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鶴橋の知られざる絶品お好み焼き-[風月]市場店-

2023.01.29

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FRESH DANCE STUDIOからお送りしているこの「FUTURE PACK」では、淡路島に移転した[SIMBA CURRY]から始まり、神戸の餃子や堀江のピッツァ、大正のスパイスカレーなど、各地のグルメを不定期で紹介してきた。今回紹介するのは...ズバリ鶴橋のお好み焼きだ。味のレポートを務めるのはFRESH DANCE STUDIOスタッフのMaaYa。「近所のお好み焼きをUber Eatsで頼んで家でよく食べてます」と話す粉物好きな彼女とともに鶴橋を目指す。


鶴橋は昭和の光景が残る昔ながらの下町。といってもJR 環状線、近鉄、Osaka Metroが交差するなどアクセスは非常に良い。われわれ取材班は近鉄[大阪難波駅]から奈良ゆきに乗って鶴橋へ。所要時間は5分ほど。思っていたよりも早い!
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駅から降り立つと、鶴橋ならではの商店街の迷宮がお出迎え。婦人服のブティック、Tシャツ屋、肉屋に八百屋、それに韓流グッズのお店がランダムに立ち並ぶ。この雑多でディープな空気感こそ鶴橋の代名詞ではないだろうか。シャッターが閉まりきったテナントもかなり多く、大きい道から一本外れるだけでかなり薄暗い路地に入ってしまう。地図がないと迷ってしまいそうだ。


順番が前後してしまったが、今回のお目当てのお店は、お好み焼き屋の[風月] 市場店。「お好み焼き・風月」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、チェーンの[鶴橋風月]だが、今回われわれが訪れる[風月]は、[鶴橋風月]とは別の系列だ(とはいえ、ネットの情報ではどうやらこちらの[風月]から大手チェーンの方の[鶴橋風月]がのれん分けしたという話もあるので、完全に別物というわけでもないのかも?)。
鶴橋には多くのお好み焼きや鉄板焼き屋がある。しかし「鶴橋でお好み焼き食べるなら[風月]!」と断言する人もいたりと、小ぶりなお店ながら根強い人気を誇っている。その人気の秘密はどこにあるのだろう?Googleマップを頼りに商店街を進み、お店にたどり着いた取材班を出迎えたのは"老舗オーラ"たっぷりの外観だった。
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赤バックに黄色の文字で店名が書かれた看板。店先にどっかと腰をすえた巨大な室外機。アサヒスーパードライののぼり。既に隠れた名店の風格を醸し出している。いつスーツ姿の松重豊が訪れてもおかしくないだろう。そんななか、のれんだけが洗い立てのような白さを保持している(本当に洗い立てなのかもしれない)。入り口の脇にはパイプ椅子が2脚。「店の前で、ある程度の時間並ぶ人がいる」ということだろうか。図らずも期待が高まる…。ネットの情報によると開店時間は午前11時半。われわれが到着したのもちょうど11時半。いざ、のれんをくぐって店内へ。
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店内は4人席が4つほど。既に1組が席についている。入り口に近い席に着座し、壁に貼られたメニューを見ると、お好み焼きと焼きそば。あとは一品ものが何品か並ぶのみ。とても潔い…!少ない品数で勝負できるのも、それらの味に絶大な信頼を寄せられているからかもしれない。少し迷ってオーソドックスな豚玉と、逆にたっぷり具の乗ったミックス玉、それから焼きそば(大)を注文。

MaaYa : 3人で3品ってことは、1人だいたい1品食べる計算ですよね?お昼からこんなに食べれるかな…。

店主とみえる初老の店員がやってきて鉄板に牛脂で油をひく。かなり寡黙なタイプだ。鉄板があたたまるのを見計らって、お好み焼きの生地が入ったシルバーのカップを持ってくる。銀に輝くカップに生地がたっぷり入るだけで、不思議と美味しそうに見えてしまう。
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カップになみなみ入った生地を、寡黙な店主が寡黙に混ぜ始める。スプーンを使ってさっくりと切るように混ぜ、カップの中のキャベツ、生地、豚肉、卵を少しずつ絡み合わせていく。その動作には迷いや無駄がなく、カップから溢れたキャベツが鉄板の上にポロポロと落ちても一切動じない。そしてまだ完全には混ざり合っていない状態で、素早く生地を鉄板に流しこむ。取材班が「お好み焼きの生地ってしっかり混ぜるイメージがあるよなあ」と誰に言うともなく感想を漏らす。すると店主が「混ぜすぎると、キャベツから水が出るから混ぜすぎない方がええんよ」と一言。「あーなるほど!」とみんなで相槌を打ちつつも「意外と喋ってくれた…」と少しだけ面食らう。
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豚玉に続いてミックス玉も素早く(かつキャベツから水が出ない程度に)混ぜ合わせてから、鉄板に乗せて形を整える。その時間わずか3~5分ほどだろうか。とにかく素早い。ベテランの腕が生み出すルーティンだ。鉄板に2つの「玉」を作り上げると店主は足早に他の卓へ。しばらく片面を焼く時間だ。時刻は正午。日曜のお昼時ということで、海外の観光客から常連のおじさんまでひっきりなしにカラカラと引き戸を開けて入ってくる。店はあっという間に満席になる。

