FRE$Hインタビュー・ENDRUN。前編では、ビートメイカー、プロデューサーが普段何をしているかを語ってもらった。
(前半記事はこちらから)
後編ではもう一歩踏み込み、プライベートの話、ENDRUNがリンクしている日本のプレイヤーの話やこれからの活動の予定など、気になる部分を存分に打ち明けてもらった。
ある時は自分との対話、ある時は自分との戦いで作業に打ち込まねばならない厳しさ。そういった生活のリアルな緊張感を時折のぞかせつつも、
終始リラックスした空気の中でインタビューは更に深い部分へと進んでいく。
3.ENDRUNの日常。加速する活動。
ビートメイクやプロデュースをしていて今まで何か変化したことはありますか。
DJの現場で、自分のビートをかけるようになりました。というのは、もともと時間の配分が難しくて。
DJってレコードのdigがメインで、「今週のパーティどうしよう」ってなると思うんですけど、
僕の場合、「ビートを作るためにサンプリングネタが欲しい」「ビート作ってたらスクラッチ鈍るしレコードあまり買えない…」という流れで。
レコードをかける事を諦めたんですよ。そしたら逆に自分のビートでDJするっていう発想が生まれて、やってみました。
制作と現場をリンクさせるという点を突き詰めると、最終的にそういうスタイルになりましたね。
クラブでの反応を見て、それをもとにスタジオ持って返ってビート作って。そういう理想の形にやっと持ってこれましたね。
去年、韓国にゲストとして呼ばれた時も自身のビートでDJを?
そうですね。自分のビートだけでDJをしました。動画も撮ってもらって。
著作権の関係もあってYoutubeにはあげられなかったみたいなんですけど(しばらくPCのデータを探す) あ、これですね。
(DJブースの周りは人がひしめいている。踊る人、首を振る人、DJ中のENDRUNの姿を覗く人など)
人がパンパンですね!イベントはどうでしたか?
韓国の人は反応をしっかり返してくれるからいいですね。シャイじゃないというか。
ダンスを見てる時も、そこに入り込んでいくくらいの見方をしていました。
Remixかけた時とかは、知ってるバースのペラ(アカペラ)があったらサイドMCの人たちがかぶせて歌ってくれたりもしてくれましたね。本当にいい経験できました。
(ビートの)クオリティを上げるという話ではまだまだなんですけど。やることは見えましたね。
では、日常生活レベルの話を。普段、朝は何時くらいに起きますか?
朝はわりと早いです。7:30とか8:00までには起きますね。子どもが起きたら起きるみたいな。
最近、起きてすぐタンテ指差してレコードかけてくれ、みたいに言うんですけど、絶対レコード棚から持ってくるのがWarren GのThis D.J.なんですよ。(笑)
Warren G / This D.J.
仕事に行く時は8:30くらいに家を出ますね。で、スタジオに来て作業する日は10:00くらいにここについて20時くらいまで作業してますね。
今は新しいビートテープを作ってるんですけど、それはビートメイカーでセッションした音源だけで作ってて。
Yotaroとか、Buda君(Budamunk)とかが、こっちに遊びに来た時に作ったやつです。
作品を作ろうと意気込んで取り組んだというよりも、自然に作ってたらできたからそれを作品にまとめるって感じですね。
Yotaro’s SoundcloudBudamunk’s Soundcloudダンサーにとっては、HONGOUさんがショーの音源でENDRUNさんのビートを用いたことで、爆発的に認知が広まりました。HEX BEX + sucreamgoodman@SODEEP 20th Anniversary
(しばらく、HONGOUとENDRUNの会話になる)
HONGOU : あれいつやったっけ?そんなに前でもないやんな?
ENDRUN : 最初はレゲエのネタのやつ使ってくれましたよね。
HONGOU : あ、そうそう!夏に和歌山のバグース(目の前が海で、海の家のような開放感のあるクラブ)で踊るってなったときに探しててんけど、これがバッチリはまってんな。「このゆるさや!」って。
ENDRUN : 良かったです。
HONGOU : あの時、音決め一瞬で決まったからね。(笑) もともとはKUCHA君が、ENDRUNのMIXを買ってん。それを聞かせてくれて。
ENDRUN : ありがたいです。セッションが出来たのは嬉しいですね。機会があったら、もっと生でスクラッチ入れたりしてライブセッションとかできたらいいですけどね。
HONGOU : せやな。なかなかないよな。
ENDRUN : 別のエレメントの人と、一つの作品を作ることってないと思うんで。スケーターも映像作るときに音源として提供するだけでそこから先はないじゃないですか。そういうもっといろいろができたらいいなとは思いますね。
今年の活動の予定は何か決まっていますか?
