NEWS最新情報

アメ村放送倶楽部 vol.8 YOUBOB

2020.12.16

アメ村放送倶楽部 vol.8 YOUBOB

イメージ1
ゲスト : YOUBOB
ホストMC : Seiji Horiguchi
※2020年7月17日(金)のインタビュー


Seiji : 今日のアメ村放送倶楽部、ゲストは絵描きのYOUBOBさんです!

YOUBOB : お願いします!

Seiji : YOUBOBさんがいらっしゃるのは、アトリエですか?後ろに作品が飾ってあるのが見えますね。

YOUBOB : 飾ってると言うか、倉庫がわりに部屋を使ってるだけやで(笑)

Seiji : (笑) 今日は絵描きであり、様々なデザインもこなし、そしてビートメイカーでもあるYOUBOBさんにゆっくりとお話を聞きたいと思います。
イメージ2

1, ノート100ページに、オリジナルキャラを100体描き上げた少年

Seiji : まずはYOUBOBさんのプロフィール紹介から。

様々な場所、イベントでの壁画制作や
ライブペインティングを数々こなし、 
自身の個展も精力的に開催しながら
表現を追求している大阪在住のアーティスト。
周囲の音楽アーティストのCDジャケット
アートワークなども数々手掛けるほか、2013年には
「アメリカ村街路灯アートプロジェクト」にも参加。
自身の所属するコミュニティの内外において
様々なプロジェクトに取り組んでいる。


YOUBOB : ありがとうございます。でも、こうやってゆっくり話を聞いてもらうことは普段ほとんどないかも。基本裏方で作業してる人間やし。

Seiji : 前半は絵描きの部分にフォーカスしてお話を聞けたらと思います。まずは絵との出会いについて教えてもらえますか?

YOUBOB : 描き始めとかは逆に覚えてないんよね。物心ついた時には描いてたんで。母親いわくボールペンでひたすら描いてたらしいです。だいたい3,4歳くらいって、お絵かきをする時期ってみんなあると思うんやけど、自分は今まで「描いてない時期」っていうのがなかった。ペンと紙があればどこでもできるし。描き続けてきました。
イメージ3
Seiji : 日常生活の中にナチュラルに描くという行為があったんですね。幼い時に描いてたものは覚えていますか?

YOUBOB : 模様とかをひたすら描いてたと思う。そう思うと今と変わってないよね。今のスタイルはもちろん描いていく中で確立してきたんですけど、模様を描くというのは小さい頃からずっとやってたな。自分、模様はずーっと描き続けれるんよね。

Seiji : 既に幼少期から今に通じるものがあったとは!キャラクターを描いたりとかはありましたか?漫画を真似するなど。

YOUBOB : うん。他の子が通るような漫画も描いたかな? でも何かを模写するのが好きじゃなくて。それやったら自分で思いついたキャラクターを描いた方が面白いって思ってたな。悟空を見て悟空を描くんやったら、違うものを描いた方が楽しいというか。ノートの1ページに一体、オリジナルのキャラを描くっていうチャレンジを100体くらいやったりしてた(笑)

Seiji : すごい!(笑) 自分も子どもの頃は落書きやお絵描きに夢中になった経験もありますが、基本的には何かを真似して描き殴る程度だった気がします。

YOUBOB : 性格的なものもあるよね。で、自分は小さい頃から転校が多かってんけど、知らない人達のコミュニティに入る時に、絵がコミュニケーションツールになった。極端な話、言葉がなくても伝えられるから。そういう意味で手っ取り早いアイテムやったな。絵で仲良くなっていくのが、自然なことだった。

Seiji : 具体的にどういう風に仲良くなるんですか?描いているところを見せたり?

YOUBOB : そうそう。俺がずっと描いてるのを見て「上手やね」って言ってくれたり、絵が上手な子が「俺も描いてる」って喋りかけてくれたり。そういう中で遊ぶようになっていった。どっちかというと、おとなし目の子が多いコミュニティやったな。

2, 超行動派の絵描きYOUBOB。メジャーになっていった「ライブペイント」という手法

イメージ4
Seiji : 絵に夢中だった少年時代のYOUBOBさんが今のようにHIPHOPシーンのアートと繋がっていったところが気になるんですが、音楽やHIPHOPとの出会いはいつ頃なんですか?

