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アメ村放送倶楽部 vol.16 WATABOO

2022.02.02

アメ村放送倶楽部 vol.16

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◉ゲスト : Wataboo
◉インタビュアー : Seiji Horiguchi
※2020年10月23日のインタビュー


Seiji : アメ村放送俱楽部、本日も始まりました。本日のゲストはB-BOY、ビートメイカーそしてスタジオオーナーとしての顔も持つなど、多岐に渡る活動をされているWATABOOさんです。

WATABOO : こんばんはー。宜しくお願いします。

1, コロナを機に新たなフェーズへ。映像の発信を武器に。

Seiji : WATABOOさんは、2020年夏開催のVillage Campの中で行われた動画コンテスト「Village Camp Challenge」にエントリーされたのがきっかけで僕も繋がりました。

Village Camp Challenge

Seiji : まずはダンスを始めるきっかけから教えてもらえますか?

WATABOO : はい。まずダンスとの出会いはBREAKINGです。僕らの世代やとベタなんですけど、ナインティナインの岡村さんとガレッジセールのゴリさんのバトルを見たのがきっかけですね。

Seiji : ありましたね!懐かしい!



WATABOO : ちょうどその頃ってシーンでも火がついてきた頃でもあって。それこそ「少年チャンプルー」とか。そういうのを見て漠然と「やってみたいなー」って思ってたところにたまたま友達のお姉ちゃんがダンスやってることを聞いて。夜に総合体育館の外で練習してはるところに1人で挨拶しに行って「ダンス教えてください」って行ったのが中3の時ですね。

Seiji : 1人で行ったんですか!

WATABOO : めちゃめちゃ緊張しました(笑) 今でもその時のメンバーとは親交があります。今もアー写を撮影してくれているSHIROBONさんとも、ダンス始めた日に出会って今でも繋がっていますね。で、そこからずっとブレイキンをやってます。レッスンもBREAKINGでさせてもらったり長居の「the Long Stay」っていうクルーにも入っててB-BOYバトルも出たりします。色々フリースタイルで踊ってるけどハートはB-BOYって感じです。

Seiji : ブレイキンと立ちの踊りがナチュラルに混ざっているのがWATABOOさんの魅力の一つです。そういったスタイルになったきっかけは?




WATABOO : the Long Stayのメンバーの考え方とか感覚が、フリースタイル寄りなのが大きいですね。DJとかデザイナーやってる人もいて。踊りの感覚もフリースタイルですね。そこに所属するまでは僕も、BREAKING=フットワークとかパワームーブって思ってたんですけど、クルーのみんなのダンスを見てたら「自分がやりたいこと、なんでもして良いんやな」って思うようになって。そこから段々、型にはまらずフリースタイルな感じで踊るようになりました。だから何かのタイミングを境に「HIPHOPの踊りをやってみよう」ってなった訳ではなく、徐々にって感じです。音楽もJAZZ、FUNK、DUBSTEPとかも色々聴くので「この音にはこの踊りが気持ちいいなー」くらいで踊ってます。

Seiji : なるほど、そして先ほど話したVillage Camp Challengeで初めて拝見したという流れですね。ダンスも映像も、ものすごく異彩を放っていたのを覚えています。あのチャレンジは、募集をかけたのがイベント開催の1週間前とかなりギリギリで、しかもルールが少しややこしいのもあったりで、募集を開始してから2日くらいは反応が全然なくて(笑) WATABOOさんとAIMIちゃんがエントリーしてくれたのを境目に応募が増えたので、もうお二人のおかげです!「エントリーしよう」と思ったきっかけは何かあったんですか?