今年は3月にILLNANDES (K-FLASH) と北海道に行きます。
ILLNANDES & ENDRUN “CZN’PASS” feat. ISSUGI (Official Video)
それからJJJとライブに行くのが何箇所か決まってます。岐阜、金沢とか。
JJJは最初会った時に、めっちゃfeelしてそこから仲良くしてますね。
JJJ’s Soundcloud 最初のアルバムのKEEP YA HEAD UPのリリースパーティに、JJJが遊びに来たんですよ。バイブスの色が一緒というか、音のmixの方向性とかも近いですね。
東京のDOWN NORTH CAMPとかDOGEARの人たちがよくしてくれたおかげで、今のコネクションもできたと思います。
K-FLASH君(a.k.a ILLNANDES)もそういう関係で結構東京のインタビューとかも受けてて。確か2月のOllieのインタビューも受けてましたね。
Ollieに乗ったからどうなるとかはないですけど、プロモーションとしては、ありがたいですね。
あと、MONJUのMr.PUGのフリー音源が2月11日に出るんですけど、そこにも一曲ビートを提供しています。ビデオも撮る予定です。
(Mr.PUGのフリーEP「DOPE or NOPE」は以下から視聴・ダウンロード可能)
DOPE or NOPE かなり忙しいですね!いや、どちらかというと去年作ったものが世に出ていくって感じですね。
そろそろマネージャーが必要なのでは?んー、確かに影武者?的な存在はいるのかもしれないですね。
でも生活のバランス的にOKやったらいいと思ってますね。
自分から発信できて一番遠くに投げれる手段はネットしかないので、海外向けに出していこうと思ってます。
こもってて、できることってそういう事なんですよね。Yotaroとかも、奈良にいてますけどそういうところでしっかり勝負できてますよね。
何かシーンに対して変わってほしいとか、変えていきたいと思うことはありますか?ラッパーと曲を作るというのは、テーマがないとできないじゃないですか。一枚まるまるでやりたいと思う人は何人かいますけど、やりたいと思える人がいないですね。
だからスケジュールをまとめていって、パッケージするには自発的に動ける人とじゃないと難しいですね。
K-FLASH君はそういう人なんでやりやすいですけど。だいたいの期日も守る人なんで。そういうのがルーズだと難しくなります。
今はスピード感も大事だと思うので。新しいアルバムがないと、実力があっても外に出れないので、そこは変えていくべきです。
いけてるラッパーほど遊びも自由度も高いですしね。
でも金に変えたり、形にしていくっていう意味で、そこを変えれる何かがないかなってずっと考えてます。
なるほど。
大阪で最高のラッパーであることは間違いないんですが、まだ、茂千代君がトップにいるのは、ある意味よくないと思うんですよ。
いてるといえばいっぱいいるんですが、もっとドープなMCでそこに食らいついていけるラッパーが出てくるべきですね。
クルーだったら力あるけど、ソロやったらそのレベルにいってない人も多いと思うんで。
なるほど。では「KEEP YA HEAD UP」「ONEWAY」に続く3枚目のアルバムは今の所考えてないということでしょうか?
そうですね。ビートテープばっかり出そうと思ってます。それが結果的に仕事に繋がればいいと思って。
今は(Apple MusicやSound Cloudなど) ストリーミングが主流なので、まずは広めるところですね。
…逆に僕、どうやっていったらいいか、とかありますか?
ははは。こっちからそんなアドバイスなんかできないです!でもこれだけ動いてる方ですし、ビートは文句なしでかっこいいので、あとはみんな聞いてもらうだけだと思います。その前にシンプルに1ファンとして、ビートテープがもっと出ることが嬉しいです。
まじっすか。ありがとうございます。
高校時代、周りの影響でキャリアをスタートし、今では日本にいながらも海外のヘッズにまでその名が轟くほどのビートメイカーとして大成している彼。
たゆまぬ努力と、計り知れない音楽への愛情が今回のインタビューでうかがえた。
プロデューサーという仕事は、プロジェクトを後ろから支える存在であり、楽曲やビデオには映らないため認知されにくい。
しかし彼らの努力なしには今までのJapanese HIPHOPの繁栄もありえなかった。
楽曲の後ろに時々書いてある「prod. by ◯◯◯◯」のクレジットに目を向けると曲の聞こえ方も変わるのではないだろうか。
新しいスタジオを設立し、新体制が整ってまだ一ヶ月ほどというENDRUN。これから更に加速する動きにも注目である。
ENDRUNの作品やinformationはこちらから。
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2018/3/3
文 : Seiji Horiguchi
Seiji Horiguchi
フリーライター。
新聞記者になることを夢見る学生時代を経て、気づけばアメ村に。関西を中心に、アーティスト(ダンサー/ラッパー/シンガー/フォトグラファー/ヘアアーティスト stc…)のプロフィール作成やインタビュー記事の作成を行っている。
現在の主な執筆活動としては
・FRESH DANCE STUDIOインタビューシリーズ
・カジカジ、連載「HAKAH’S PROCESS」
・その他パーティレポ、ダンスチーム紹介文、音楽作品の紹介
などが挙げられる。
大阪のストリートカルチャーにアンテナを張りつつアンダーグラウンドの「かっこいい」を広めるべく日々執筆中。Seiji Horiguchi Instagramご依頼はこちらまで。
sage.the.nara@gmail.com