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FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ、インタビューシリーズ。番外編 HIDADDY 後半

2017.08.04

FRESH DANCE STUDIOプレゼンツ、インタビューシリーズ番外編[HIDADDY]
前半で、これまでの活動とシーンへの思いを語ったHIDADDY。
後半ではアドヒップ主催の「ダンスリーグ」における活動、そして若い世代の方向性を正す、"父親的役割"に迫る。
まっすぐな人間の言葉には自然と力強さが生まれる。
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3, ダンスリーグというものについて

ある日、マシーン原田さんから「プロダンスリーグ」を設立したいと話しがあって。

--ダンスリーグとはそもそもどういうものなんですか?
Bリーグ(バスケットボールの日本リーグ)のダンス版やな。FE OSAKA(Four Elementsの略)、通称FEO(フェオ)。
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原田さんとは別のタイミングで、(KIREEKの)Hi-CがDMCの関西予選の打ち上げの時にKOPERUと俺にダンスリーグのMCの話をもちかけてきてん。

KOPERU「いやー僕はちょっとダンスは…」
Hi-C「そうか、いやかー。HIDAくんどう?」
俺、即答で「やる!」みたいな(笑)
「RAPとダンスやろ?やるやるー」って。

--広島vs大阪の試合Youtubeで見ましたが、会場はすごい盛り上がりでしたね。
正直向こうのラッパーは全然やったけどな。

--…(笑)
MILKYってやつ。すごいPOPSやねん。それをHIPHOPって言ったらみんな怒るよっていうくらい。
これは陰口でもなんでもなく、記事に載せてくれたらええねんけど。本人にもマイクで試合中言ったし。
とはいえ、嫌いじゃなくて好きやしリスペクトしてるし、後から彼のCDももらって聴いたし。

--その姿勢はさすがです。1試合ごとのファイトマネーはみんなもらってるんですか?
うん。勝ち負けに関わらず、興行のギャラとしてもらってる。まだ微々たるもんやけどね。一回のライブとかショーで割り振られる分くらい。
それにしては練習量多いし、全然割にあってない。
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--最終的にそれをどこまで持っていきたいなど、ビジョンはあるんでしょうか?例えば47都道府県にまで広めるのか、みたいな。
アドヒップ的にはBリーグ(バスケットボールリーグ)みたいな感じちゃう?でもそれが拡大すればJリーグみたいになるよね。
ダンスバトルって言ってもダンサーだけで盛り上がるだけじゃなくて、ダンサー以外の層が見ても「面白かったね」って言わせるようなものになったらいいな。
ダンスのことわからんくてもVJ見てたら視覚的に面白かったり「なんかわからんけど、ラップすごかったわー」とか。
やから勝ち負けにもこだわるけど、今は面白さ・楽しさを求めてやっていきたい。
今はFE OSAKAのMCとして所属してるけど、本当はプレイヤーとしてのMCは若い奴に任せてイベント全体のメイン司会者になりたいな。

--なるほど。Youtubeにあがってるダンスリーグの試合の動画を見たんですが、実況と解説はスポーツの試合中継を意識しているように感じました。
あそこに俺が要るやろ。
ダンスのことを一番わかってるMCやと自分で思ってるから。
ダンサーってこんなこと考えてんねんでっていうのを解説していきたい。

--確かに実況や解説にHIDADDYさんがいたらバッチリはまるかもしれません。そういえばダンスバトルイベントの「Dance Enogh」のMCもされていますが、それは何かきっかけがあるんですか?
オーガナイザーのRYOHEIがアイスクリームってイベントにフロアダンサーで入ってて、俺がラップして、そこから繋がって同じクラブCamonのイベントでオファーをもらってん。
ダンスが好きでダンスシーンに絡んでいきたいなっていうのはあって、いい機会やなと思ってやりだした。
今のFE OSAKAの監督はTANABONさんやけど、プロダンスリーグでちゃんとみんな回るようになったら、TANABONさんには全体の理事になってもらおう。あの人はそっちの方が長けてると思うし。ビジネスマンやし。
ほんで大阪の監督にHONGOUくんがなればいいと思う!(真剣な目つき)

インタビュー中、質問へのアンサーから派生して様々な話のタネやアイデアが吹き出てくる。
そして知らぬうちにHIDADDYの空気、HIDADDYのペースになっていく。そこにはある種の引力が存在する。

