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FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ・インタビューシリーズ。ENDRUN~前編~

2018.02.14

2018年1発目のFRE$HインタビューはDJ、Beatmakerとして大阪から全世界に発信を続けるENDRUN。ストイックかつハイレベルな音源制作はもちろん、AKAI協賛のビートバトル、「GOLD FINGER」での優勝などの戦歴を誇る。近年は、InstのBeat tapeやMCを客演に呼んでの音源制作に意欲的に取り組んでいる(今までに1st ALBUM「KEEP YA HEAD UP」2nd ALBUM「ONEWAY」をリリース)。シンプルながら奥深く、中毒性のあるビートにファンが続出している。彼のビートに耳馴染みがあるダンサーも少なくないだろう。さらにスケートビデオ、「TIGHTBOOTH PRODUCTION/LENZⅡ」へも楽曲提供するなど、幅広く愛されるビートの紡ぎ手として名をあげている。ヘッズの鼓膜をつかんで離さないプロフェッショナルの音作りは一体どんなライフスタイルから産み落とされるのか。これまであまり語られることのなかったENDRUNの思考と日常に迫る。

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インタビュー場所は、なんと大阪某所にある彼のスタジオ。極めてパーソナルなスペースに快く招き入れてくれた。我々が部屋に到着すると同時に、よく冷えた果肉たっぷりのフルーツジュースを提供してくれた。好みのフレーバーのジュースをいただきながら、インタビューはとても穏やかな空気の中スタートした。

1, ENDRUNの軌跡。ビートメイカーとは。

まず、自己紹介からお願いします。
ENDRUN : 大阪の吹田市出身です。太陽の塔があるとこですね。

ENDRUNさんは何歳の年ですか?

ENDRUN : 昭和58年生まれの34歳です。ちょうど自分が高校の頃、HIPHOPが流行っていましたね。みんなダボダボの服着てました。みんなマンハッタン(レコード)の袋とか持って。とりあえずHIPHOP聞いとけ的な(笑) 女の子でもとりあえずJay-Z聞いてるみたいな時代でしたね。そういう流れで、高校にもDJやってるやつとかダンスやってるやつとかいて、自分も始めました。その時すでにDJ SCRATCH NICEがかましてましたね。そのあたりとのリンクが自分のルーツです。
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DJをスタートしたのはいつから?

ENDRUN : 18くらいにタンテをゲットしました。でもその頃周りはみんなHIPHOPのDJばっかりやったんで、「俺、R&Bでええわ」みたいな感じで、逆にモテようとしてました。速攻で「これ、ちゃうわ」ってなりましたけどね。

(笑)

ENDRUN : 家で聞くのはいいんですけど、クラブでかけるのはちゃうわと思いました。そこからはずっとHIPHOPですね。でも、その頃イベントにいた人はもうほぼいないですね。

それはDJに限らずダンスも一緒かもしれません。

ENDRUN : 逆にその頃から有名だった人は今でもずっといるって感じですね。HONGOUさんの名前も昔からずっと知ってますしね。それでも、少なくなってきてますけど。世代交代ですかね。

イベントでDJをし始めたのも18歳くらいですか?

ENDRUN : そうですね、当時はつながりがあまりなかったんで、片っ端から繋がってるやつのイベント出るというスタンスでした。少ししてから20歳くらいでMPCをゲットしました。初めて作ったビートとか、マジダサいっすけどね。(笑)

是非聞いてみたい...!

ENDRUN : いや、無理っす無理っす(笑)振り返りたくもないです!死ぬ前に1から聞こかなくらいの感じですかね。

作り始めてから、ビートのクオリティが上がった感触はどこかのタイミングでありましたか?

ENDRUN : ビートメイカーとして、ラッパーに曲を渡すようになってからレベルが上がりだしたというか、人に聞かせて、使ってもらわん事にはわからんていうか。僕はそれ(聞かせる相手)がたまたまラッパーが最初やったんで。DJって外に出てやるわけにはいかないから、どんどんこもっていくんですよね。でも外の世界がないと、なかなかすり合わせができないというか。そこで、LIVE DJもやったりしました。

普段はどんな音楽を聞いているんですか?