YOUBOB : HIPHOPとの出会いは遅くて。その前にSOULとかJAZZとか、いわゆるHIPHOPの元ネタになる音楽を聴いててんな。で、commonとかKanye Westとか有名なネタを使ってるHIPHOPアーティストの曲を聞いた時に「このフレーズってあの曲やん!」「これをこんな感じに変えて曲作るんや!」って衝撃受けたんです。で、どっちかというとHIPHOPのサウンド自体が好きで、歌が入ってる曲よりもインストのビートとかブレイクビーツとかをよく聞いてた。

Seiji : 今では、HIPHOPのパーティや野外フェスなどでもライブペイントをされたりもしていますが、がっつりアングラなHIPHOPのシーンと混じったきっかけはなんだったんでしょう?

YOUBOB : 仲良い人と遊んでたら今に至るって感じ(笑) 幼少の頃は大阪で暮らしてて高校の頃は地元の香川にいてたんやけど、二十歳くらいの時に大阪に戻ってきた。そこで一人で活動するには、何かしなあかんなと思って、スケッチブックをリュックに入れて一人でクラブに行って、会う人会う人に「自分こんなんやってるから、なんかやらせてください」って話してた。

Seiji : すごい!めちゃめちゃ行動派ですね!

YOUBOB : でもそれをしないと繋がっていけないし、実際に描かないと技術も上がらへんやん。いくら家で練習しても本番に勝るものはないなって考え方やったから。で、アメ村周辺でウロウロした時に出会った人のツテでクラブに徐々に出入りするようになっていった。で、そうなってくると「ライブペイントとかしてみない?」って言われる流れになっていくんよね。でも当時まだライブペイントっていう手法がメジャーじゃなくて。グラフィティライターが野外のイベントでコンパネを3枚くらい並べてスプレーで描くとかはあったけど、屋内のパーティでライブペイントをするとかはまだなかったと思う。でも、ライブペイントをやってみたのがきっかけでその派生でデザインをさせて頂いたりとか、色々やらせてもらって今に至るって感じっすね。

Seiji : 動いた分だけ次のステージに繋がっていったという経緯だったんですね。とても自然な流れですよね。

YOUBOB : でも周りの出会った人らがめっちゃ良い人やったっていうのが大きいよ。好きな音楽を求めていったらそういう人達に出会えたというか。みんな仲良くしてくれて、噂してくれて。ただライブペイントと普通に描くときの違いがやっぱりあって。ライブペイントは時間制限があるし、机に向かって鉛筆で描くのと壁に向かって絵の具で描くのとでは、描く姿勢やったり要領が全く違うんすよね。最初から上手く描けるわけじゃなかった。でも「失敗してなんぼっしょ」って思うタイプやから続けていった。失敗をビビってやらなかったらスキル伸びるのに時間かかるやん?きっと時間をかけるのが嫌やねんな(笑)

Seiji : はじめはうまくいかないこともあったんですね。緻密な模様の絵を、決まった時間の中で完成させるのは職人技だと思います。
イメージ5
YOUBOB : だいたい3,4時間ほどで描き上げられるようにはなったね。でもそういうのも、描き始めた時に失敗しまくった経験があるからなんすよ。悔しくて試行錯誤した結果というか。始めた当時の失敗が活きてるとは思う。

Seiji : 描き始めた頃から今まで意識し続けていることはありますか?

YOUBOB : ダサかろうが何だろうが、その時の自分の全力を常に見せてきたっていうのは大きいと思う。例えダサくてもそれがその時の自分の100%やからしょうがないやん?ごまかしたりもしてないし誰かのスタイルに寄せてるわけでもないし。 何かに寄せて描いて評価されることもあるかもしれんけど、それって「あれっぽくてかっこいい」っていう評価やん?そうじゃなくて俺っていう人間が描いた作品がどう良いかを評価してほしいと思う。

Seiji : 先ほどの幼少期の漫画の話にも通じるものがありますね。既存のキャラではなくオリジナルキャラを描くという。

YOUBOB : 性格やんな。これは子どもの頃から転々としてたっていうのが貴重な経験だったなって今になってよく思う。一個の地域とかコミュニティで暮らしてきた人も羨ましいと思うけど、自分のキャラクターも定まってない小さい頃からいろんな環境に放り込まれるっていう経験は大きいすね。「常識って一個じゃないな。っていうことはみんなにとっての『ヤバイ』とか『ダサい』も一個じゃないんやな」って小学生くらいの頃に思うようになった。それがこの性格に繋がってると思います。