WATABOO : コロナを境に考え方が変わったのが一番大きいですね。それまではSNSで自分の踊りの映像を載せることに抵抗があったんです。変なプライドもあったりして。でも、コロナを機に「自分も発信していきたいなー」と思っていたんです。ある日、HONGOUさんがあげた動画コンテストについての投稿を見て「FRESHも新しい事を始めてみるのか」と思いました。なんとなく、その時の流れ的に「動画コンテスト=キッズがメイン」みたいな感じがあったので、自分みたいなおじさんが編集して出したら、みんなも面白がって続いてくれるかなと思って(笑)

Seiji : ありがたいです…。FRESHは、もともと現場やいわゆる「ライブ感」を大事にするスタジオでしたが、2020年は新しい時代の流れに乗ってオンライン上の表現にも挑戦してみるというフェーズでした。

WATABOO : そうですね。FRESHって、がっつりストリートのスタジオってイメージやったけど「新しいことをやっていく」っていう部分では近いものがあると思いました。他にも2020年はコロナをきっかけに新しいことを探してる人とリンクしていく感じはありましたね。このアメ村放送俱楽部も始まった頃から「あ、こういうことやるんや」ってチェックしてましたし。自分もスタジオで生徒にインタビューしたり、ドキュメンタリーを撮ってみたりとか自分なりに動いてたんで、そういうところでも似たものを感じます。

Seiji : 確かに次のステージに向かうバイブスを持った人同士は確かに引き寄せ合うものはありますよね。

2, ビートメイカーJunyaWatabooIshii。

Seiji : 次にWATABOOさんのビートメイカーとしての顔にも迫りたいと思います。「JunyaWatabooIshii」名義でのビートがこちら。

JunyaWatabooIshii SoundCloud

WATABOO : 是非ヘッドホンで聴いて欲しいですね。

Seiji : 今、WATABOOさんのビートはどのメディアで聴けるんでしょう?

WATABOO : SpotifyとかApple Musicとかストリーミングサービスは一通り聴けます。あとは気が向いた時にSoundCloudでちょっとビートライブのmix的な音を上げたりとか、BandCampでも販売しています。 (2021年からは10ヶ月に渡って毎月1枚アルバムをリリースする企画を開始)

Seiji : 雲の上まで飛ばされているのか、地中深くに埋め込まれているのか分からなくなるくらいグワングワンに感じます。まずビートを作ろうと思ったきっかけを教えてもらえますか?

WATABOO : 素敵な表現ですね!音を作る時とかもぼーっとする音が好きで。感覚で音を作る時が多いんですけど、ホラーのサントラをイメージしたりもします。あえて不協和音で組んだり。

Seiji : サンプリングソースはどういったものを使っているんですか?

WATABOO : サンプリングは、あまりこだわりはなくて、例えばパッと朝起きて、タンテに乗っかったままのレコードをそのまま使ったりとか。パソコンで録ったミックスをそのまま切ったりとか、「この音を使いたい」というよりも、今その場にあるものを使うことが多いです。「こんなビートを作りたい」っていう着地点もなくて、ありもので作ってたらインスピレーションが湧いて音が出来上がるみたいな。

Seiji : なるほど。まずはその場の素材ありきなんですね。初めて機材を買ったのはいつですか?

WATABOO : 5,6年くらい前ですかね。最初SP-404っていうマシーンでやり始めたんですけど、自分の作りたい音はこれだけじゃ無理やなーってなってMPC2000XLに切り替えました。始めたきっかけはSick Teamですね。

SICK TEAM / Addiction


WATABOO : 「音がかっこいいな」と思って調べてみたらビートメイカーのBudamunkさんに行き着いて。「機材はこれを使ってるのか」と調べてやり始めました。それがきっかけですね。自分のビートを聴いた人からは「どんなジャンルから入ったん?」ってよく聴かれるんですけど、自分的にはブーンバップに憧れて始めました。

Seiji : RAWな感じの上音が多かったりするのはそういうことだったんですね。僕はWATABOOさんのビートを初めて聞いたのは3年くらい前の[Garden Bar]でのパーティですね。確かビートライブとダンスセッションのショーだったんですが、「なんじゃこの変態的なビートは!!」と衝撃的だったのを覚えています。

