってますけどね。でも時々アップすると昔からチェックしてくれてるファンの人が反応してくれます。でも今はSpotifyとかApple Musicとかストリーミングに移っていってるんじゃないですかね。
oSaam : bandcampで曲を買った人の名前って届くん?
Yotaro : 届きますよ。oSaam君は知り合う前から買ってくれてて「誰やろ?」って思ってた記憶はありますね。
Seiji :
oSaamさんはどういったきっかけでYotaroさんのビートを知ったんですか?oSaam : 確かSoundCloudで見つけたのがきっかけやったな。奈良出身っていうのを知らずにビートをチェックしてた。で、ある日212.の
シモちゃんから「こないだ奈良のビートメイカーのYotaroって人に会ったけど知ってる?」って聞かれて初めてどこの誰かっていうのを知った。そこから速攻で繋がりに行ったって感じですね。Yotaroのビートは、俺がずっと好きやった
Buda君のビートにめっちゃ似て聴こえて、Buda君の事も意識してるんかなと思った。
Yotaro : そうですね。Budaさんのビートは初め聴いた時は衝撃的やったすね。初めは外国人やと思ってたんですよ。で、かけてるDJに聞いたら「これ日本人やで。Yotaro絶対好きやと思う」って言われました。そこからBudaさんのビートをディグルようになって「いつかこの人と作りたい」って意識するようになりましたね。(2017年にBudamunk&Yotaro名義のビートアルバム『
Rhythm&Balance』をリリース)
Seiji :
それを叶えるというのも素晴らしいですよね。YotaroさんがBudamunkさんと初めて会ったのはいつですか?Yotaro :
ILL-SUGIをSoundCloudで見つけて、プロフィール見たら日本人で、しかも同い年やったんです。連絡したら向こうもチェックしてくれてて、中目黒のHeavy Sickでやってるイベントにビートライブで呼んでくれたんです。そしたらその場にBudaさんもいてはったんで、すぐにビート聴いてもらいました。それが2013年くらいですね。
Seiji :
東京のイベントに行った時に色々が繋がったんですね!さらに2019年には、oSaamさんが主催されているTENRI GOOD FELLOWSで、YotaroさんとBudamunkさんのビートセッションも行われて1ヘッズとしてもぶちあがりました。Budamunk&Yotaro Live@Nara Japan
oSaam : あの光景を見れてよかったよね。YotaroもBuda君も何も言ってないのに奥さんと子どもも連れて遊びに来てくれて、そういうのもめちゃ嬉しかった。
Seiji :
やはり精力的に活動されているビートメイカーはどこかで繋がって、一緒に制作したりイベントに呼び合ったりする印象があります。2020年の10月にはYotaroさんはENDRUNとのビートアルバム『SOUR HOUR』をリリースされましたね。Yotaro : ありがとうございます。このアルバムにはENDRUN君と遊びだした頃から今までの5年で作りためてきたビートが入っています。CDにはボーナストラックもつけてます。
Seiji :
Aru-2さんとのユニットHooba Boobaでの音源も不定期でリリースされています。Hooba Booba(Yotaro&Aru-2) - Vaper
oSaam :
Madlibと
OH NOのセッションみたいやったね。
Yotaro : 兄弟ではないですけどね(笑) ありがとうございます。Youtubeにあげてる映像は僕の実家で撮ったやつですね。
Seiji :
映像の中でYotaroさんがドラムを叩かれている姿が映っていますが、そういった生楽器もビートメイクに取り入れたりされるんですか?Yotaro :あれはやってる振りですね!