リスナーからのコメント : 「YOUBOBさんが絵を描いている時にこだわっているポイントはなんですか?」

YOUBOB : 「考えずに描いたら何が出てくるんやろ」っていうのを追求することにこだわってます。世間的に俺は「柄を描く人」っていう認識が強いと思うんすよ。実際に柄物の作品が多いし。なぜかというと特定できる「何か」を描きたくなかったからなんですよ。よくライブペイント中に「これは何を描いてるんですか?」ってよく質問される。でも自分は「これ」って特定できない物を生み出したくて描いてるので、自分でも説明できない。ただ視覚的に美しかったり、気持ち良かったり、ずっと眺めてしまうようなもの、人間の感受性の根源みたいなところに訴えるようなものを描きたいと思ってます。自分の中の潜在的な部分というか。
イメージ6

3, 新たな挑戦。柄を描き続けたYOUBOBが次に描くもの

Seiji : 今年は緻密な模様の作品から一転して、ポップな雰囲気の作品だったり人型のキャラクターが作品の中に登場することが増えました。例えばmaple comicsとのコラボTシャツや、DJ DYさんのmixのジャケットのデザインなど。こちらは何か表現したいテーマのようなものはあったんでしょうか?
イメージ7
YOUBOB : これは心境の変化があって。若いときは自分の見てきたものも少ないから「自分の裸はなんやろ」って考え方やねんけど、年を経るごとに「色々やってみたい」っていう考え方になってきた。例えばデザインとか映像を見たりいろんな作家さんと会ったりする中で、自分も漫画とかイラストも描いてみたいってなった。抽象的な作品を描いてきたYOUBOBが、二次元の中に空間を描くという他のデザイナーや絵描きもやるような絵を描いたらどうなるんかなって。自分でもどうなるかわからないからワクワクしながら描いてましたね。結果ああいうスタイルになりました。

Seiji : 涼しげで、でもどこか謎めいていて素敵です。
イメージ8
YOUBOB : でもその中でも「何かわからないもの」っていうのに惹かれてはいると思う。例えばこのmapleとのコラボのTシャツのデザインも、空間を描いてはいるけどはっきり「何か」はわからんやん?そういう方にいっちゃいがちやんね(笑) そんなタイミングでmaple comicsやDY君から声をかけてもらって、思ったよりも早い段階でこうやって作品として世に出せました。最近はCOCORO BLANDともこのタッチのデザインでTシャツを出させてもらいました。

YOUBOB : これはもともと鎮座DOPENESSさん、Jambo Lacquer、チプルソの曲のPVを自分がオールアニメーションでやらせてもらってて。それも同じタッチなんですけど。そのPVがきっかけになってCOCOLO BRANDとTシャツを作ることになりました。

鎮座dopeness / Ice Coffee (feat. Jambo Lacquer & チプルソ)


Seiji : では、2020年はかなり忙しい日々を過ごされているんですね!

YOUBOB : アニメーションを作るとなると、物理的に作業量が多いので忙しくなるよね。何万枚って描かないとあかんから。だからこそのタッチのシンプルさっていうのもありますね。コスパのコントロールだったりデザイン的な試行錯誤も必要だと感じます。

Seiji : 「コスパのコントロール」というと?

YOUBOB : もちろん時間をかけて凝れば凝るほどハイスペックなアニメーションを作れるんやけど、それやと締め切りに間に合わないって事になってくるよね。やっぱり一個の仕事に対してどれくらいの時間配分とエネルギーで臨めるかっていうのも重要で。そこらへんのさじ加減で引き算をしていった結果、こういうシンプルなタッチに行き着きましたね。でも逆にいうと、余計な物を省いていくと残ったものは良いものだったり必要なものしか残ってないから「これで良かったんや」とも思える。引き算の美学やね。

4, 童心を忘れないビートメイカー、“OLDCHILD”としての顔

OLDCHILD SOUND CLOUDページ

Seiji : 続いてビートメイクに関してお聴きしたいんですが、ビートを作り始めたのはいつ頃からなんですか?

YOUBOB : MPCは22,3歳の頃に友達に「使ってないんやったら貸してや」ってノリで譲ってもらったのがきっかけです。今までの曲合わせたら1000曲くらいあると思う。めっちゃダサいのもあるけどね(笑)

Seiji : とにかく継続してやってみるという精神ですね!