ENDRUN : サンプリングのHIPHOPが好きなんで、元ネタになる音楽ばっかりずっと聞いてます。SOULとかJAZZとか、あとはROCKですね。特にROCKの中でも「プログレッシブロック」「サイケデリックロック」っていうジャンルを聞いてますね。ドイツあたりの音楽やったかな。クラウトロックとか。クラシックのシンフォニーオーケストラをロックで置き換えてやってるとか。逆にそういう方がハードなメロディがあったりするんですよ。そうやってビートメイクのサンプル探しで聞いています。Rockの他にもSoul funkとか定番のやつはめっちゃ好きなんで、よく聞きますね。


(ここで写真を撮るために、座る位置や置物の位置を調整させてもらう。調整中ENDRUNから)何か質問してもらってそれに答えた方がいいかもしれないですね。かなり僕、脱線してますよね?(笑)
のびのび話していただいて大丈夫ですよ。(笑)
(調整終わって再び話へ戻る)


ENDRUN : 今はBandcampで勝負する人も増えてきたので、僕もそこで勝負していかないと、と思ってますね。今までは日本でリンクしたラッパーのプロデュースを主にやってきましたけど、個人のビートメイカーとしては全然足りてないので。

ラップ抜きのビートの出来でも勝負したいということですね。理想のビート像のようなものってあるんでしょうか?

ENDRUN : ビートテープって1ループで作って終わりというのがよくあると思うんです。僕もそれは好きなんですけど、「その1ループをどう聞かせるためにどうしたらいいか」を考えないとダメなんで、そこに比重を置いてますね。首が振れて、鳴りが良かったらいいみたいなとこもありますけど、最近は首が振れないようなビートも結構あるんで、逆にドラムを足してないネタのループだけとか。そういうバリエーションがあるBoom Bapがやりたいと思っています。

サンプリングソースを見つけてからそれが曲として仕上がるまで、だいたい時間にするとどのくらいかかるんでしょう?

ENDRUN : ネタをディグるのが一番手間とか時間がかかりますね。レコードを買って持ち帰ってチョップしても、組んでみたら「ダッサ…」ていうこともよくありますしね。”調理”の仕方もありますけど。それからサンプリングソースは、レコードだけじゃなくて、Youtubeとかでも全然ありかなとは思いますね。「絶対レコードからサンプリングしないといけない」って考えの人もいますけど、結局PCに入れたら全部デジタルデータになるんでね。自分の出したい音が出てたらOKだと思います。そこまでソースは問わないというか。それよりアイデア勝負な部分はありますね。今の時代、素材は平等にシェアされた上でみんな何ができるか、という環境なんです。かっこいいプラスオリジナリティですね。でもまあだいたい、サンプリングソースをチョップして1ループ作るまでに10分あればできますかね。

早い!そのぐらいでできてしまうんですか!
ENDRUN : そこから展開をつけるのに時間がかかりますね。更にそこにラッパーをむかえて”音源を作る”となると時間がもっとかかりますね。

2, プロデューサーという仕事

ラッパーと音源を制作する。つまりプロデュースをすることについてもいろいろお聞きしたくて。
自分は、プロデューサーが自分の性に合ってるというか。客観的に「こいつをこうやって」って考えるみたいな。後ろにいるけど実はそいつを動かしてるみたいなスタンスが好きですね。

なるほど。
ENDRUN : 有名なプロデューサーって言ってることが他と違うんですよね。バンバーターとかもビデオ見てたらアフリカへ回帰することを唱えてたりとか、戦争を止めるとかそういう考えがHIPHOPに入ってるっていうのは面白いですね。深い所で発信してる。
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社会的なメッセージも含めての音楽?
ENDRUN : そうですね。Dev Large氏とかも、インタビュー見てても変わったこと言ってて。魂レベルの話というか、「なんかこの人考えてるな」っていう。

プロデューサーにとって難しいこととか、苦労することは何ですか?
ENDRUN : やっぱり“Face to Face”で会う人でコミュニティを広げていくのが難しいですね。狭い場所で繋がっていくとかはあるけど。ビートメイカーとかプロデューサーって普段は家で作業してるんで。インターネットの範囲で事足りることが多いから。