一同 : (笑)
Seiji :
そうでしたか!良い鳴りを求めて行った結果、ドラムに行き着いたのかと勝手に思っていました(笑)Yotaro : 父親がドラムやってたというのもあって家にドラムセットがあるんですよ。あの時の映像の撮れ高的にちょっと叩いといた方がええなーって思って(笑)
Seiji :
それから海外も行ったことがあるとうかがいました。Yotaro : そうですね。2018年にLAとサンフランシスコに行きました。Budaさんの友達の
TachiさんがLAに行くタイミングで僕も一緒に行きました。右も左もわからない僕をめちゃめちゃケアしてくれて…しかも
SHING02さんのツアーに同行させてもらいました。ビートライブの時間も設けてもらって、いい経験をさせてもらいました。めちゃデカいライブハウスだったので衝撃でしたね。印象としてサンフランシスコの方が僕のビートは受け入れてもらいやすいような気がしました。
Seiji :
面白いですね!現地の人からの反応が良かったということですか?Yotaro : LAの人らはどちらかというと自分たちが世界に向けてカルチャーを発信しているっていう誇りを持ってて、Trapとかイケイケな方が受け入れられる感じはありますね。サンフランシスコはもっとディグる風潮が強いというか。街並みも全然違うし。あと
Delicious Vinylも行きましたね。
DJ MZAってやつが
SoulcircleRadioっていう配信イベントをやっているのを知っていたので、LAに行く前からアポとってビートライブさせてもらったりとかもありました。あとはビートはひたすら作ってましたね。
3, 奈良に腰を据えるということ。今後の活動。
Seiji :
それからお聞きしたいことがあって。Yotaroさんは奈良というローカルエリアで暮らしながらも、世界中のリスナーに向けて発信しているところが印象的です。そこに至るまでどう積み重ねていかれたのかなというのが気になります。Yotaro : 今はもうネット時代やからどこにいてもなんでもできると思うんですよ。自分もその世代ですしね、SoundCloud然り。でもターゲットを世界に向けていかないとっていう意識は初めからありましたね。もともと外国人の音が好きだったんで向こうの人に聴いてもらいたいっていう気持ちはあったんです。ただ、これだけ言いたいんですが、僕は奈良が好きなんです。だから自分の住んでる街から出て行きたくないですね。このマイペースさが良いんですよ。大仏さんに見守られて、奈良の盆地に守られてる。これは僕は本気で思ってるんで。
oSaam : 奈良の人はそう思ってる人が多いよな。地元への気持ちが強い。
Yotaro : 時と場合によっては外に出ることも必要かもしれないですけど、ビートメイカーは自宅で作業ができるので、そういう部分を活かして表現していけると思いますね。
Seiji :
コロナ禍でも活動の勢いはそのままキープされているという感じでしょうか?Yotaro : そうですね。ただ自分の生活のリズムは前に比べて変わっている部分もありますけどね。がんがんビートを作ってる訳でもないですし。でもマイペースに自分の好きなタイミングで作って。自分が好きなものを出すことを重きにおいて僕はやってます。
Seiji :
インタビューも終盤ですが、リスナーから質問も届いています。リスナーからの質問 : 「Yotaroさんがビートを作る時に使用するサンプリングソースはレコードからが多いですか?」
Yotaro : いや、レコードはほとんど使わないですね。基本Youtubeが多いです。
oSaam : 音質が悪くなったりしないの?
