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Manager's Essay vol.3

2022.06.14

Manager‘s Essay vol.3

「HEX BEX×sucreamgoodman、ODD優勝から"HANERU WORKS"立ち上げまでの舞台裏」

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「2022年2月27日に行われましたOSAKA DANCE DELIGHT vol.37。本日の優勝チームは!!!

………おめでとう。HEX BEX×sucreamgoodman!!!!

FRESHの待合には、一緒にインスタライブ上の結果発表を眺めているダンサーが7,8人。それぞれ「ぉおー!!」と感嘆の声を漏らしたり「ほらー!やっぱりな!」と、嬉しそうな声をあげたりしている。エントリーした時から、周りから優勝候補と言われてはきたけど、MC TATSUYAさんの結果発表の声を聞いた瞬間、肩の力が一気にとれて、深いため息をついた。そこで初めて自分が緊張していたことに気づく。

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話は去年に遡る。2021年6月27日。

HONGOUさんが「JAPAN DANCE DELIGHTvol.27 西日本大会」のジャッジの一人に選ばれた。他には、JAMのHiroさん、DAIさん、LEEさん、KAZUKIYOさん。いつにも増して濃いダンサーがジャッジに選ばれたことは、関西のダンスシーンをざわつかせた。特にHONGOUさんがディライトのジャッジとして参加することはかなり珍しい。これによってエントリーするHIPHOPのチームが増えたというから、改めてその影響力の大きさに驚かされる。

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ディライト当日。結果発表も全て終わり、事務所に帰ってきたHONGOUさんの第一声。

HIPHOPのチーム、全滅やったわ…

この日は全11チームが本戦行きのチケットを手にしていた。

・LOW FAT MILK.T-PAC(LOCKING/兵庫)
・Body Carnival(BREAKING/京都)
・CENTRAL(HOUSE/愛知)
・sangría(WAACKING/大阪)
・PERMANENT(OLD SKOOL/和歌山)
・Nuzzle(JAZZ/大阪・三重)
・RH_lockers(LOCKING/大阪)
・EXmatic.(POPPING/大阪・沖縄)
・Nifty(FREESTYLE JAZZ/大阪)
・TAKASAKI FUNK CLUB(LOCKING/群馬)
・soil(HOUSE/大阪)
(「JDD西日本大会」には、順位はつかない)

見事に「HIPHOP」だけが上がっていない…。

もちろんコンテストやバトルは“水もの”だ。ジャッジが変われば結果も変わる。それでもHONGOUさんは自分と同じHIPHOPのチームが上がらなかった悔しさをあらわにしていた。これはダンスディライトのHPでの公式のコメントでも正直に述べられていた。

こんなこと書くまでもないが、もちろんHONGOUさんもほかのジャッジの方々も、忖度(そんたく)なしで自分の感覚に素直に審査した結果だった。ただ、HONGOUさんがHIPHOPの目線でかっこいいと思って高得点をつけていても、他のジャッジからも点を獲得できなければ入賞はできない。ジャッジ全員を納得させる難しさと、入賞したチームのバランスの良さがうかがえる。

「上がると思ったチームもあったんやけどね」

帰り際までHONGOUさんは悔しそうだった。

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その少しあとのこと。「ヘックスシューでディライト出ようと思ってる」と打ち明けられた時、僕は驚いて声が出た。

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HEX BEX×sucreamgoodman
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この2チームの魅力について語ろうとすると、どうしても僕自身のヘッズとしての主観が邪魔してしまう。「やばいもんはやばい。まず生で踊り見て!」と言いたくなる。でも、この文章がエッセイで、僕がライターであるならば、彼らの魅力や経歴を客観的に書く必要がある。頑張ってみる。

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HEX BEXは2005年、sucreamgoodmanは2006年に、それぞれOSAKA DANCE DELIGHTで優勝に輝き、それまでコンテストではなかなか光の当たらなかったアンダーグラウンドHIPHOPのスタイルでも、本気でやれば結果を出せるということを証明した。しかもその後も勢いは止まらず、精力的な活動を経て今日までプロップスを維持し続けている。