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4, 若い世代との向き合い方。父親としての一面。

―HIDADDYさんが主催しているRAP DELIGHTについても話を聞かせてください。”ラップ=HIPHOP”が失われてるとおっしゃいましたが、その危機感もあってRAP DELIGHTを企画されたんですか?
俺が思うラップのサイファー。俺がダンスディライトで見た、あのサイファー。あれのラップ版がやりたいと思って一二三屋でMCバトルをやった。
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最初に俺がフリースタイルしてて、近くにもう一本マイクを置いてて。で、そのマイクを取って、俺とサイファーしたやつは予選通過にしようと。そしたら一人、二人くらいしか出てこーへんねん。そうなると予選にならへんやん?最終、仕方なく全員にマイク回したんやけど。
俺は出るまでのアティテュードを見たいねん。マナーとリスペクト、あとバイブスが一番大事で、スキルとかセンス見せるのはそこからやねん。

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--確かにバトル至上主義になると、「スキルが一番」の傾向が強くなってしまう気がします。ちなみに当時のJDDで感じたダンスサイファーの感覚を今までラップでも体感したことはありますか?「これが本物のサイファーだ!」という。
よく体感するよ。
若い子によく「サイファー行くんですか?」って聞かれんねんけど、サイファーは行くもんじゃなくて起こすもんやと思ってるから。
今、「サイファー」って言ったら地域ごとに◯◯サイファーとかいっぱいあるねん。高校生たちがtwitterで情報飛ばして地元の駅で、何人かで集まって。
「◯◯サイファー主催させてもらってます」て言ってそれをステータスにする子がいるけど、「だから?」って感じ。
駅でやってるサイファーって、iPhoneにつないだスピーカー鳴らして、地声でやってるわけやんか。
やっぱりラッパーやったらまずはクラブでマイク持たんと。
マイクを持ってたら、そのマイクを「取りに行く」っていう行為があるやんか。それができひんねんな。

--人口が増えると、方向を見誤る人の数もそれだけ増えるという話はどのシーンでもあるような…。
最近、さっきも言ったようにラッパーが増えてもHIPHOPじゃないって思う事がよくあって、
例えば、Group HomeのSupa Starって曲があって、
そのイントロのスネアが「スッ、チャン」て流れた時に
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「あーこのビート!R指定と誰々がバトルしてるビートですよね!」って言うてくんねんけど、
「いやGroup Homeやから。R指定関係ないから」って。
しまいには(韻踏合組合の)「一網打尽」が流れた時に
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「あーこれ高校生ラップ選手権の決勝で流れてた曲ですよねー!!」て。

―!!! 何も知らずにHIDADDYさん本人に言ってしまうとは…恐ろしいです…。
でもまー、最初やし知らんことは恥ずかしいことじゃないから、教えんねんけど。
他にも「俺ラップやってます」ってフリースタイルしてくる子に、
「HIPHOP聴く?NASとかWU-TANGとかわかる?」って言ったら
「わかんないっす…」って。
まあ知らんことは恥ずかしいことちゃうからな。って言い聞かせて、試しに
「Cash Rules Everything Around Me CREAM,get a money…?」て歌ったら「ダラダラビルヨ~」って返してくんねん。
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「え、WU-TANG知ってんねやん!」
「いや、ウータンてなんすか?」って。(笑)
「今のフレーズ知ってるんやろ?」
「いや、フリースタイルの動画で〇〇さんが言うてたんで…」って言うねんな。

--MCバトルでサンプリングされたフレーズを聴いて知ってるということですね。
そういう時はYoutubeで速攻「C.R.E.A.M」出して聴かすねん。そしたらその子は感動して、HIPHOPにはまっていくやろな。「サンプリングってそういうことかー」って。そいつが5年後10年後とかに音源で「昔、一二三屋行ってHIDADDYに教わったWU-TANG CLAN!!」って歌ってほしいよね。それを信じて、めんどくさいけど毎回Youtube出して教えてる。

--素晴らしい行動です。でも根気強さが必要になりますね…。
ダンサーでもレッスンやってる人はわかると思うけど、自分が頑張るのは簡単やけど、難しいのは人を頑張らせることやと俺は思う。

--そうですね。誰しも右も左もわからない状態で始めて、やってるうちに夢中になったきっかけとか、「これがかっこいいんだ」と気づいたタイミングがあって。それを逆に誰かに与えられるきっかけやタイミングもあるわけで。
そう。与えていかんとあかん。俺らもそういう世代やねん。
スクールに来てる子らなんか自分の子どもでもおかしくない年齢やからな。
気づいたら俺たちも先生とか親の年になってるねんなって考えるよね。
自分の子どもの成長に、逆に成長させられてる場合もあるけどな。