Yotaro : 最終出来上がったビートが音質良ければ良いと思いますね。一昔前までは「サンプリングはレコードじゃないとあかん」みたいな風潮があったけど、僕はそういうのは一切思わないですね。
リスナーからの質問(Ryutaro) : 「ビートを作る時に気をつけていることはなんですか?」
Yotaro : 気をつけてること…ないですよ。
oSaam : このコメントくれたRyutaroも最近ビート作り始めた子やから、参考にしたいんやと思うわ。ビート自体はどこから組み立てるん?キックからとか。
Yotaro : いや、もうそれもバラバラで。ドラムもメロディラインも、その時々で組み立て方が変わるんですよ。例えばサンプルが良かったりしたら、ネタベースで始まるし「このドラムのリズムでいきたいな」って時はドラムが軸になるし、ケースバイケースで変わるんで一概に「こう」っていうルールは言えないですね。ビート作り始めとかなら、なおさらルール決めずにいった方がいいんじゃないですかね。
リスナーからのコメント : 「Yotaroさんがやばいと思うビートメイカーは誰ですか?」
Yotaro : きりないですね…。最近ハマってるのは
Butcher Brownていうバンドですね。その中に
DJ Harrisonってのがいるんですが、ビートがめちゃいけてるですよ。オープンリールとか通してるっぽくて、渋いっすね。
Butcher Brown Live at. Paste Studio NYC
DJ Harrison Beat Live
Yotaro : 最近実はバンドとかにも興味があって、個人的にドラムがやりたいんですよ。周りにバンドできる人がいないのでやれてないんですけど。でもみんなで一つの作品を作り上げてるっていうのが楽しそうで。
Seiji :
それでいうと、他のビートメイカーとセッションしながらビートを作る時なんかはバンドと似たような感覚なんでしょうか?Yotaro : 他のビートメイカーと作る時でいうと、自分は性格的に独りよがりな方向にいってしまうんですよ。名義は二人の作品やけど、ビートによってはほとんど自分しか作ってないとかもけっこうあって(笑) でもバンドをやってみたいですね。HIPHOPバンド。
Seiji :
最後に、今後のリリースの情報など教えていただけますか?Yotaro : 『Tarostrumental』っていうインスト集を出そうと思ってて、いつもお世話になっている
Honey Recordsってところから出す予定ですね。12inchのLPで。そこに
KZY BOOST君とか沖縄に住んではる
Yasu-Pacinoさんと一緒に出した『Inner Journey』っていうLPに参加してくれてるサックス奏者の
gosekkyさんっていう方にも入ってもらったりとか。そういう個人的に気に入ってる作品が今年か来年にLPで出る予定です。あとはoSaam君とも一緒にやりたいと思ってて。
Seiji :
え!何かコラボされるんですか?Yotaro : 先週できたビートがめっちゃヤバくて。oSaam君が踊ったら絶対やばいなって直感的に思ったんですよ。正直、普段から「このビートはダンサーが踊れるな」とかは考えてないんですけど今回は不思議とイメージが湧いてきて。すぐにoSaam君に電話しました。ちょうど来週あたりで撮影に行く予定です。
Seiji :
ファンとしては待ちきれないです!oSaamさんはもうそのビートを聴かれたんですか?oSaam : まだ聴いてないねん。一緒に聴きたいなって言ってて。
Yotaro : このインスタライブ始まる前にもっかい聴き直してたんですけど、やっぱやばかったですね。
oSaam : めっちゃ気になるやん!(笑)
Seiji :
企画をやるということだけ知らされている状態なんですね(笑) ではYotaroさんの新しいビートでoSaamさんが踊っているのをシューティングしてSNSで映像をあげるという流れでしょうか?Yotaro : そうですね。で、音源の方のリリースの仕方をいろいろ考えてるんですけど、最近『大人の科学』っていう雑誌に載っていた5inchのバイナルをカッティングできるおもちゃをゲットしたんですよ。やからA面にその曲を入れて、B面に別の曲入れて5inchを作ろうと思ってます。それからbandcampとYoutubeの映像って感じで世に出せたらと思ってます。
Seiji :
こちらは映像作品、音源ともにマストチェックですね!という訳で、お時間が来てしまいました。本日のゲストはYotaroさん、そしてコメンテーターoSaamさんでした!ありがとうございました!Yotaro/oSaam : ありがとうございましたー!
[筆者あとがき]
聴く人を穏やかに包み込み、様々な景色へ連れていく上質なサウンド、そして(自身ではマイペースと話していたものの)常に説得力のある発信を続けるYotaro氏は、今のビートシーンにおいて非常に大きな存在といえる。インスタライブでのインタビューに応じる彼の姿は、ビートの穏やかさに通じる愛嬌やユーモアも感じさせる一方で、確固たる哲学を持っている印象も受けた。そして当インタビューの2週間後にはアップされた以下の映像作品。決して大袈裟な表現ではなく「奈良が生んだ二人の人間国宝」による化学反応がそこにはある。
Yotaro × oSaam - FLOATING MOVE
インタビュー/文 :
Seiji Horiguchi