WATABOO : 懐かしいですね!その頃、bpm60あたりのビートを作りまくっていたので「ダンスイベントでかけて大丈夫なんかな?」と思ってました(笑) その前にも、僕がビートライブでセッションするっていうのをやったりしてたから、ある程度慣れてもいましたけど、やっぱり緊張しましたね。

Seiji : ビートを作りながら部屋で流すのと、クラブで流すのはまた違いますよね。

WATABOO : クラブで流れる音をコントロールするのをそれまでやったことがなかったので、初めてビートライブした時は手が震えて、汗もやばかったのを覚えてます。機材の切り替えとかもよくわからなかったし。知り合いのパーティとはいえ緊張しましたね。ダンスを長くやってるとショーをやる時でも緊張して「やばい…!」ってなることはもうほとんどないんですけど、初めてのビートライブはなりましたね。久しぶりにこんな緊張したなあって思いました。良い年になってあんなに緊張できるってことはめっちゃ良いことだと思いますけどね。若返った気がします(笑)

Seiji : ビートを作る時の喜怒哀楽の感情って、ビートに反映されたりしますか?

WATABOO : 感情っていうより私生活のテンションはけっこうありますかね。うまくいってない時はビートもそういう感じになったりね(笑) 過去のビートアルバムで、自分は気に入ってるビートがあるんですけど、仲良い友達が聴いてくれた時に「この時WATABOO君けっこう大変やったんやな!」って言われたりしました(笑)

Seiji : ははは(笑) しかもそれをちゃんと分かってくれる友達もすごいですね!

WATABOO : それが音楽の面白いところですね。疲れてる時にアッパーな曲を作るのは難しいやろし、癒されたい時は間のあるような落ち着いたビートになるとか。そういうのはあります。逆に自分の状態に嘘つくというか、無理して作ると「なんか今日はうまくいかんかったなー」みたいな違和感があります。ダンスと一緒ですね。あと逆に過去に作ったビートを聞くと、それを作ってる時の思い出が蘇ったりね。是非いろんなダンサーとコラボしたいですね。新しいことができたらいいなと思ってます。

3, 「ダンスをしたい」を大事にする。ダンススタジオマンチカンのスタイル。


Seiji : 次にWATABOOさんがパートナーのAIMIさんと運営されている「ダンススタジオマンチカン」について。まず生徒さんの年齢が、キッズから10代の方が多いイメージです。そして、ダンス以外のカルチャー的な部分にもこだわって伝えられている印象があるんですが、キッズに対して「ストリートカルチャーとはなんぞや」みたいなのを伝えるのってめっちゃ難しいと思います。何か意識されていることはありますか?

WATABOO : スタジオを始めた頃は「分かる子にだけ伝わればいいや」と、自分らのやりたい事をやるスタンスだったんですけど、思えば自分も最初は「パワームーブがやりたい」って思ってブレイクダンスを始めたので、初心にかえってまずは子どもたちが「やりたい」と思ったことを尊重することを意識し始めました。小学生くらいの子たちからしたら「何かやりたい」と思って習い始める初めての経験だと思うんですよ。そういう「ダンスがかっこいい」「やってみたい」という気持ち自体がめっちゃ貴重な事なので、まずはその「やりたい事」を思いっきり表現してもらってます。形とかスキルは後から教えられるので。

Seiji : まずはその初期衝動を大切にするということですね。以前インスタで、キッズがエネルギッシュかつ自由に踊っている動画をあげられていましたが「まだレッスン2回目の子たちです」と書いてあって、めっちゃ驚きました。

WATABOO : 自分とかAIMIちゃんのクラスに来る子はセッションとかしたがる子が多いですね。親御さんからも「家でもテレビの音で自由にめちゃめちゃ踊るんです」ってよく聞くし。レッスンで周りの子たちがサークル作って踊ってたら、体験で初めて来た子も「自分もそれで良いんや」ってなっていきなり踊り出すこともありますね。しかも子どもたちのダンスを見てると、自分たちにはない感覚を沢山持ってて、「なんてピュアな踊りをするんやろ」とこっちが驚かされるくらいです。練習すれば、良くも悪くも“練習した踊り”が出るけど、子どもたちはそうじゃなくて独特の感覚で音楽に乗っているので。一緒に踊ってて「この子の中では音楽はどう聴こえて、どんなイメージで踊ってるんやろ」ってワクワクしますね。

Seiji : 以前インスタで告知されていて印象に残ったクラスがあったんですが、「クリエイティブコース」とは、どんなクラスなんでしょう?