過去のインタビューを拝読した時に「アルバムに呼んだMCは1対1で付き合ってる人間」とありましたが、今の話もまさにそういうことですよね。作品になる時もそれが繋がってくるというか。
ENDRUN : 繋がっていく中でかっこいいと思える人と出来ることをやりたいという気持ちですね。
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アルバムを作るうえで、ラッパーをまとめるという部分はプロデューサーの腕の見せ所ですね。
ENDRUN : だいたい仲が良かったり、近い関係の人のところにレコーディングって行くんですけど、それだけじゃなくて、特色があって「ここでやりたい」ってレコーディングする場所を選べるくらいにまでなればいいなって思うんですよね。

特色があるスタジオを選ぶというのは「こういう音を出したいからここでレコーディングしよう」ということですか?
ENDRUN : そうです。誰のビートを使うかとか、スクラッチとかシンセを入れるとか、アイデアも人によって様々なわけで。そうやって、ただレコーディングできるだけじゃなくて、"プロデュース"までできる人が増えたらいいなと思いますね。それから大阪のMCは、なかなか腰が重たい人が多いんですよね。こだわりが強くて自分が通してる筋もあってなかなかという場合が多いと思うんですけど。だから僕はもっと作品を出せということを会った時に絶対言いますね。「どう?次、なんか作ってる?」みたいな。うざいくらい言ってます。

少し細かく曲単位の話になるんですが、『ONEWAY』に収録されている『FINEST』の客演のISSUGIさんと茂千代さんは、ENDRUNさんがパイプ役となったんでしょうか?それとも元々あの2人は繋がっていたんでしょうか?東京-大阪と離れているし、以前から一緒に曲をやっているイメージがないですが。

ENDRUN “Finest” feat. ISSUGI & 茂千代(Official Video)



ENDRUN : いや、ライブで前後になることもあったりしてだいぶ前から知り合いやったみたいですよ。ただ知り合って仲良くなったとしても、ラッパーどうしの間で「いきなり曲やろう」ってなることって意外となかったりするんです。友達にはなれても、お互いの作品でいきなり曲作るまではいかないというか。

なるほど。一緒に曲をやるきっかけが必要になりますね。

ENDRUN : ISSUGI君と茂千代君との曲は、思いついた時、速攻で連絡してスケジュール合わせました。そしたらすぐDJ KENSAWさんから電話がかかってきて、「お前、千代とやるんやろ。それどういうことかわかってるか?なめられたらあかんぞ」と。「千代はお前がビート作ってるMCの中では一番かましてるから、よろしく」って言ってくれて、「わかりました」って返事して。でも、PV見せる前に亡くなってしまったんで、そこはちゃんと聴かせたかったですね。間に合わなかったです。
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そんなエピソードが…。
ENDRUN : 話は逸れましたが、そういう意味ではプロデューサーきっかけでラッパーがリンクアップしてもらえるということが一番醍醐味ですね。考えればほんまはもっと、組み合わせはあるんです。自分とその人との距離とか、タイミングもあったりするので難しいですが。

プロデューサーの仕事で最も重要かつエネルギーを使うのは、曲作りの具体的な作業よりも、舵を切ってプロジェクトを進めていく仕事なんですね。
ENDRUN : そうですね、そこに比重がありますね。みんなのスケジュール調整するだけで大変です。ネットでデータ送ったら次の日くらいに返ってくる、みたいなイメージの人もいるかもしれないですけど、実際はそうはいかないです。なかなかリリックを書いてくれなかったり、スケジュールがある場合でも守ってもらえなかったり。「テーマなんやっけ?」てあとになって聞かれたり。あと期限があると良いものが出来ないということもありますね。もちろん期限を決めなくてもできる人もいますが。

いろんなペースがありますね!

"使命感"ともいうべき熱量をもって、黙々と、時に大胆に活動を展開するENDRUN。筆者は勝手に寡黙な性格をイメージしていたが、とても貴重な話をたっぷりと語ってくれた。ここまで記したのは実際の話の一部に過ぎない。どこかENDRUN自身が自分のライフスタイルを振り返り、再確認するように話しているような印象を受けた。熱量を持ちながらもプロジェクト、あるいはシーンを俯瞰して見渡さなければならない厳しさを垣間見た。後半の記事では、ENDRUNの日常レベルの話や他のビートメイカーとの交流について迫る。

ENDRUNインタビュー 後半は近日公開。


取材・文 : Seiji Horiguchi
※このインタビュー記事は2018年2月に公開されたものです。
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