aoi takaseインタビュー
ガールズヒップホップを軸として、その時々の新しい音楽やダンス、イケてるものへのアンテナを鋭く張りながら、価値観やファッションをアップデートしてきたaoi takase。レゲエシーンとも結びつきが強く、常に境目を越えたプレイヤーとしてカリスマ性を発揮してきた。そんな彼女は、コロナ禍を経てサーフィンやヨガにも目覚めたという。それらはどんな発見や閃きを彼女にもたらしたのだろう。自然と街を往復するaoi takaseのライフスタイルに迫る。
aoiさんは、いつからサーフィンを始めたんですか?
aoi : もともとお父さんがサーファーで、自分も小さい頃からよく海に連れて行ってもらったりしていて。でも自分がやり始めたのは4年くらい前かな。はじめは友達とやってみるくらいだったのが、コロナを機に「自然豊かな場所に行きたい」と思って本格的にサーフィンをするようになりました。今は、週に何日も行くくらいやね!どういうところに魅力を感じましたか?
aoi : まず他のサーファーとコミュニケーションをダイレクトに取るところかなー。今ってSNS社会で、インスタが自分を紹介する名刺がわりになってるやん?その人とつながる為には、まずインスタ交換するとか。でもSNSってその人の良い面しか写ってなかったりするし、実際に接するまでほんまの人柄は分からない。サーフィンは海の中で完全にスマホも何もない状態でコミュニケーションをとるから、ダイレクトに人柄が伝わるのが面白い!
確かに!みんな身一つという条件ですもんね。
aoi : あとサーフィンってルールというかマナーがしっかり決まっていて。例えば1回の波に、2人以上が乗るのはマナー違反なんです。他の人が乗ってる波に乗ろうとするとけっこう怒られるんよ。あと、場所によっては地元のコミュニティがあって一見さんは入れないところもあったり。でもそういうマナーって始めたての頃は知らないし、実際そこに行ってみないと分からんやん?自分もプロのサーファーの方と知り合って初めて色々教えてもらったな~。face to faceのコミュニケーションが必須なのが、今の時代逆に新鮮でした! それから、サンライズで1日が始まってサンセットで終わるとか、時の流れを五感で感じられるのも最高です。
サーフィンを本格的にやるなかで内面的な変化はありましたか?
aoi : 「パワーチャージ」っていうんかな?水平線を眺めながら自分と向き合って気持ちを整理する時間が心地よかったりする。そこから良い波を待つことと、人生において成り行きに身を任せることを重ねてみたり!「人生波待ち」って歌詞でもよく言うやんな?(笑)
釣りの曲とかでもよく聞きます(笑) サーフィンに行く時の1日の流れってどんな感じですか?
aoi : 毎日バラバラやけど、例えばある日は、朝6:30くらいに起きて天気良かったら屋上で30分から1時間くらいヨガやって。午前中にサーフィン行って昼前くらいに帰ってくる。そこから、自分がディレクションしてるプロジェクトの制作とか、アクセサリー作りとか、ダンスのレッスンとか。午前中に自然の中で自分の為に時間を使って、午後に街に戻って仕事をするって感じかも!
自分の為に時間を使うことは本当に大事ですね。ヨガを始めたきっかけは?
aoi : これも少し前に、ヨガをやってる友達からマインドフルネスのイベントに誘われて、初めて野外でヨガをやったんです。その友達のキューイング(動作を指導する声かけ)が上手だったのもあると思うけど、とにかくその時の感覚が気持ち良くて、その後もずっと忘れられなかったんですよね。それで自分でも勉強して資格を取ってみようと思ったんです。RYTのヨガアライアンスも取得しました。
たしかヨガは仏教における悟りを開くための修行の一環ですよね。それこそ内面に変化が起きそうです。
aoi : 自分の内側を見つめたり、些細なことに感謝したりするなかで、例えば今まで悲しかったり腹が立ったりしていたことも「なんでこうなったんやろ」って向き合えたりできて。そうやって内面と向き合うことが心地いいというか、自分に合ってるんだと思う。ヨガの思想を勉強できたのは本当に良かったね。
ナチュラルにサーフィンとヨガにたどり着いて、しかもそれらが考え方とか思想にも影響を与えているのが面白いですね。
aoi : たしかに共通するものは多い気がする!例えばサーフィンでいうと、波の満ち引きって月の満ち欠けに影響を受けるんやけど、そういうのを知ってから地球だったり天体を意識するようになったり。それがまたヨガの考え方にも似ていて。ヨガも宇宙と自分がつながる感覚を大事にしています。そこから派生して、女性の月経だったり出産も月の満ち欠けに影響を受けるという「月経学」にも興味が出てきてます。もっと早くから勉強すれば良かったなー!(笑)
8月に和歌山の[Bagus]で開催される[SOUL FLOWER ISLAND 2022]でもaoiさんがヨガをレクチャーされると聞きました。
aoi : 絵描きのYOSSY(SOUL FLOWER)君の個展なんですけど、去年からダンスショーとヨガをさせてもらってます。自分の生徒とかって世代が違うし、当たり前やけど感覚も違うじゃないですか。でもいわゆる「心の豊かさ」につながることは積極的にシェアしていきたい。ヨガとは違うけど、普段一緒にサーフィンに行くダンサー友達も、良い波が来なかったら「しゃーないか!」って気持ちを切り替えて、砂浜で好きな音楽流して踊り合ったりするんですよ。
そういう風に「鏡とかスピーカーが揃ってるスタジオじゃなくてもダンスはできる」ってこととかもシェアしていきたい。なんか、もっと自由で良いと思うんですよ!私も些細なきっかけでサーフィンとヨガに出会って、それを機に考え方も変わったので、自分もまた誰かに些細なきっかけを作れたら良いなと思います。
自身の近況について語るaoiさんの口調は、スッキリしていて迷いがない。話していて心地良さを感じるくらいだ。
僕個人としては、「午前中は自分の為に時間を使う」というところが印象的だった。古代ギリシアで哲学が生まれて発達したのは、「哲学者たちが時間を持て余していたから」という説がある。ほんの数十分でも自然に身を委ねたり自分と対話することが、人生のヒントを見つけたり、心を豊かにする第一歩なのかもしれない。ヨガ、サーフィン、瞑想、アーシング、キャンプ...。テレビやスマホと距離をとって自分と対話する方法は色々とありそうだ。普段はスタジオにいることがかなり多いけど、この夏は積極的に日光を浴びたい。
◆aoi takase プロフィールは
こちら◆取材/文 : Seiji Horiguchi