例えばHEX BEXは、東のアンダーグラウンドHIPHOP代表格「XXX-LARGE」と共鳴してDVDを制作。それを機に日本各地を巡るツアーを敢行したし、sucreamgoodmanもNYでニュースクールHIPHOPのオリジネーターたちとリンクしてセッションを実現して同じくDVDを制作して日本を飛び回った。そうやってダンスを通して全国のプレイヤーと繋がり、数々のイベントを作り出してきたのがこの2チームの大きな活動の1つだ。

そして同時に、彼らには日本各地から大阪にダンサーが集まるほどの引力がある(何を隠そう自分もoSaamさんのレッスンを受けに大阪に出てきた人間の一人だ)。彼らが作ってきた一つ一つの場所や時間が、また別のプロジェクトに繋がり、同時に若いダンサーのモチベーションになってきたことも考えれば、日本のダンスシーンにおける功績はあまりに大きい。



ここで、僕の主観を(少しだけ)書くことを許されるなら、彼らの魅力を「戦隊ヒーロー」に例えたい。それぞれカラーがかぶることもなく、1人ひとり武器や必殺技がある。ショーで見られるアグレッシブなスタイルの振りも、何か見えない敵と「戦う」感じに映る。何より“チームであること”そして“チームで活動すること”のかっこよさをひしひしと感じる。シルエットがビタビタに揃っているわけじゃないのに、6人が合わさった時の一体感や迫力が、大波のように押し寄せてくる。
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話を戻す。

昨年6月にディライト西日本予選のジャッジを経て、「自分たちがもっかい挑戦したい」と考えたHONGOUさんは、その後メンバー1人ひとりと話した。その会話がどんなものだったかは僕は知らないが、とにかく満場一致で出場が決まった。それぞれに仕事があり、家族も増え、かつてディライトで優勝した時とは環境もコンディションも変わっている。それでも6人全員が「やる」と決めたのだった。ODDで優勝を決めてからおよそ15年。再び挑戦する彼らの背中を見て、下の世代が心を動かされないはずがない。ADHIPがHPで公開しているエントリーリストに載った「HEX BEX×sucreamgoodman」の名は、ダンスシーンに激震をもたらし、それがきっかけとなって「自分たちも挑戦する!!」というチームによるエントリーが増加。すぐに規定の定員に達した。彼らが持つ影響力を、ここでも目の当たりにした。

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準備期間。

彼らが集まるのは深夜。レッスンや仕事の後にFRESHに集合して、音決めからスタート。曲編振り作り踊り込み。体力との勝負でもあったし、愛媛在住のYOHEIさんは、簡単に大阪に帰って来れるわけでもない。ディライトに挑戦する他のチーム同様、苦難が多かったことは間違いない。

スタジオで会った人からは口々に「ディライト出るんすね!!やば!!」と声をかけられる。期待の声が蓄積されてプレッシャーにもなるんじゃないか…と少し心配になる。HONGOUさんは冗談っぽく「優勝じゃなかったらどうしよー(笑)」と話す時もあったけど、僕は近くで見ていて「この人たちは優勝以外のことは考えていないんじゃないか」と思った。言い換えれば「圧倒的な優勝」を目指していたのではないだろうか。クラブイベントのショー作りとは、集まる回数も一回の練習にかける時間も比べ物にならないくらいだったのを見ると、徹底的に勝ちにこだわっていたのが分かる。

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そして僕が、ある「構想」についてHONGOUさんから聞いたのもこの頃だった。それは「HEX BEXとsucreamgoodmanが主体となって1つのプロジェクトを始動させる」というものだ。その手始めとして、ディライトに挑戦するまでの「ドキュメンタリー映像」を制作するという。撮影するのは、彼らの盟友として数々の現場に同行してきたダイコク映像のキダさん、そしてダンサーであり「CREATOR’S LOUNGE」の代表として映像制作も手がけるkussunさんだ。練習の様子だけでなく、当日の結果まで込みで映像におさめられるという。どんな映像があがってくるのか、そしてディライトは果たしてどんな結果になるのだろうか…。