--お子さんが成長していくにつれて表現したい内容も変わっていきましたか?
めちゃめちゃ変わる。「毎日、とっかえひっかえ女と遊んで…」って言わなくなった。というよりそういうのをかっこいいと思わなくなった。
アクセサリーのようにいっぱい女がいるよりも一人の女を幸せにする方が難しいんやなって思う。
「一人の女もちゃんと幸せにできひんやつがマイクで何人感動させれるおもてんねん」て。
あと親に黙って家を抜け出してイベント来た子が「親がうるさいんで帰らないとなんですよ」って言った時も

「俺のイベントやぞ、ちゃんと親にことわってから来いよ。自分のお母さんも自分の口で説得できひんやつが自分の口で何百人もお客を説得させれる思うなよ。『HIDADDYさんとこういうことやりたいから家帰られへん』てちゃんと言ってこい」

つって。

--その説得力はすごいですね。自分の子どもの年でもおかしくないっていう親心からくるパンチラインというか。
これ太字で書いといて。デカめの太字で。(笑)

--了解しました(笑) 軌道修正の役目を請け負ってるということなんですね。確かに初めにおっしゃってたように、世間のHIDADDYさんのイメージとは違うかもしれません。そういうことをやってるMCはなかなかいないでしょうね。
自分が40代50代になった時に最前線に立ってたら、逆にかっこ悪いと思うねん。
若い子らの後ろで、腕組んで見てるくらいが渋い。
一二三屋にくる中学生、高校生くらいの後輩たちは息子と接してる感覚やわ。

--The・親心ですね。時間がかかっても、これからのシーンにとっては必要な事だと思います。
ちなみに、ROCKのバンドって俺ら(HIPHOPシーン)のやってることを一通り経てると思うねん。硬派なROCK,フォークからROCKが生まれて、
ROCKからハードコアが生まれて、そっからメロコアとか。ミクスチュアにいくやつ、ハードコアを貫くやつ。
いろいろあったと思うねん。でも今、シーンには全部あるやん。どっかがなくなったとかがないわけやん。
全部が混ざるフェスもあるし、それでいいと思うねん。
でも、コアな部分を貫いてる人たちは、そこを頑張るしかないねん。それだけ。コアを貫くだけ。
例えば、俺ら昭和の世代で「ヨゴレ」って言われるもの。いわゆるセルアウトってやつ。でも、それをわかって貫けばいい。
ET-KINGも厳密に言えばHIPHOPじゃなくて、POPSやけど、あいつらはそれもわかって貫いてる。
それをやり通すことが大事やねん。
ヨゴレかもしれんけど、ヒットしたらそれはすごいことやし。
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--最後にダンサーに向けて一言あればお願いします。

今度、クラブに遊びに行って、フロアにダンサーを見つけたらダンスしに行くわ。
これを読んでるみんな、クラブでHIDADDYにバトル仕掛けられるからダンス下手で全然踊られへんかもしれんけど、
一緒に踊ったってな~。

--今日のキーワードになってる「感謝とリスペクト」ですね。
そう。ダンスに愛を込めて。そこからやり直すわ。

一見強面で凄みのあるHIDADDYだが、シーンや周りの人間へ向ける気持ちは人一倍強くて暖かい。
韻踏合組合として、ソロとして、さらに一二三屋オーナーとして、
様々な角度からHIPHOPシーンに対してアクションを起こしてきた。
そのエネルギーの源はあくなき好奇心と、まっすぐに育った人間力なのだろう。


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文 : Seiji Horiguchi

Seiji Horiguchi
フリーライター。
新聞記者になることを夢見る学生時代を経て、気づけばアメ村に。関西を中心に、アーティスト(ダンサー/ラッパー/シンガー/フォトグラファー/ヘアアーティスト stc…)のプロフィール作成やインタビュー記事の作成を行っている。
現在の主な執筆活動としては
・FRESH DANCE STUDIOインタビューシリーズ
・カジカジ、連載「HAKAH’S PROCESS」
・その他パーティレポ、ダンスチーム紹介文、音楽作品の紹介
などが挙げられる。
大阪のストリートカルチャーにアンテナを張りつつアンダーグラウンドの「かっこいい」を広めるべく日々執筆中。


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