MaaYa : ほんまに良い匂いですね!早く食べたいです…!
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5,6分ほどで店主が戻ってきて、生地をひっくり返して反対の面を焼く…と思いきや。生地の上に鰹節をたっぷり乗せた!お好み焼きのセオリーとして、両面を焼き終え、ソースやマヨネーズをかけた上から鰹節を乗せるのが普通だと思っていた僕にとっては新鮮すぎる光景だった。これ、順番あってる...?
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われわれが「片面を焼いてるところで鰹節乗せるんや…」と、これも独り言のように呟くと、店主が「かつお節を先に乗せることで旨味が出るからね」と再びアンサー。「へー!そういうことなんですね!」と、理にかなった手順に深く頷きながらも「けっこう喋ってくれる…」と次第に嬉しくなってしまう(初見で勝手に「寡黙な店主」と決めつけてしまって申し訳ない...)。“隠れた名店”は味の秘訣を隠すものと思っていたが、ここの店主は情報を惜しげなく共有してくれるタイプだった。と同時に、工夫を重ねられた味への期待もさらに高まる。

そんな“鰹節先乗せスタイル”のお好み焼きを焼いている間に、焼きそばに取り掛かる店主。豚肉とイカを鉄板の上で素早く炒め、中太麺と大盛りのキャベツをどっさり乗せる。その中にラードもちらっと見えた。ここからはあっという間だった。テーブルの上に常備されているソースを麺の上から回しかけ(極上の音と匂いに包まれた…!!)コテを使ってクイックに混ぜ合わせる。サラサラしたソースとラードと混ざり合いながら、光沢をまとう焼きそば。美しい...。
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先に焼き始めたお好み焼きよりも、焼きそばの方が先に完成。早速いただこう。
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MaaYa : 美味しい!あっさりしてて食べやすいですよ!

粘度低めでサラサラとした印象の仕上げのソース。たしかにソースは確固たる存在感を放っているけど、そこまでしつこくなくて食べやすい。ラードの適度な油分とソースがモチモチとした麺に絡みついてスルスルと食べられる。麺を混ぜているときは「けっこうな量だな…」と身構えたけど、取材班3人で夢中になって頬張っているうちにどんどん減っていく。

MaaYa : 一瞬でなくなりますね!噛む回数も少ないし、もはや飲み物ですこれ!(笑)

続いていよいよお好み焼きの仕上げへ。ちょうど僕らが焼きそばを食べ終わったくらいで再び我々の卓を訪れる店主。慣れた手つきでひっくり返すと綺麗な焼き目。お好み焼きが焼けるベストな時間が体内時計に刻み込まれているようだ。大きいハケを使って、まずは真っ白なマヨネーズをたっぷり。
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さらにその上からどろっとしたソースをさらにたっぷり乗せる。そしてそのマヨネーズとソースを絶妙なバランスで混ぜ合わせる。その2つの色が混ざり合い、アート性すら感じる文様に。
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4分割したお好み焼きを自分の皿に取り分け、そのまま頬張る…の前にMaaYaさんパシャリ。ここの撮れ高は逃せない。
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熱々のお好み焼き。いよいよいただきます。
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再び目を見開くMaaYaちゃん。「んー!これはほんまにおいしいです!! めっちゃフワフワ!」