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当日。

OSAKA DANCE DELIGHT vol.37は、厳しい感染症対策のもと開催された。全部でA・B・Cブロックまであるのだが、出演者さえも自分以外の部は見れない。つまりAブロックで踊ったチームは、Bブロック以降はもう会場にいることさえできないのだ。HEX BEX×sucreamgoodmanの出番は大トリ、Cブロックのラストだ。A,Bブロックで出番を終えた出演者は、なんとか大トリのショーを見ようと、こっそり客席に紛れたり非常階段に居座ったりしたみたいだけど、ことごとく見つかって退場を強いられた。文句が出るのも当然だけど、恐らくイベントの運営側というよりも、会場側の決まりなので仕方ない...。延期に次ぐ延期が続いたコロナ禍を思えば、開催できるだけ本当にありがたいことなのだ。

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6人は、FRESHで最後の調整に臨んでいた。床が芝生になっているFRESHの廊下でストレッチをしたり、スタジオで最終チェックをしたりしている。(オールブラックの衣装に身を包んだ彼らがざっと並ぶだけで迫力があるけど、これは僕のバイアスだろうか...。)調整が完了した6人は、静かにスタジオをあとにした。

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そして、場面はこの記事の冒頭に戻る。

「2022年2月27日に行われましたOSAKA DANCE DELIGHT vol.37。本日の優勝チームは!!!

………おめでとう。HEX BEX×sucreamgoodman!!!!

その瞬間、インスタライブの画面には、視聴者が連打したハートマークやお祝いのコメントが飛び交う。そしてSNSも祝福の嵐。海外のダンサーもメンションしてストーリーにあげていた。ここでも、彼らがどれだけ注目されていたかが分かった。文句なしの圧倒的な優勝だった。
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そして2022年5月。
編集されたドキュメンタリー映像が満を持してYoutubeにて公開された。映像のなかで使われている音楽は、大阪のトラックメイカーip passportさんによるオリジナルビートだ。

“THE STAGE” HEX BEX×sucreamgoodman


コンテストに挑戦して結果を残すだけでなく、後世に残る何かを残す。それを見てどう感じるかは人それぞれで良い。

その姿勢に痺れた。
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同時に"HANERU WORKS"という名前も発表された。では、これからどんな活動を行なっていくのか。じきにウェブメディアなどでも取り上げられるみたいなので、ここでも公開しよう。"HANERU WORKS"の企画第一弾は「ビートメイカーとダンサーのコラボ」だ。

ダンサー1人につき、1人のビートメイカーが1曲ビートを作成する。つまり6人のダンサー(もちろんHEX BEXとsucreamgoodman)と6人のビートメイカー、計12名が参加する一大プロジェクトなのだ。参加するビートメイカーはENDRUNさん、16FLIP a.k.a ISSUGIさん、そしてBudamunkさんなどなど、以前から交流のあるビートメイカー。しかも単にビートを作って踊るだけでなく、音源と映像をきちんとパッケージ化して各種音楽配信サービスからリリースすることが決まっている。気になるのはダンサーとビートメイカーの組み合わせだが、そのあたりの全貌はまだ情報解禁されていない。

そしてもちろんこのコラボに限らず、今後もっといろんな切り口の表現を行うようだ。映像?音楽?アパレル?パーティ?期待は膨らむけど、どんな企画が繰り出されるかはまだ誰も知らない。

Instagramアカウントはこちら HANERU WORKS
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平均年齢が40オーバーになった今、彼らがどんなステージに立ち、どんな背中を見せてくれるのか。戦隊ヒーローの放送を楽しみにしている日曜日の朝の子どものような気持ちであるのと同時に、次は自分たちの世代が伝えていく番だということも、ひしひしと感じる。1ダンサーとして、1ライターとしてできることをやろうという気持ちでこのエッセイを書いた。


文/構成 : Seiji Horiguchi
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