WATABOO : 発端は、2020年春の自粛期間に「とりあえず映像で発信しよう」ってなって、撮影して編集して俺のビートを使って映像をあげたりとかしてたんですけど、そういうノウハウをみんなにも教えていくのも必要なんじゃないかと思って。これからはプロのダンサーとかインストラクターになるのってダンス以外のスキルも求められる時代じゃないですか。それこそインスタでダンス映像をあげて、そこから名前が売れることもあるし。あとは俺も友達に撮影してもらうなかで、映像のなかでの見せ方に気づいていった部分もあって。そういう映像での発信も得意になれるようなクラスを作りたいってなりました。



Seiji : 今、チームでYoutubeチャンネルを作って発信しているチームもすごく増えていますよね。

WATABOO : そうですね。そういうチームの映像を自分も見てて、すごく刺激になっていますね。撮影して編集してっていうのはエネルギーのいることやし、すごいと思いますね。自分も負けてられないです。

Seiji : WATABOOさんとAIMIちゃんのすごいところは、ハードコアな世界観やリアルなダンスの質感が、ちゃんと映像越しにも分かるということです。どうしてもYoutubeとかTikTokとかでバズるダンスって、ポップでキャッチーなものが多いと思うんですが、2人ならではのドープな世界観を損なわずに映像に落とし込んでいるのが面白いです。

WATABOO : そうですね。そういう「ダンスの映像はキャッチー」みたいな固定概念を俺らが消していきたいと思ってますね。イケてる奴らがやったらどんなメディアでもイケてるっていうのを見せたいです。

Seiji : そうですよね。もうiPhoneのカメラや映像編集ソフトの性能もどんどん良くなっていきますし、映像での配信がもっと身近になっていくわけですからね。発信を積極的にするという点はFRESHも挑戦していかないとと思います。

WATABOO : 是非一緒になんかやれたらなとは思いますね。今までは全く違うところにいるスタジオって思ってたけどそんなこともないんやなって思いますね。

Seiji : ぜひ今後もコラボしたいです!という訳で本日のゲストはWATABOOさんでした。ありがとうございました!

WATABOO : ありがとうございました~!


[筆者あとがき]
ダンサー、ビートメイカー、そしてスタジオオーナーとして、既存の枠にはまらないニュータイプな表現を行うWATABOO氏。今回のインタビューでは、それらの表現は「規格外でぶっ飛んだ発想」というよりも(例えば「身の回りにある音をビートメイクの素材として使う」というエピソードでも分かるように)むしろ日常生活から生み落とされる極めてナチュラルなアウトプットということがわかった。
とはいえ、その柔軟性は時にそれまでの自分のアティテュードを否定せざるを得なくなる場合もある。(彼の場合なら、SNSに踊りの映像を載せることに抵抗があった状態から、積極的に載せるようになった点など。)この、過去の自分のスタイルを見直し、時に否定する勇気こそが、彼の魅力の原点なのではないだろうか。
また彼は、2021年に第一子を授かったのだが、パートナーのAIMIさんの妊娠が分かった時から出産に至るまでの10ヶ月間、1ヶ月1枚のペースで10枚のビートアルバムをリリースした。そうやって人生のライフステージの変化と共に新たな表現に挑戦する彼の今後の作品にも一層期待が高まる。また彼の最新の映像作品や音源はこちらからチェックできる。


インタビュー/文 : Seiji Horiguchi
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