確かにおいしい!店主のいうように、確かに生地の段階で混ぜ合わせすぎないことでキャベツの食感が活きていて、程よくシャキッとしている。そして個人的に、何よりソースとマヨネーズのうまさが衝撃的だった!旨味たっぷりの二層の味が食べている最中も食欲をそそり、また次の一口に誘う。空気をたっぷり含んでいるので、見た目のかさの割にすぐに食べてしまう。確かにこれは隠れた名店だ。はじめにMaaYaちゃんが危惧した「3人で3品」の懸念は全く問題なかった。ぺろっと食べてしまった。大満足。
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おいしさの秘訣については気さくに教えてくれるけど、かといってそれ以上の会話はしないという店主のちょうどいい距離感の接客も込みで、クセになるお店だった。また来たい...!
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さて、[風月]を出た一行は、このまま帰るのももったいないので、さらに南にくだり、鶴橋一の観光スポットである生野コリアタウンを目指すことに。
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やはり鶴橋。韓流グッズやK-POPアイドルのグッズ、トレンドの韓国カフェやサムギョプサルのお店など、コリアタウンへの道中でも韓国の風を感じることができる。商店街の入口に到着。日曜ということもあり、人でごった返している!東京でいえば竹下通り的な雰囲気だ。歴史のある街なので、新旧さまざまなお店が軒を連ねている。
チーズハットグやチヂミ、キンパ、マカロンといった食べ歩きできる一品を扱っている屋台も多い。せっかく来たのだから何か食べたかったが、ついさっきお好み焼きと焼きそばで腹を満たしたばかりのわれわれは、手を出すことができない。そこで、コリアタウンに詳しい知人に教えてもらった[LEE MART]を目指すことに。メイドイン韓国のカップ麺、お菓子、お酒はもちろん、ハイクオリティ&ロープライスで知られる韓国コスメや雑貨も扱っている3階建てのスーパーだ。
商店街の入り口から(かなりの人混みのなか)15分ほど歩くと[LEE MART]に到着。店内にはBTSが流れ、目に入るものは見事に韓国の商品ばかり。1階が食料品売り場、2階が雑貨、そして3階がコスメ売り場になっていて、さらに1回500円のプリクラ機もある。MaaYaちゃんは韓国の化粧品会社「L&P Cosmetic」が展開するシートマスク・パック「MEDIHEAL」をゲット。様々な種類があり、肌の性質や悩みに合わせて選ぶことができるという。

MaaYa : めっちゃ種類あるんですけど、コラーゲンがたっぷり入ってるやつにしました!
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続いて訪れたのは、キムチの量り売り。コリアタウンの商店街のいたるところにキムチ屋があって、それぞれ長蛇の列ができている。どの店がいいかは、見た目だけで吟味することができなかったけど、数あるキムチ屋のなかでも、メニューがすべてマジックペンで殴り書きされていて、特に雰囲気が良いキムチ屋の列に並ぶことに。店先には何種類ものキムチがずらりと並べられている。
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はくさい、小松菜、きゅうり、大根といったオーソドックスな野菜のキムチはもちろん、オクラやトマトのキムチもあった。いくつもの種類のキムチを眺めながら並んでいると、店員のお姉さんが大根の細切りのキムチをつまようじに刺して「はい、どぞー!」と試食させてくれた。食べてみると色はかなり赤いけど不思議とまったく辛くない。むしろ甘みや旨みをしっかり感じる。あとからピリっと辛みが追いついてくるけど、辛いものが苦手な自分でも難なく食べられた。
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そうこうしているうちに列が進んで自分たちの番がきてしまった。周りは人も多くてワイワイと賑やかなので、多少声のボリュームをあげて店員とやりとりする必要がある。「はくさいキムチ300円分ください!」「300円!?お兄ちゃん!それやとかなり少ないで!」「ええと、じゃあ500円分で!」「はーい!ありがとうね~!」手際よく作業しながら勢いよく接客してくれる売り場のおじさんとのやりとりも、軽快で楽しい(もちろん押し売りはされないのでご安心を)。結局自分は、はくさい、長芋、小松菜のキムチをそれぞれ500円ずつ購入。なかなかの重さだ…!
韓国コスメ、キムチのお土産を手に鶴橋駅へ戻る。帰り道、例の迷宮商店街の一角にフルーツ飴の屋台を発見。少し胃袋の隙間も空いてきたので、一ついただくことに。MaaYaちゃん、いちごとシャインマスカットの飴を頬張る。
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MaaYa : あ、ちゃんと中身のフルーツもみずみずしくておいしいです! 鶴橋、また来たいですね!!


戦後から続く商店街の独特な活気に、昨今のK-POPや韓流ドラマの爆発的なブームが追い風となり、ほかにはないエネルギーが渦巻く鶴橋の街。(冒頭にも書いたように)心斎橋からすぐアクセスできるのにも関わらず、ちょっとした海外旅行のような体験ができるこの街には、まだまだ隠れた名所がある。今回紹介した[風月]市場店をはじめ、ぜひ足を伸ばしてほしい。近鉄の駅のホーム一体に漂う焼き肉の香りと、お土産のキムチに包まれながら、僕の食欲はまた刺激されるのだった。
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text : Seiji Horiguchi


◆[風月]市場店
・アクセス : 大阪府大阪市生野区鶴橋2丁目5-24
・営業時間 : 11:30-20:00(木曜休)
◆[LEE MART]
・アクセス : 大阪府大阪市生野区桃谷4丁目6-13
・営業時間 :10:00-19:00
※営業時間や定休日は変更になる可能性があります。
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