YOUBOB : そうそう。絵もビートも一緒。絵に関しては、紙とか何枚使ってんって感じ。飯食うより絵描く方が好きやね。飯食うんやったらビート作ったり絵書いたり何かデザインしたりする方がおもろいねんな。

Seiji : ちなみに今手前の方にマシーンが映っていますね!機材は何を使われているんですか?
イメージ9
YOUBOB : 今は「MPC LIVE」っていうマシーンを使ってます。一昨年(2018年)の冬にゲットしたアイテムですね。その頃で既にビートを作り始めて10年くらい経ってたから、2020年に何かしらの音源を出したいなって思って去年(2019年)はひたすら作り続けてたね。

Seiji : 他に絵を描く事とビートを作る事で何か共通点ってあったりしますか?

YOUBOB : 絵とビートだけじゃなくクリエイトする事全般に言えるけど、継続する中で慣れていくっていうプロセスは一緒やと思う。例えば絵でいうと、鉛筆で描いてる時に誰かと喋っててもできるんよね。友達が家にいててもガンガンPCで仕事できるし会話しながら絵も描けるし。だから反復していく事によって感覚でクリエイトできるようになるっていうのは似てるかもしれない。

Seiji : そんなことができるようになるんですか!脳の違う部分が働いてるのかもしれないですね。

YOUBOB : そうやね。脳のある部分で会話してるけど別の部分で描いてるみたいな…うまく説明できないけど。でもみんなできるんちゃう?

Seiji : いやいや、少なくとも自分は文章を書きながら人と喋れないです…!(笑)

YOUBOB : まあ人それぞれか!(笑)

Seiji : 先ほど「2020年に出すかも」とおっしゃっていたOLDCHILD名義では初となる音源についてのお話を聞かせてもらえますか?

YOUBOB : まだ確実な日は決めてないです。絵描きとしての活動と一緒なんですけど「いついつ出します」っていうのにとらわれずに自分のペースで進めていきたいし、できた時に出すっていうくらいのテンションで。でもうちにラッパーを呼んでレコーディングもしてるので曲は揃ってきてます。一応「近日リリース」って感じですね。ジャケットも自分でデザインできるし、PVも自分で作れるんでやりたいですね。

Seiji : すごい。本当に一人の力で全てをやってしまえるんですね!

YOUBOB : それができるのか試してみたいっていうのが2020年の夏のテーマですね。「全部自分でできるしやってみたいな」と思って。でもこんなこと言ってても、めっちゃやばいビデオクリエイターがいたらそっちに頼むかもしれないっすけどね(笑) ええもんができて、より楽しかったらそっちが良いやんってなりますね。そういう意味で“OLDCHILD”っていう名義にしてるんで。

Seiji : この名前好きです!

YOUBOB : 思いつきでつけたんやけどね。ビートに関しては「子どもでいたい」っていう気持ちでいるね。これからも年は食っていく訳やけど、“古めの子ども”でいたいというか。遊びたいし、みんなにも楽しんでもらいたくて。俺の音楽も絵もPVもTシャツも、全部楽しんでみてほしいですね。絵ってなんとなく難しく考えてしまうというか、とっつきにくいって考える人も多いんやけど「めっちゃおもろいやん!」とか「何これ!」ってだけでも良いと思ってます。アカデミックな観点で考察するのは、家に帰ってから自分で考えれば良いし、その場でああだこうだ言うことではないですね。それはダンスも一緒じゃないですか?フィーリングで楽しめば良いわけやし。楽しむことを忘れて「ああしなきゃ。こうしなきゃ」って考えてしまうのは良くない。「こいつ楽しんでるなー」って言うのがずっと続くのが理想ですね。

Seiji : その通りですね。Village Campの時にライブペイントで描いていただいた『MUGEN』は、スタジオの入り口に飾ってあるんですが、やはりこの迫力に驚く人は多いですね。初めての方は絶対「この絵すご!」とおっしゃいます。

YOUBOB : 飾ってくれてありがとうございます!

Seiji : こちらこそありがとうございます。というわけでお時間がきました。本日のゲストはYOUBOBさんでした!ありがとうございました!
イメージ10
[筆者あとがき]
好きな事で生きていきたいと思う人に対して、人生は時に残酷だ。環境、素質、性格、不景気、予期せぬトラブル…様々な原因で、人は挫折する。
しかし幼少期から絵に没頭し、並々ならない行動力と好奇心でアクションを起こし続けるYOUBOB氏の姿勢にならうべきものは少なからずあるのではないだろうか。
この記事を通して、僕がインタビューの時に感じた彼のポジティブなバイブスが少しでも伝われば嬉しい。

インタビュー/文 : Seiji Horiguchi
  • お電話でのお問い合わせ

    06-6211-5838

    受付時間: 12:00-23:00

  • メールでのお問い合わせ

    受付時間: 24時間

    ※ 24時間対応ではありません